お爺さまとの修行は大体3日に1回くらいだ。
それ以外の日は基本一人でいつもの山の山頂で修行している。
いつものように一人で修行していると、今日へんな少年が現れた。
話を聞くと、陰陽師ではないがあやかしが見えるようで、あやかしから話を聞いてきたらしい。
歳は私と同じくらいで、ちょっと茶色がかった髪色で、顔は整っている。身長は175センチはあるだろうか。イケメンではあるが、なんだが話し方が軽い。まぁ、親しみやすい雰囲気ではあるが、まるでナンパされてるみたいだ。
なんだかよくわからないが組手をすることになった。
もちろん真広君を相手にするように本気でするつもりはない。札で動きを止めて終わりにしようと思っている。
自分で自分のことを強いと言っているが、おそらくそういうお年頃なのだろう。他の人とは違う特殊な人間だとでも思っているのだと、その時の私は思っていた。
私はさっそく札を飛ばしたが彼の結界に阻まれて札が消えてしまった。
少し強い結界は張れるようだ。
「もちろん!じゃあ、俺の番ね!」
そう言うと彼からものすごい霊力を感じた。
そして彼の周りに霊力の塊が無数に浮かび上がりこちらに飛ばしてきた。
「え?」
あまりの量に私は避け切ることができず、その弾に当たってしまった。凄まじい威力で私は弾き飛ばされた。
息が出来なくなり嗚咽するが、幸い怪我はないようだ。
すると彼はこちらに駆け寄り
「ごめん!大丈夫!?」
「あなた何者?」
普通の霊力ではない。明らかに私の霊力を遥かに上回っている。
「ただの少し強い高校生だよ!それよりごめんね、もっと力を抜けばよかった!」
「っ!だ、大丈夫。」
「あははー、ほんとにごめんねー。おれ人間相手したことないからわかんなくて。陰陽師っていうからもうちょっと強く打とうと思ったけど、力入れてなくてよかった!」
こんなことを言ってきた。
私は今まで修行に努力は惜しまなかったし、他の陰陽師と比べても強いという誇りがズタズタに引き裂かれたようだった。
なんにも努力をしていないような軽いやつに一撃でやられてしまった自分がどうしようもなく情けなかったし、彼の発言に物凄くむかついた。
「う、うん。ありがとね。私今日はもう帰るね。」
そう言って式を呼び出して下山した。
今日はもう修行はできそうにない。
それに彼とこれ以上一緒に居たくないので帰ることにした。
彼はなにか言っていたが、むかつきすぎてなにも聞こえなかった。
そして帰り道に、私も最初、彼相手に手を抜いて終わらせようとしていたことに気が付き、自分のことも嫌になった。
最近負けてばかりだ。強くなっているのだろうか。
真広君に、今日会った彼。
私は少し才能があるだけで、慢心しすぎていたのかもしれない。
世の中には彼らのような天才がいるのだと私は改めて思い知った。
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