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ぬらー°.*:.。.☆・ 様より、中英くすぐり拷問




































底なし沼のように意識を絡め取る深い眠りから目を覚まし、最初に感じたのは朝の心地良い日差しでも、静かな夜に相応しい月光でもなく、目を塞がれてできた暗闇。

何事だと声を上げようとしたが、口に噛ませられた布がそれを防ぐ。

どうやら腕も脚も固定されているようで、寝かされていること以外自分がどのような状態なのかすらわからなかった。

時の流れすらも感じにくかったが、重厚な音を響かせ、扉を開くような音を聞き取る。

「お目覚めですか、英国」

「っ!」

口を開きたくとも、漏れるのは言葉にならない呻き声ばかり。

「突然誘拐してしまったことについて、まずは謝罪いたしましょう。そんな体勢のままで許してくださいネ」

謝るくらいなら拘束を解け。

そんなセリフを吐けたのなら、自分は黙って聞いていない。

「……」

「おや、なんだか不機嫌そうなオーラ。今から無理矢理笑わせてあげますヨ。質問に答えてくださらないのなら、ですが」

長ったらしい講釈を垂れ、中国であろう人物は轡を外す。

「ふん…あなたと話すことなどありませんよ」

「誘拐犯の前で、よくそんな言葉が吐けますネ。三枚舌は伊達ではないらしい」

「喧しいですよ。さっさと私の拘束を解きなさい。今なら賠償金だけで許して差し上げましょう」

怯えた様子など一切見せることなく、イギリスは気丈にもそう言い放った。

どちらの立場が上かなんて、馬鹿でもわかるだろうに。

「さて、質問ですが…」

「私を無視するとはいい度胸ですね」

「私、兄を探していまして」

「…はぁ?」

イギリスの言葉になんの反応も示さぬまま、中国はそう言ってきた。

「ご存知でしょう?清のこと」

「…あぁ、あのヤク中を探しているんですか。それなら墓でも掘り返してはいかが? 」

馬鹿にしたような笑いを溢し、中国を煽る。

清が中国の兄だとは知らなかったが、どちらにせよ奴は死んでいるのだ。

墓を掘り起こし、とっくの昔に白骨化したであろうそれとご対面することしかできない。

「兄を殺したのはあなたでしょう。そもそも、死んでいるかすら不明ですが」

「何を言っているんだか。奴はクスリに溺れて死んだ、そのはずでは?頭がおかしくなりましたか。それとも、アヘンでも吸いました?幻覚に惑わされていらっしゃるようですね」

もちろん原因はイギリスだ。

だが、国同士の関係などそんなものだろう。

殺し合ってこそ今の平和な世が築かれてきた。

死んだ兄を探しているからと言って誘拐されては、世界中が誘拐の被害者であり加害者となる。

特にイギリスに関しては、身一つでは足りないだろう。

「相変わらずよく回る舌ですネ。そうして兄も追い詰めたのでしょう?ですが、墓が見つからないんですヨ。どれだけ探しても見つからない。英国に行ってみても、私の国を探してみても、兄の姿も墓も痕跡もない。おかしいと思って、何か知っていそうなあなたを誘拐させていただきました」

「…頭がおかしいですね。そもそも、私はあなたが渡航してきているだなんて存じ上げませんでしたよ。密航ですか?」

「まさか!ですが、そんな言葉をいただくとは想定外ですネ」

口調は丁寧、機嫌も普通、肉親を探していると言う割には、些か不自然なほどに普通の様子。

変に怒りを露わにしているより、余程不気味だった。

「うーむ…答えてくださらないようですネ」

楽しそうにそう言うと、中国はイギリスの細い首を、何か柔らかいものでくすぐり始める。

「あ゛ッ?!あはッ、んふ、あはははッ!」

「こうなったら、兄のヒントをいただけるまでくすぐることにいたしましょう!」

さらさらと肌を撫でていくものは、きっと鳥の羽だろう。

細やかな羽毛がむず痒さを引き起こし、笑い声となってイギリスを苦しめた。

人前で大きな声を出して笑うなんて、とマナーに反している羞恥心や、嫌いな相手にいいように弄られていることへのムカつき、これから自分がどうなるかよくよく知っているからこその恐怖。

