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3兄妹の修行は、さらなる苛烈さを増していく。
千姫は前に一歩踏み出し、鋭く息を吸った。
大天狗が不敵に笑い、青天狗が手を叩く。
大天狗
「よし、次は千姫の試練だ!」
その言葉と同時に、場の空気が一変する。
張り詰めた緊張感が、
千姫の背筋を凍らせた。
階段行 〜天狗の108階段〜
目の前にそびえ立つ石段――108段。
煩悩の数と同じその階段には、
無数の鬼火が飛び交っている。
炎のように揺らめきながら、
猛スピードで縦横無尽に駆け回る。
千姫は思わず息をのんだ。
大天狗
「お前の修行場はここだ。
この階段を目隠しをしたまま、駆け上がり、
鬼火を撃ち抜け。」
千姫
「なにそれ、無茶苦茶じゃない!?」
鬼火は生きているかのように動き回る。
目で追っても難しいのに、目隠しなど――
青天狗
「ははは……もう音を上げるのか?
ま、普通の人間なら当然だよな……
ククク……」
千姫
「……むかつく!
やってやるわよ!
見てなさい!」
憑依――信長の力をその身に宿し、千姫は銃を構える。
だが、最初の数発はことごとく外れた。
鬼火は予測不能な軌道を描き、弾は虚しく宙を裂く。
千姫
「くそっ……!
なんなの、コイツら!」
焦りが銃を持つ手を狂わせる。
無駄弾ばかりが増えて霊力を削っていく。
そんな千姫に、大天狗が低く告げた。
大天狗
「闇雲に撃っても当たらん。
感じるのだ。周囲の空気の揺らぎを――
心の目で、鬼火を捉えよ。」
深く息を吸う。
雑念を振り払い、意識を研ぎ澄ませる。
――見えないものが、見えてくる。
鬼火の軌跡が、ぼんやりと脳裏に浮かび上がる。
次の瞬間――千姫の指が引き金を絞った。
「バンッ!」
一発。かすった。
千姫
「……今の……当たった……!?」
手応えを感じた千姫の目に、闘志の炎が宿る。
鬼火の動きを読み、撃つ。
かすり、かすり、そして――
「バンッ! バンッ!」
的確に鬼火を射抜き始めた。
青天狗が思わず呟く。
青天狗
「おお……?
や、やるじゃん……!」
だが、これはまだ序章に過ぎなかった。
瞑行 〜薬王院〜
次なる試練は、薬王院での修行。
本堂の空気は重く、灯された香がゆらめいている。
経文の囁きが、不気味に反響する。
大天狗
「本堂で瞑想し、己の奥深くへと沈むのじゃ。
心の闇を乗り越えたとき、お前は真の力を得る。」
千姫は静かに座り、瞼を閉じる。
意識が深く沈んでいく――
その瞬間。
――目の前に、闇が広がった。
そこに、何かがいた。
不気味に歪み続ける赤黒い影。
まるで血のように燃え盛り、牙を剥いた怪物が、
千姫に向かって襲いかかる。
千姫
「な……なにコイツ……!?」
影は千姫の恐怖そのもの。
それは、彼女の弱さが具現化した存在だった。
千姫の心拍数が跳ね上がる。
背筋が凍る。
逃げなければ、飲み込まれる――
足の力が抜け、膝を着く。
信長の声が響く。
信長
「立て。
千姫。
お前は強い。
我の力と、自らを信じろ。」
千姫の胸の奥で、何かが燃え上がる。
千姫
「…げない…
私は……逃げない!!!」
一歩踏み出す。
影が襲いかかる――
「バンッ!!!」
銃声が闇を引き裂いた。
影が、一瞬だけ揺らぐ。
千姫はさらに踏み込んだ。
恐怖を押さえ込み、怒りを力へと変える。
敵の姿が揺らぎ、薄れ――
千姫の心に、光が差し込んだ。
瞑想から目覚めた千姫は、静かに息を整えた。
胸の奥に、確かな力の高まりを感じる。
大天狗
「よくやった。
だが、修行はまだ終わらぬ。
鬼火をすべて撃ち抜くまで続けるのじゃ。
達成したとき、お前はさらなる力を得る!」
千姫は、迷わず頷いた。
修行はまだ続く。
だが、確かに前へ進んでいる――
次なる試練へ、覚悟を決めた。