テラーノベル
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ヴァルガラの大地に生えた門から出て来た1人目は、両手を掲げてあらかじめ溜めてあった煌気を放出する。
「さぁぁぁぁぁぁぁっ!! 『餓狼砲』!!!」
狼の咆哮が六駆の吸収している煌気の塊を半分ほど霧散させた。
続けて、スキルの使い手は頭をかく。
「こりゃあいけんねぇ! あたしゃいつもの癖で、攻撃スキル使ってしもうたいね! なははっ! 孫に頼られて張り切ってしもうた! ごめんねぇ!!」
最強の老婆。
呉の老人会を率いる、逆神みつ子。
孫の来援に乞われる形で本日2度目の戦場へとやって来た。
「あ! あばあちゃん!! 来てくれたんだ!!」
「ありゃ、莉子ちゃん! どうしたんかね、そねぇに汗かいてから! いけんよぉ、女の子が服を濡らしちゃあ! 胸のところまでびしょ濡れじゃあね!! 男は女の子のおっぱいをすーぐ見るけぇね!! はよこのタオルで拭きぃさん!!」
莉子さんの平らな胸部を普通に「おっぱい」として扱うみつ子。
「あ、はぁい!!」と笑顔で駆け寄る莉子。
これ以上の信頼関係はもう築けないレベルのカンスト好感度がそこにはあった。
みつ子が持参した手ぬぐいの1つを莉子に渡して、もう1つで自らも孫の嫁の体を拭く。
ちなみに、ばあちゃんの言う「タオル」は4割程度の確率で手ぬぐいである。
「こりゃあ出遅れたようじゃて。現着が妻よりも遅くになるとは、不覚じゃわい」
「お父さん、本当に遅いんじゃからぁ!! 昔っから肝心な時におらん人やねぇ!!」
続いて、頼りになるじいちゃん。
逆神四郎も到着。
逆神老夫婦が同時に戦場へ立つのはこれが初めてである。
「まあ、まだ間に合うようじゃて。そんなに怒らんでも良かろう。大吾は気付いたら手遅れじゃったからの。六駆の願いくらいは聞き届けねばじゃて」
「本当にねぇ。大吾はどこでどうしてあんなになったんやろうねぇ。お父さんにもあたしにも似ちょりゃあせんのは、不思議よねぇ」
どうやら、両親も逆神大吾の「育成失敗」には自覚があった模様。
「あ、あの! おばあちゃん! おじいちゃん!! えと、そのね!! 六駆くんが今、大変で!! あの、わたしが『苺光閃』で!! ど、どーしよう!!」
慌てる莉子さん、上手く状況を説明できない。
だが、事前に六駆からおおよその状況を聞いていた老夫婦はすぐに動き出した。
「莉子ちゃんはようやったねぇ。あとはね、ばあちゃんとお父さんに任せて、ここでゆっくりしちょきぃさんや。ねぇ、お父さん!」
「そうじゃぞい! ワシとて、まだ役に立てるところを見せておかねばならんのじゃ!! ひ孫ができた時に自慢してもらわんといけませんからの。ほっほっほ」
逆神みつ子と逆神四郎は速やかに六駆たちが上空にいる地点まで駆ける。
彼らは飛行スキルが使えないものの、そんな事はどうでも良いほどに有能なお年寄り。
「とりあえず、あたしゃ六駆の体を自由にさせようねぇ! あの子はなんか考えがあるみたいじゃったけぇね!! さぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
逆神みつ子の右の手のひらに煌気核が発生する。
この姿勢は、みんな大好き『万物流転』の構え。
「さあさあ! 吸い取るのなら任せぇさんや!! あたしゃ、掃除機使わせたら老人会で1番じゃけぇね!! 『餓狼隠滅』!!! さぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
六駆が吸収と放出を繰り返していた『苺光閃』の成れの果てが、みつ子の右手に凄まじい勢いで吸い取られ始めた。
続いて、四郎はこの作戦でお馴染みになった呪いの斧を取り出す。
「ちっとだけ改良して来たんじゃよ。お前の吸い取った煌気はワシの『男郎花』でさらに吸収し、それを常時大気へ放出させる。お前の体がもつ限りは、これで煌気の霧散ができるのじゃて。どのくらい耐えられそうかの?」
「1時間はイケるねぇ!! ……それからお父さん! お前はヤメぇって言いよるじゃろうがね!! 昔みたいに名前で呼びぃさんや!!」
「ほっほっほ。六駆と莉子ちゃんに当てられとるの。……みつ子、踏ん張りどころじゃぞい!!」
「まぁー! 久しぶりにお父さんに名前呼ばれたねぇ!! アガるって言うんかいねぇ、これ!! 任せちょきぃさんや、四郎さん!!」
逆神老夫婦、なんかイチャイチャし始める。
だが、2人の参戦により、六駆の負担が一時的にほとんどゼロになった。
