テラーノベル
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「……なあ、今日って、0時まで起きてられそう?」
夜のソファ。
隣に座るいふが、ふと聞いてくる。
「うん。起きてられるよ。……でも、今日はね」
初兎はクッションをぎゅっと抱きしめて、いふの目をまっすぐ見つめた。
「……0時まで、待たないでほしい」
いふが、目をぱちりと瞬く。
「……本音、今から言うの?」
「うん。……0時じゃなくても、伝えたいなって思ったから」
心臓がうるさいくらいに鳴ってる。
舌がからからで、手のひらも少し汗ばんでる。
でも、それ以上に——今、ちゃんと伝えたいと思った。
「俺さ、ずっと……“あの時間”に頼ってたの。0時になれば、勝手に本音が出るから。恥ずかしくても、自然に言葉が出てきたから」
「でも……最近、それがズルく感じるようになったんだ。
まろちゃんは、ずっと自分の意志で言ってくれてたのに、俺だけずっと甘えてたなって」
いふは黙って、初兎の話を聞いていた。
「だから、今日は、自分でちゃんと言うね。……あのね、まろちゃんのことが、すごく、好き」
「0時じゃなくても、ちゃんと好き。誰に何を言われても、俺が選んだのは、まろちゃんだって、自信持って言える」
言い終わった瞬間、初兎は思わず目をぎゅっと閉じた。
(うわああああああ……もう無理……)
でも——
「……初兎」
その声は、驚くほど優しくて、震えていた。
目を開けると、いふが少しだけ目を潤ませて笑っていた。
「俺、今まででいちばん嬉しい。……0時でも、0時じゃなくても、俺に向けてくれる言葉なら、なんだって大切にするよ」
「……うぅ、も〜、まろちゃんずるい……」
「じゃあ、今からは毎日“好き”って言って?」
「……は!?」
「朝昼晩と寝る前の4回セットで♡」
「調子乗るなあああああああ!!」
初兎はソファのクッションをぶんぶん振り回した。
でもその顔は、誰よりも幸せそうに笑っていた。
そして、その夜0時。
「ねえ、初兎。今0時だけど、何か本音ある?」
「……今は別にないけど。強いて言うなら、今日の自分、ちょっとだけカッコよかったと思う」
「……うん。めっちゃカッコよかったよ」
いふの返事に、初兎は照れ隠しのようにクッションに顔を埋めた。
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