身を捩って拘束から逃れようとするが、革のベルトと金属がうるさく場を盛り立てるだけ。

「ひッ、あ゛ぁッ!あはッははッあぁ゛あッ!」

息が苦しい。

肺の中の酸素も、わずかに取り込んだ空気も全て、笑い声となって霧散していく。

側から見れば間抜けな光景だろう。

拘束された男が、首をくすぐられて笑い転げているだけなのだから。

けれど、当人であるイギリスとしてはそんなことで済むはずもない。

「こちょこちょこちょ〜」

「ゃめッろ゛ッ!!あ゛はッあはははッ!!」

中国は片手でくすぐりながら、もう片方の手でイギリスの服を切った。

ひんやりとした空気が触れて少し笑いを治めるが、首から移動して脇や横腹をくすぐられる。

腹筋に力を込めて必死に耐えようとしたところで、くすぐられていてはろくに力が入らない。

気がつけば、生理的な涙で目隠しが湿っていた。

なんと情けない姿だろう、自尊心が壊れていく。

「今話すと言うのなら、やめて差し上げますヨ」

「し゛らない゛ッ!!ぁはははッ!!ほ、と゛に゛ッ!!だ、だか゛らッ!やめろッ!!! 」

頭が痛くなってきた。

どこかはわからないが、ただ自分の馬鹿笑いが響いている。

屈辱的で、恐ろしくて、叫ぶように言葉を紡ぐ。

「そんなはずはありませんヨ!これでダメなら、もう少し違う方法を試しましょう」

「はぁ…はぁ…ひゅー…な、なに、を… 」

ようやく落ち着くことができたものの、拘束は解かれていない。

ぼーっとして息をしていると、また重々しい扉の音が聞こえた。

中国がいなくなったらしい。

「今のうちに…何かできないでしょうか…」

首、足、腕、手首、四肢はガッチガチに固定されている。

しかしくすぐるためなのか、胴体は特に何もない。

なんとか抜け出そうと暴れたところで、外れないことは既にわかっている。

それでも、暴れずにはいられなかった。

嫌な予感が止まらないのだ。

くすぐり拷問とはそもそも、羽や人の手、動物の舌なんかで行われる。

誰でもできる簡単で凶悪で滑稽な拷問、それがこれだ。

中国は諦めていない。

戻ってきたら、またあの苦しくてどうにかなってしまいそうな時間が始まる。

それだけは嫌だ。




そんな願いも虚しく、動物の鳴き声や複数の足音と共に扉の開く音が聞こえてきた。

「お待たせいたしました。さ、続きといたしましょう」

「まさか、お前…」

「メェ〜〜」

「ひっ…」

「お察しの通り、ヤギです。1匹連れてきました」

蹄と硬い床がぶつかる小気味良い音と間の抜けた鳴き声。

嫌な予感というのは、8割当たらないそうだ。

どうやら、2割を引き当てたらしい。

なんという豪運だろうか!

「失礼しますネ〜」

「ひゃ…ッや、やめてください…ほんとに何も知らないんです…ッ!」

「そんなわけないでしょう?そのネジの外れた頭で、よ〜〜〜く考えたらわかるはずですヨ」

ハケか何かで液体を塗られ、メェメェ鳴きわめくヤギの鳴き声が近づく。

「い、いや…いやぁぁ…ッ!」


ヤギや牛なんかの動物たちは、基本的にミネラルやナトリウム…要は塩分が足りていない。

なので、畜産関係では塩分やその他栄養分のあるブロックを設置し、舐めさせることで補給する。

もし、人間の皮膚に塩水を塗ればどうなるか。






答えは簡単、猫のようにザラザラの舌を持つヤギが何度も何度も塩を求めて足を舐めれば、柔らかい皮膚は簡単に 裂ける。

「あ゛ぁああ゛ッッ!!!」

血が出たところで、血液にも塩分は含まれているから関係ない。

傷口をザラザラザリザリ舐め回され、広げられていく。

これこそが、中世の名だたる拷問の中でも残酷で滑稽で間抜けで簡単で恐ろしく効率の良い拷問。

通称ヤギ責めである。

初めのうちはくすぐったく、ただ戯れているだけのようだろう。

しかし、皮膚が裂け始めたら終わりだ。

「はぁ…にしても、苦労していなさそうな足ですネェ…肌はすべすべで血色が良く、爪も綺麗に切り揃えられて、なんと贅沢な…ひん曲がった性格を抜きにしても、まさにブルジョワジーな見た目で腹が立ちます…」