ならば、この隙を生かさない理由がない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆は言った。
「バニングさん! これからアリナさんの煌気供給器官を一部封印、再構築します!! さっきも確認しましたが、良いですね?」
「ああ。アリナ様の生活が一般人と同じになるのならば!! 人並みの人生を楽しんで頂けるのならば、是非もない!!」
狼狽えるのはこれから改造されるらしいアリナさん。
彼女は、迷子になった幼女のように心細い瞳でバニングを見つめる。
「ま、待て、逆神! ……そなた、妾を救うつもりか!?」
「はい? ……ああ! ご本人に説明してなかった!! これはうっかり!!」
六駆は手早くアリナにこれから行う事を説明した。
自分には『生命大転換』と言う極大スキルが使える事。
それを用いて過去に古龍を竜人に再構築した実績について。
今回は応用で、体内の煌気供給器官だけを再構築する旨。
そうすれば、恐らく一般人よりも煌気総量が異常なほど高い体質は変わらないが、無尽蔵に煌気が湧き出る異能は解消できるのではないか。
それらを聞いたアリナはしばし言葉を失った。
だが、彼女も煌気については見識が深く、いくつかの問題点を指摘する。
「……話は分かった。だが、妾の特異体質は先天性のものぞ。それを後天的に再構築など、できるのか?」
「多分できますよ! ほら、親知らずが変なとこから生えてる人って抜きますし? あと、生まれつき足が悪い仔馬を手術で普通に走れるようにするってドキュメンタリーもこないだ莉子の家で見ましたし! あれは感動したなぁ!!」
「……ちょっと何を申しているのか分からん。が、まあ百歩譲ってそこを理解したとしよう。だが、煌気を変質させるためにはそれに勝る煌気が必要であるぞ。悪いが、逆神。そなたの煌気ではとても妾の煌気が宿っておる肉体の再構築など不可能。それは、莉子でも同じこと。無限と有限の間には埋めようのない差がある。……気持ちは嬉しいが」
そこで六駆はアリナの言葉を手で遮る。
門から最後のキーパーソンが出て来たからである。
「おおおい! 六駆ぅぅぅ!! 母ちゃん連れてきたぞー!! あと、パチンコ2時間で3万も勝っちゃった!! 今夜は焼肉にしようぜぇ!!」
「逆神。一応確認させてくれ。あのお前の父親がキーパーソンだと言わんだろうな? 仮にそうだとしたら、私の中のお前に対する評価が失墜する事になるが」
「冗談キツいなぁ、バニングさん! 僕が土壇場でアレを頼ると思います? アレには、お迎えを頼んだだけです! 腹の立つことに『門』使えるようになってたんで!!」
クソ親父の後ろから、ヒラヒラしたエプロンを付けた緑のロングヘアーが目を惹く美人が現れる。
「あらあらー。六駆ったら、今日もお仕事頑張っているのねー。あら、莉子さんも! まあまあー。ステキなお召し物ですねー。とっても可愛いですー」
「お義母さん!! えへへへへへ! そうですかぁ? 六駆くんが勧めてくれたんですよぉ、このショートパンツタイプ!! えへへへへへへへへっ!!」
逆神アナスタシアも登場。
これにて逆神家が全員集合した。
「紹介します! あれ、うちのお袋です!! 人の煌気を無尽蔵に底上げする異能を持ってまして! つまり、お袋に力を借りると僕の煌気もほとんど無限になるんですよ!! そうなれば、スキルでなんやかんやするくらい楽勝です!! お任せください!!」
アリナはすっかり10代の少女の顔になり、バニングの服の裾をキュッと掴んだ。
「バニングよ。なんか妾、ものすごく怖いのだが。何をされるのだ。妾が言うのもアレだが。何だ、人の煌気を無尽蔵に底上げって。聞いてるだけで震えるのだが」
「ご容赦ください。アリナ様に万が一のことがあれば、冥府への旅路をこのバニング・ミンガイルもご一緒させて頂きます。今は逆神を信じましょう」
究極の一族、逆神家。
ついに彼ら総出の、人の理を超えた大ハッスルが行われようとしていた。
コメント
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うわぁ逆神家集合エピソード来た!!🏠💕 ばあちゃんの「♡♡♡拭きぃさん」からの莉子ちゃんとの信頼関係カンスト具合に既に爆笑😭✨ 老夫婦の名前呼びイチャイチャも最高だし、まさか最後の切り札がお袋さんだったとは! 「無限×無限」でアリナさん再構築できるんか…ワクワクが止まらない!! 家族全員が主人公を支える構図、ちょっと泣けるレベルでした。続き楽しみにしてます📚💖
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