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米秀学園。クラブ棟。
着いた五人はその無駄にでかい棟を見上げた。
「……でっけぇ……」
「こりゃ骨が折れるな。手分けしようぜ」
「俺は山根と」
尚が言うと、松村が平然と言う。
「じゃあ俺は紗季とで」
「じゃ、あたしは一人で」
「了解」
五人はクラブ棟の中に入って行った。
雪は一人でクラブ棟の中に入って行った。
このクラブ棟は入り口が四つあり、その内の一つの南側の入り口から入ったのだ。
「なんだよここ。じめじめしてて。やな場所だな」
雪が独り言を言った。
確かに天井は敗れているところもあり、ずっと前から溜まっていた雨粒が落ちてきているのだろう。
「ったく。ちょっとは整備しろよ」
雪は緑色の上着についているポケットに手を入れた。
しばらく暗い廊下を歩いていると、目の前に、赤い何かが、垂れてきたのに気が付いた。
「……何これ」
しゃがみこんでみた後、再び立ち上がって歩こうとした時、突然後ろから手を回され、ハンカチから薬品の匂いを感じた。
「うっ……」
手を退けようと、腕を掴んだが、どんどん力が抜け、腕は重力に逆らえなくなった。
視界が暗転し、その場に倒れこんだ。
「ナイフと拳銃どっちが好き?」
「……」
海は黙って俯いたままだった。
「うっ……」
「早く答えろよ。それとも何?殴られる方が良いのかな?」
女は海の鳩尾を蹴った。
海は後ろに手錠をかけられたまましゃがみこんだ。
海が俯いたまま黙っていると、女は拳銃を海の頭に突き付けた。
「やっと見つけた。夏田海。覚えてる?」
「……おいお前、なんで俺の名前知って……」
海の顔がどんどん
「忘れてるのか。君の相棒を殺した奴なのに」
「俺の、相棒……」
「じゃあ、話を戻すけど、協力はしてくれるの?」
「……俺の持ってる技術は絶対に渡さない。どんなに拷問されたって絶対に……」
「拷問の訓練受けてるのー?じゃあ、これは耐えれるよね」
彼女はスマホを取り出し、にやりと笑った。
彼女はスマホをポケットにしまうと、柱につなげている鎖を解いた。
「立って。早く」
海は不満げな顔を彼女に向けると、ゆっくりと立った。
部屋を出て、隣の部屋に移動した。
隣の部屋には、キーボードとそれにつなげられたモニター。真新しい、モニターのようで、画面が綺麗だった。
「……うっ」
彼女は海の髪を掴むと、モニターに向けた。
「雪⁉なんで雪が……」
モニターには雪が気を失っている映像。髪の毛を掴まれ、額には拳銃を突き付けられている。
海は彼女の方を見た。
「大体察しがつくでしょ?もしかしてまだ気づかない?」
「……‼絶対にお前らなんかに手を貸すかよ‼」
「あ、そう。ねえ聞こえる?どうやら、手を貸すつもりはないらしい。殺していいよ」
海は殺す、というセリフが聞こえ、目を見開いて画面に顔を移した。
「よせ‼やめろ!雪!逃げろ‼頼むから‼」
「聞こえてる?後十秒カウントするから」
女は耳に手を当てて、誰かに指示を出しているようだ。
「ああああああああ‼やめろ‼」
モニターの向こうで引き金を引きそうになるのが見えたとき、海はとある出来事を思い出した。
小学校の頃。五年生になって、科学者をしていた時だった。
当時の海は、科学者として、あるウイルスの開発を行っていた。
そのウイルスとは、ウィングウイルス。
不老不死の研究を行っているのだ。
研究の段階で、ウィングウイルスというのは、虹色の瞳になり、虹色の髪の色、美しい白い羽が生えてくることから、ウィングウイルスと呼ばれている。
開発する途中に、実験体のマウスに投与したところ、目の色、体毛が虹色、小さい羽が生えたことが確認され、海がそう名付けたのだ。
不老にはなったが、不死になることはできず、一週間後に死んでしまった。
当時、マウスの細胞が分裂を起こさず、細胞が古くなることはなく、死んだのだ。
つまり、10歳の人間に投与した場合、体が成長せずに、一週間後に死ぬことという事。
後は不死の要素を詰めるだけだった。
しかし、生物学があまり得意ではない海は研究に行き詰っていた。そこで、春風雨という、凄腕の現役の医者の監修のもと、研究を行っていた。
古くなった旧校舎の理科室を使って研究をしていた。
綺麗好きだった雨が掃除して、ピカピカになった研究室で、ウィングウイルスの研究を行っていたのだ。
「はぁーやっぱ綺麗な方が落ち着くな~」
「早くしろよ、雨。ウィングウイルスの研究」
「ハイハイ」
雨は海の方に駆け寄った。
「この前のマウスは、アポトーシス、つまり、細胞にすでにプログラミングされている、自然死が行われてしまった。このアポトーシスを抑制する必要がある」
雨は籠の中からマウスを取り出す。
「つまり、死なない、不死の細胞を作り出す必要がある。ってことは、害のないがん細胞を作り出さなければならないってことだよね」
「簡単に言えばそうだよな。テロメラーゼの多い細胞を、がん細胞、生殖細胞、その他の重要な細胞にも適用させなければならないという事だな」
「……うーん、難しいなーどうやったらできるんだろう」
2人で頭を悩ませていると、廊下にある電話が鳴った。
海が廊下に出ると、すぐに受話器を取った。
「もしもし。え、協力?いや、あの何度も言ってるようで悪いですが……俺たちはそう言うの別に……あなた達に協力するつもりはないんですよ、カルムさん」
「……」
廊下には海の困る声が響き渡った。