(2人とも知り合いじゃない前提)
side.Kt
遅くなってしまった…。早く帰らないと…。この辺夜の街みたいな感じで怖いんだよなぁ…。ナンパも多いらしくて余計に怖く感じる。
「ねぇねぇそこのオニーサン?この後暇なら俺と一緒に遊ばない?」
嘘だろ…?女の人からされるなら分かるけど僕男だよ?怖くて足が竦む。拒否したいけど如何せん初めてナンパされたので思うように声が出ない。
「急いでるんでやめてください……」
「そうシケた面しないの〜!!いいからいいから!!」
押しが強くて話す暇がない。なんなら手首を掴まれて強く握られた。
「やだっ!!離してください!!」
「ったく、暴れてんじゃねぇぞ!!」
振り払おうとしたらさらに強く握られて怒鳴ってくる。怖い、誰か助けて………。
「ちょっと。俺の連れに手出さないでくれます?」
急に後ろから声がした。ちらりと後ろを見ると僕よりも背の高い男の人。白と黒のツートンカラーの髪に悪魔を象ったピンをつけている。服装はかなりラフ。
その人はナンパの腕を掴み、握られていた僕の腕を離した。
「あ”?こいつは俺のもんだよ!!」
「でも彼怯えてますよ?……さっさと散った方が身のためだぞカス」
彼はナンパの耳元で何か囁いた。するとナンパは一目散に逃げていった。誰だか分からないけど助かった…。
「ありがとうございます…。助かりました……」
「いえいえ。俺の方こそ急に連れとか言っちゃってすみません…」
「いや、そんな謝らなくても!!おかげで助かったので…」
助けてくれた人は優しくて腕の心配もしてくれた。
「ここは危ないのでこっちの方行きましょう。俺が案内しますよ」
僕の手をそっと取ってお兄さんは歩き出す。少し筋肉質な手は冷えていた。
いつの間にか仲良くなり連絡先を交換し、他愛もない話で盛り上がった。お兄さんの名前は”まぜ太”というらしい。言いづらいのでまぜちと呼ぶことにした。
「そういえば、敬語外しません?そっちの方が仲良くなった感じするので」
「は…あ、うんいいよ!!その代わりまぜちもちゃんと敬語外してね!!」
「もちろんだよ」
以外とすんなりと敬語を外してきたまぜちに少し驚く。コミュ力が高いのだろうか。
しかしここで重大な問題に気がつく。終電はあるのだろうか。一人暮らしだから門限とかは別に問題ないのだが一夜を過ごす場所がないかもしれない。
「ねぇまぜち、終電ある?僕もしかしたら帰れないかもしれない…」
「ちょっと待ってて、調べる………………あ、ないかも」
嘘だ、終わった。どうしよう…。ネカフェやカプセルホテルも探せばあるだろうけど如何せん地理に弱すぎる方向音痴の僕に分かるはずがない。なんならスマホも充電が限界を迎えている。
「どうしよう…帰れない…」
「家遠い感じ?」
「うん…」
「良かったらうち泊まる?1人くらいなら増えても平気だけど」
「お願いしてもいい…?」
「あったり前だろ」
助かった…。野宿は避けられた。しかし、僕の手を引いて案内するまぜちの口角が上がっていたことに気づくことは出来なかった。
まぜちの家は僕がいた場所から10分程で到着した。真新しいマンションの一室らしい。靴を脱いで上がる。
「お邪魔しまーす…」
「ん、いらっしゃい」
リビングのソファの隅を借りて座る。風呂に入るか言われたが入らないことにした。着替えは持ち合わせてないしこれ以上迷惑をかけたくなかったから。でもまぜちは普通に風呂に入らせて着替えまで貸してくれた。本当に申し訳ない。
「そんな思い詰めた顔すんなって。俺がやりたくてやってることだからさ。それにけちゃは笑顔の方が可愛いよ」
頭を撫でてそう微笑むまぜち。お人好しなのだろうか。でも僕を見つめるその目には同情以外の感情が見え隠れしている気がする。独占欲や恋慕、それに準ずる感情が。でも気の所為と割り切って気づかないフリをした。
「ありがとう…」
「もう遅いんだし寝る?俺と添い寝することになるけど」
否定はしたがあれよあれよと言いくるめられて一緒に寝ることに。そしてまぜちの寝室に着いた時、僕の視点は天井を映していた。
「けちゃさぁ、警戒心なさすぎじゃない?男の家に上がり込んで何もされないと思った?」
ベッドに押し倒されていることを理解するのに時間はかからなかった。上からのしかかり、僕のことを見下ろすその目は独占欲と欲求をありありと宿している。
「それとも自分は男だから大丈夫だと思った?けちゃは女の子みたいに可愛いんだから自覚持たないと。じゃないと食べられちゃうよ?俺みたいなやつに」
「なんで、急に………?」
「俺さ、けちゃに一目惚れしたんだよ。今日よりずっと前から。だから今日ナンパから守った時すげぇ嬉しかった。俺だけ見てくれると思ったからさ」
つらつらと述べられる真実に心臓が跳ね上がる。身体中の熱が上がっていく。こんなにも誰かに愛された記憶はない。真っ直ぐな目線に釘付けになって離せない。
「俺はけちゃのためなら世界だって裏切れる。それくらいけちゃのことが好きなんだ」
「まぜち………」
目頭が熱くなっていく。この人を愛したい。でも、僕にこれくらいの愛を返すことができるのだろうか。
「僕は…まぜちからの愛を返しきれる自信がない…。それで嫌われるのが…辛い」
「返さなくていい、俺がけちゃのことを愛したくて愛してるんだから。それで嫌うことは絶対にしない」
目に溜まった涙がこぼれる。堰を切ったように溢れ出すそれは頬を伝ってベッドに落ちた。彼を、たくさん愛してあげたい。意を決して口を開く。
「僕は…すぐネガるし求めたがるし、そのくせ返しきれる自信ないけど…こんな僕なんかで良ければ、傍に置いてください…!!」
まぜちは驚いたように目を丸くしたあと、優しく微笑んで僕にキスした。それは長くて甘かった。口を離したあと、
「嫌だったら振り払って」
と小さく呟いて再びキスした。今度は舌を絡め合う濃厚なキス。まぜちの舌が歯並びをすっと撫でるだけで肩が跳ねる。僕の知らない弱いところを確実に攻める舌使いは振り払う気力を失わせる。元から拒むつもりは無いが。
静かな空間に響く水音は羞恥心を煽っていく。バクバクと跳ねる僕の心臓の音が聞こえるのではないか。やがて離された口から銀色の糸を引き、プツリと切れた。
「まぜちぃ…」
「なぁに?」
「初めてだから優しくして…?」
「いいよ、でも可愛すぎて出来ないかも」
サラリと僕の髪を撫でて服を脱がせてくる指使いがとてもえっちでキュンとする。その奥でギラリと光る目は雄の本能をありありと示していて今日の夜が長いことを僕に意識させた。
変なとこで切ってごめんなさい🙏
謝罪程度に裏話、実はけちゃくんが家に連れ込まれたあとまぜちは感情を伝えずに襲うシナリオにしてましたがいつの間にかこうなってました。
最近まぜけちゃ小説が増えてきて嬉しいです。私も今まで以上に頑張っていくので暖かい目で見守っていてください!!
コメント
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最高👍