イギリスには見えていないが、中国はおよよ…と演技ったらしく目元を覆う。

激痛に叫ぶイギリスなどお構いなしで、むしろにこにこと心底心地良いと言わんばかりの表情だ。

「メェ〜!」

「おおよしよし、たくさんお食べなさい」

「と゛めて゛ッ、やめて、くださ゛ぃ…!」

イギリスの声など全く耳に入れず、中国はその様子を映像として収めていった。

初めはただザリザリと舐める音だったのに、皮膚が抉れ始めた今はぐちゅぐちゅと気持ち悪い音に変わっている。

肉をすり潰すような、フォークやスプーンで掬い取るような、脳と鼓膜がその音を離さない。

「はぁ…はぁ゛…ッ…おねがい、ですッ…やめて、も、やめてくださぃ…」

「嫌ですヨ。清の居場所を言ってください」

「知らないですってばぁ…!!」

「じゃあダメです」

痛みが脳を支配する。

目が見えない分足の痛みを鮮明に鮮烈に感じ、ビリビリと脳を焼く。

中国の馬鹿にしたような笑い声と肉を擦る音に気が狂いそうだった。


















「ひゅー…ひゅー…あ゛ぁッ!ぅ…ふー…ふーッ…」

「痛そうですネェ。骨まで見えちゃってまあ」

皮膚を擦る音、肉を潰す音の次は、骨を掠る音。

肉が抉れて骨が見え始め、それでも容赦なくヤギは舐め続ける。

「本当にわからないんですか?ちゃんと考えてくださいヨ」

「わかんないって、言ってるじゃないですかぁ… 」

「…はぁ、そうですか。そこまで頭が悪いとは知りませんでした、興醒めです」

「ンメェェ〜!!」

先ほどまでの愉快そうな声とは異なり、突然本性を表したかのように低い声で言い、中国はヤギを離した。

だらだらと流れ続ける血液によって服はもうぐちゃぐちゃで、冷たい空気は剥き出しになった骨によく滲みる。

それでも、ベロベロ舐められている時より何倍もマシだ。

「なあ、イギリス。お前は本当に俺のことを覚えていないのか?」

「っ…その、口調は…」

「ようやくかぁ?間抜けめ、遅いにも程がある。俺が飽きてから気がつくとはな!」

耳をつんざくうるさい声。

相変わらず拘束されたままの体で、血液だけが流れていく。

「拷問は楽しかったか?渡航者を覚えていると言ったから、驚いたぞ。始める前にバレるかと思った。だが、お前はその矛盾にすら気が付かず、まんまと拷問されてくれるとは!流石、心は狭いが領土は広い大英帝国サマだな。いや、今は心も領土もネズミの巣みたいに狭いか?」

目隠しを取られると、 目の前には首飾りと懐かしい顔がある。

「最初から、これが狙いですか…清」

「あぁそうだ。お前を苦しめるためだけにやった。あの後大変だったんだぞ、中毒から抜け出すのに何年かけたと思ってる」

「はっ…ご自分が悪いのでは?アヘンを吸ってた方が素敵でしたよ」

「黙れ」

「い゛ぎぅッ…!」

スンと真顔になって傷口を掴まれた。

すぐに清はにっこり笑って、また中国へと戻る。

王朝が変わって姿を変える国はいくつもある、彼もその一つであるらしい。

「痛めつけているのを眺めるのは飽きました。やはり、私自らの手で苦しめませんとネ」

「ぇ…」

「さぁさ、どこぞのヒーローに見つかる前に、もう少し楽しませてくださいネ」

「ゃ、やめッ…!」


薄暗い地下室に、イギリスの笑い声が響いた。

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