一松自殺未遂
精神病み?ます
十四松キャラ崩壊注意
今日も今日とて生きる価値の無いゴミ屑が
のうのうと生きている事に虫唾が走る。
松野一松は今日、死のうとしていた。
平日の昼間にも関わらず成人男性6人が各々自由時間を過ごしているというカオス。
雑誌を読むもの、鏡を見てポーズを決めるもの…死ねよ。そしてアイドルのグッズの汚れを拭き取ってるもの。それから野球のバットをまじまじ見詰めて考え込むもの、スマホで女の子に連絡をとってるもの。
それから俺はこうやってやることも無くただただゴミのように隅に座ってる。
毎日毎日こうやって考え込むようになってから食欲もないし痛覚も感覚も何もかも無くなった。
幸い兄弟にはバレてないし言う程でもないから隠してるけど…
体重も10キロ〜20キロくらい減ったけど存在感ないし影薄いからバレてない。
まぁ俺みたいなやつのゴミみたいな自己紹介なんてやめて本題に入ろうか
実は死のうと思ってるんだよね
俺みたいなやつが生きてても何にもならないし、正直疲れた
…とりあえず遺書でも書きますかね
誰も居ない部屋に移り、一松は猫柄の鉛筆を手にした。
『皆へ、…ごめん。正直ずっと死にたいって思ってた。実は何ヶ月も前から痛覚も感覚も食欲も無くてなんにもやる気が起きなくてこんなの本当に屑だって思ったから死ぬ。今までありがとう。遺すものだって何も無いし死んだ所でまだ迷惑かけるかもだけど、許して。本当にごめん。これからは7人家族として幸せになって。今更死んでも無意味だって思うかもだけど限界。さよなら。一松より』
しんと静まり返る部屋の真ん中にぽつんと佇むちゃぶ台の上に遺書を置き、少し離れた場所に台を置いて縄を柱の突起に括り付けた。
ギッ、としっかり結ばれた音を確認して首を通す。深呼吸をして小さく誰に向けられたものでもない謝罪を呟き、一松は台を蹴り飛ばした。
重力によってズンと重くなる身体につられてどんどん締まる首に幸せを感じる。
久しぶりに感じる苦しさが一松の顔に笑顔を浮かべさせる。
やっと、やっと…
死にたいと思っていたはずなのに幸せと同時に恐怖心が襲い唐突に涙が出る。
手も震えるが、これは恐怖心からなのか酸素不足でなのか。それは一松には分からなかった。
段々目の前がぼんやりとしてきて、苦しさも無くなってきた頃。暗くなる視界の中で兄弟の今までで1番の大声が響き、縄を握っていた指は脱力してだらんと伸ばされた。
目を覚ませば真っ白な天井。
一松は死ねたのかと歓喜したが、視界に映る潤んだ瞳が死ねなかった事を痛感させた。
「兄さん、兄さんがめをさま、しっ…う、うううう〜っ…!!」
末っ子のトド松がその場に崩れ落ちて声を必死に我慢しながら大粒の涙を流していた。
それにつられ病室にいた家族みなが涙を流し、安堵の表情を浮かべた。
「い、ちまつ…っ」
一松が生きてきた中で始めて長男の泣き顔を見て、少し申し訳なく感じた。
「……め..」
締められすぎて機能を失いかけた喉で謝罪をする。
自分自身でさえ何を言ってるのか分からなかったのに家族は感じ取ってくれた。
「い、ちまつ…」
「いちまつ…」
「…」
「いちまつにいさ、うっ…うあああああああん!!!!」
「いちまつにいさぁぁぁぁ…っひぐっ、うっ…」
号泣する弟を見て申し訳ないと思った。
が、一松の中では死ねなかったという事実だけが渦巻いて一松の心を蝕んでいた。
実際病室の中で一松だけが無表情で辺りを見回していた。
それからは強すぎる希死念慮と自傷行為と遺書等その他諸々の関係で病状回復までの入院が決まった。
着々と進む準備に呆気に取られ、あっという間に精神病棟へと移った。
それからも毎日死にたいと考え込む日が続き、お見舞いに来る家族達の精神も安定してきた頃、一松はもう一度自殺を図った。
幸い手元にあったカッター。
医者にも看護師にもうまく隠して1度もバレなかった刃物を震える手で持ち、今度こそ確実に死ねるように太い脈へ振り下ろした。
やはり包丁より切れ味が悪く大きさも足りない。
