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「ぺいん先輩、それ私服ですか?」
警察を退勤し明味房に向かうため、中華服に着替えたぺいんに後輩の真島が声をかけた。古参の署員はぺいんが明味房で働いていることを知っているが、ぺいんがあまり出勤しなくなった頃に採用された警察官たちにとっては珍しい格好だったのだろう。
呼びかけられたぺいんは「これ?」と真島に返事をする。
「私服というか明味房用の服」
「警察以外の服を着てらっしゃるの珍しいですね」
真島が珍しいといったぺいんの服装は黒の中華服に白のズボンに革靴だ。髪型も警察の時とはちょっと違う。
「うーん。私服が無いわけじゃないけど、僕、服のセンスないんだよね」
ぺいんは上衣をつまみながらそんなことをいう。
「自分で明味房用に中華系の服で揃えたらギャングっぽいとか言われるし。だんだん何が似合うのか分からなくなるし、面倒だからミンドリーに教えてもらったんだよね。色は変えたけど」
真島はミンドリーが明味房にいるときの服は白の中華服に黒のズボンである事を思い出した。その姿を思い浮かべ、思った疑問を口にする。
「リンクコーデですか?」
「リンクコーデ?ってなに?」
ぺいんにとっては聞きなじみのない言葉なのか、真島の言葉をそのまま疑問形で返した。そんなぺいんに真島はリンクコーデの説明をする。
「ペアルックは分かります?」
「うん」
「アレとちょっと違って、服の色とか雰囲気とか素材とかをおそろいにするコーデですね。ぺいん先輩とミンドリー先輩が同じ服の色違いなので、そう思ったんですけど」
「へぇ。そういう風に言うんだ」
「前に占いに行った時、恋愛運でミンドリー先輩がぺいん先輩のことを言っていたので、てっきり意識してあわせているのだと」
真島は以前に警察の数人で占いをしてもらった時のことを思い出し、真偽も含めて聞いてみた。これにぺいんは少し大きな声で否定する。
「あいつ、まだそんなこと言ってるの?ないない。同期だし、さぶ郎も入れて3人で家族だし、特に意識とかしてないって」
服装の話から少し脱線しかけたところで、ぺいんと真島の背後からミンドリーが声をかけた。
「悲しいこと言うねぇ」
「お前さぁ、また誤解されるようなことを………」
「んー?」
音もなく現れたミンドリーはぺいんの肩に手を置き、少し首をかしげながら会話に混ざる。
少し背の高いミンドリーが視線を下ろすと、ぺいんは見慣れた中華服だった。
「ぺいん君。明味房行くの?」
「警察の出勤人数多いし、店番しようかなって」
「俺も行こっかな」
「退勤しても大丈夫なん?」
「今日は署長とキャップもいるし。皇帝もいるし。着替えてくるから一緒に行こうよ」
「んじゃ、駐車場で待ってるわ」
ぺいんは自分だけで明味房に行くつもりだったが、ミンドリーも一緒に行くことになった。既に着替えていたぺいんは先に駐車場へ向かい、その場にはミンドリーと真島が残った。
ミンドリーは困ったような顔つきで真島に話しかける。
「真島。ぺいん君はあまりつつかないであげてよ」
「エー。多様性の時代ですし、そんなに気にすることでは………」
真島からすれば先ほどは先輩と軽口を交わしたに過ぎず、ミンドリーが気にするほどの内容でも雰囲気でも無いはずだ。
「真島」
ミンドリーは再び真島を呼ぶ。少しピリッとした呼び方に真島が姿勢を正して返事をする。
「はいっ。なんでしょう」
「『やぶ蛇』って知ってる?」
そう言ったミンドリーの目は笑っていなかった。
「お待たせー」
本署前の駐車場でバイクに乗りながらえびすと話をしていたぺいんの元に、着替えて退勤したミンドリーがやってきた。ミンドリーはそのままぺいんのバイク───二人乗りができるナイトブレードの後部座席に乗り込む。
「あれ、自分の車出さないの?帰るとき大変だと思うんだけど」
「んー。そうなったら向こうのガレージにも車おいているから大丈夫だし。たまにはいいでしょ」
「まぁかまわないけど。じゃぁ、出発するよ。えびすも暇ができたら明味房に買い物に来てね」
ぺいんはえびすにあいさつをし、バイクを発進させる。走り出したバイクの後部座席のミンドリーは前に座るぺいんの肩に頭を乗せ、体に腕を回す。警察の時と違う薄い服の上からほんのりと体温が伝わってくる。
「なに?疲れている?」
「ん〜?」
「お前、毎日忙しそうだもんな。たまには休めよ」
「んー」
それほど遠くない距離のドライブ。爽やかな風が二人の頬をなでていった。
一方、本署前でぺいんとミンドリーを見送った真島はしばらくの間そこに立っていた。そんな真島の様子を不思議に思ったえびすが声をかける。
「姐さん?ずっと立ちっぱなしでどうしたの?」
えびすに話しかけられたことで我に返った真島は、このとき感じたことを話した。
「この警察署で一番怖いのは夏苗先輩だと思っているんですが、ミンドリー先輩も怖いです」
「あー」
先ほどの様子を見る限り、二人のことというかぺいんをつついたらミンドリーに静かに圧をかけられたのだろう。
えびすは真島に「上手く言えないけど」と話し始めた。
「『特別』なんだと思うよ。同期だし」
「警察でも街でも同期は特別ですよね」
「あと、あそこはさぶちゃんも入れて3人で『家族』だから」
「さぶ郎先輩がそうなのは知っていましたけど」
「うん。おご先(ぺいん)出勤少ないから、知らない人もいるかもね」
会話の終わりを見極めたように銀行強盗発生の通知が鳴る。二人は通知を確認し、対応に向かうべくガレージに向かって歩き出す。
友達や恋人ともちょっと違うこの街での特別な存在。
真島の脳裏には度々やらかしていた警察の同期や黒に進んだ街同期の顔が浮かんでいた。
コメント
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きゃあああ!!第7話、めっちゃ好きな回だった😭💕 リンクコーデの話題からミンドリーの「やぶ蛇」って一言、あの空気変わった瞬間マジで鳥肌…!ぺいんを守る感じがひしひし伝わってきたよ。 バイクの後ろで肩に頭乗せるミンドリーとか、薄い服越しの体温描写とかエモすぎて昇天するかと思った。。。 「同期」「家族」「特別」——この3人の関係性の解像度が一気に上がった回だったなあ。真島もいい役どころだね!次話も楽しみにしてるよ🌸