アネモネの散る頃に
「好きだよ。」
まだ肌寒い季節に君が言う。その子の口からは白い息がこぼれ、手先はかじかんでいるよう。私はその子に微笑んで、返答なんてしない。だって、この時を、この空気をずっと楽しんでいたいから。
9月の始まりを私に告げるチャイム。予鈴か…。耳障りなような、少し落ち着くような。そして私は教室のドアに手をかけ、一呼吸置いてからドアを静かに開けた。
ガラガラガラガラ…
教室を覗き込むと、そこにはみんな揃っていた。 一人を除いて…。
窓際にある自分の席へ足を運び、席に着く。先生はまだ来ていない。ふと、窓の方へ目をやると、何やら走っている生徒がいる。
「…?」
誰かは分からないが、急いでいることは分かる。
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