幸福感より自分のナカに入ってくる冷たい刃の感覚が一松を更に狂わせた。
「はっ…っぅぐぅ…っ」
本当は痛みだって苦しみだって、一松の中には存在していた。
生きていく上で必要な感覚を一松は遮断していただけだった。
「っい、た”っい”…っヒヒ…」
涙と血液が零れ紫色を基調とした薄いパジャマを濡らす。
どれだけ痛くても苦しくても、一松は手をとめずに何度もカッターを抜き差しした。
そんな様子を監視カメラで見られていることも気付かず必死に死のうとしていた。
モニター室の看護師、受付カウンターの看護師、医者、そして松野家へと連絡が渡った。
とても静かな、それでいて皆自由時間をすごしていた時、家の黒電話が大声で叫んだ。
「はいはーい!」
だらりと垂れ下がった袖を振り回しながら十四松が耳に受話器を当てた。
途端十四松の顔から笑顔が消えた。
「はい!松野でっす!………え、っい、一松兄さんが…っはい、はい分かりました…今すぐ向かいます…」
居間でゴロゴロしていた皆が「一松」という単語に反応して一気に起き上がる。
「おい、十四松!一松がどうした?!」
電話を切り、ただただ震えて座り込む十四松におそ松が話しかける。
「い、ちまつ兄さん…今死のうと、して意識が…っう…」
大きな瞳から溢れる涙を見ておそ松はみんなを連れて病院へと向かった。
5人分の慌てた足音が静かな病室の前へ集う。
おそ松の震える手がドアを引いた。
そこに居たのは包帯が首元に何重も巻かれ意識の無い一松だった。
医師は悔しそうに口を開いた。
「松野さん…これは…これは私の責任ですっ…一松さんがカッターを持っている事に気付けなかった…私のせいです。本当に申し訳っありませんでした…。」
医師は土下座をする勢いで必死に頭を下げた。
「ちょ、落ち着いて下さい!まず、一松は意識が無いだけで生きてるんですよね?」
黙り込むおそ松の代わりにチョロ松が冷静を装い話しかける。
医師は神妙な面持ちでもう一度口を開いた。
「生きてます…しかし先程意識が無い時に身体を拝見した所切り傷や引っ掻き傷がそこら中にありました。傷から考えてまた目を覚ますと自殺行為をするかもしれない…です…」
十四松とトド松が息をのみ、顔を見合せた。
「でも、意識を覚醒させるのを遅くはできません。だから一松さんが目を覚ましたあと、そばに居てあげてください。」
誰1人口を開かないが、おそ松ただ1人が当たり前だ!と言わんばかりに鼻を啜った。
それから数日間、一松は暗闇の中で過ごした。
本当は意識だってとっくに戻ってた。
それでも皆に迷惑を掛けたことを酷く後悔し意識がないふりをし続けていた。
皆代わる代わる一松の看病に来ていた。
その日は十四松とカラ松がベッドサイドで世間話をしていた。
一松との思い出話。
あの時の兄さんが可愛かった、また野球がしたい。
なんともほのぼのする内容の話だった。
が、突然十四松が大きな瞳を涙でいっぱいにさせて嗚咽しだした。
「っぅ、うぅっ…!」
「じゅっ、じゅじゅじゅ十四松?!?!」
カラ松もテンパって大声を出す始末。
一松も突然の出来事に瞼がピクリと反応した。
それをカラ松は見逃さなかった。
「え…一松?起きているのか…?」
一松はカラ松を騙せた試しがないので諦めて降参をした。
騙せないのはカラ松だけでは無いが。
「…はぁ、ずっと起きてたよ」
面倒臭そうに上半身を起こし、ぽかんとしている十四松の頭を撫でる。
「…ごめん。」
俯きながら小さく謝罪を送る一松に驚き、カラ松と十四松は顔を見合せた後、にっこり笑って一松を抱きしめた。
「おかえりっ!一松兄さん!」
「うん…ありがと」
「おかえり、My Brother…」
「ウザイ」
「えっ」
そんなこんなで和気あいあいとした雰囲気が流れているなか、カラ松は家に連絡すると言って病室から出ていった。
途端十四松の顔から笑顔が消え、光のない目で一松を見詰めた。
「一松兄さん、何で死のうと思ったの?首吊る時もカッターの時も僕達の顔、思い浮かばなかった?ねぇ、目を逸らさないで。こっち見て。うん、良い子だね。それで、一松兄さんは何から逃げようとしてたの?言いたくなければ良いよ。そういえばリスカもいつの間にしてたの?僕いつも一松兄さんのこと見てたと思うんだけど。もう自分を傷付けないでね。僕は一松兄さんが好きだから。とにかくさ、僕から逃げれると思わないでね」
一松の手を握り、顔をズイっと近付けて一息で言い切る十四松はあまりにも狂気的で一松に恐怖心を大いに与えた。
ヒュッと鳴る喉に働けと臀を叩きたい気分だ。
「…ヒヒッ…ごめん。俺も十四松のこと好きだよ」
そういえば先程まで追い詰めるハンターのようだった十四松の顔がみるみるうちに笑顔になり、可愛らしく笑いながら一松の傷だらけの身体にダイブした。
すると十四松は一松の袖を捲り、ケロイド状になった腕にキスを落とした。
「あは!一松兄さん真っ赤っか!かわい!」
「もう…やめてぇな。恥ずかしいやないの」
「いやぁあんさんほんまかわええわぁ!」
「いやいや、十四松はんの方が可愛ええやないの。」
そう言って十四松のサラサラの髪を掻き分けて額へキスを落とした。
と同時にカラ松と残りの兄弟が入ってきた。
一松はキスしたまま固まり、ドアから覗き込んだトド松も固まっていた。
「一松っ…っ兄さん!!」
トド松が涙目でダイブしてきたことにデジャヴを感じながらも頭をわしゃわしゃと撫でてあげる。
トド松と十四松は寄ってきてくれたがおそ松、チョロ松は俯きながら拳を震わせていた。
「おそ松…兄さん…?」
長男のキレた姿を知っている一松はキレているのかと不安になる。
しかしそれは杞憂に終わった。
「あのさ、ごめんみんな。ちょっと一松と2人にしてくれない?」
おそ松が申し訳なさそうに口を開き、皆も頷き病室から出ていく。
さっきまで十四松が座っていた椅子にどっかりと腰を落としておそ松は一松のガラス細工のような瞳を見詰めた。
「一松…俺、兄ちゃん失格だよ」
何を言われるのかと思いきやおそ松は自分を責めているようだった。
「…なに、言ってんの?おそ松兄さんはこんなゴミ屑をいつも助けてくれる…し…」
口を開き自分を卑下する一松の肩に両手を置き、おそ松は真剣な眼差しで話し掛けた。
「一松。お前さ、ずっと泣きそうな顔してるよ?俺、長男なのにそんなに頼りない?俺の前では本音言っても良いし泣いても良いんだよ?…ほら」
肩から手を離し、両手を広げて目尻に涙を溜めて一松を見据えるおそ松。
すると一松は顔を歪めておそ松の胸へ飛び込んだ。
「っぅ…ひぐっ…お、そまつにいさっ…!」
よしよし、と兄moveをさらけ出しながら一松のボサボサの頭を撫でる。
そんな時間が10分程続いた頃。
「ね、一松。」
おそ松が白い天井を見上げながら名前を呼んだ。
「ん…なに。」
名前を呼ばれた頃には涙も存在を隠し、ただただ2人抱き合っていた。
「お前さ、本当は死にたくなかっただろ」
一松は鈍器で殴られたように頭が真っ白になった。
言い辛くて黙り込む。が、おそ松は言い知れぬ威圧感を纏っており、言うしか無かった。
「…っ死にたく、なかった」
口にすれば引っ込んだはずの涙がまた赤いパーカーを濡らす。
気付けばおそ松以外の皆も病室に入っていた。
それでも一松の涙は止まることを知らなかった。
「「「「一松(兄さん)…」」」」
一松の耳に入る兄弟の啜り泣き。
「生きたい?」
おそ松は涙を流しながら、とびっきりの笑顔で聞いた。
「っ…!!生きたい!死にたくない!置いていかれたくない!でも僕、僕は…なんにもっ…」
歯切れの悪い言葉を吐き捨てた後、一松はわんわんと泣いて眠ってしまった。
その後医師は「問題は解決したようなので、退院しても大丈夫ですよ。傷も致命傷では無いしそのうち治りますので…。お疲れ様でした。」
帰り道、おそ松の背中で眠る一松の顔はスッキリした、安心している顔だった。
コメント
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あれ、目から滝が…?
良がっだ〜