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#極道
鷹槻れん

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latte
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『無事に契約できたみたいですね』
私がパニックになりかけているのを察したのか、修太郎さんが電話口でふっと小さく吐息を漏らされた。
「あ、修太郎さん、今、笑いましたね?」
彼に突っ込んでそう言うと、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
「私の番号、ちゃんと通知されてましたでしょうか? ――あのっ、正直まだ使い方がよくわかっていなくてっ」
言うと、『大丈夫ですよ。ちゃんと表示されていました』と返ってきてホッとする。
『ところで日織さん、今どちらにおられますか?』
修太郎さんが聞いていらっしゃるのへ、doconoショップ近くの公園名を告げる。
「多分……タコ公園の愛称で皆さんが呼んでおられる公園かな?って思います」
公園のど真ん中にドン!と鎮座する大入道のようなタコ型滑り台の黒々としたシルエットを見ながら付け加える。
修太郎さんは公園緑地係の係長さんだから。市内なら、公園の名前や、最悪設置された遊具の特徴を言うだけで、場所をすぐに把握してくださる。
(両方告げた今は、きっと鬼に金棒なのですっ)
『もう暗くなってきてるでしょう? そこは人通りも余り多くないですし、すぐに出ましょう。話しながらのほうが安全ですから通話はこのまま。あ、でも日織さんに電話代がかかりますし、やっぱり一旦切りましょう。すぐ僕からかけ直しますので応じてくださいね。――いいですね?』
そんな感じで矢継ぎ早に話される修太郎さんが何だか珍しくて、私は気圧されるように思わず「はい」と答えていた。
私は修太郎さんの言いつけを守って、すぐにベンチから立ち上がる。
それと同時にプツッと通話が切れて、ツーツーとビジートーンが聞こえてきて……。
(あ、切れてしまったのです……)
と思うと同時にすぐに着信が。
(修太郎さん、素早いっ)
驚きながら通話ボタンを押すと『日織さん、大丈夫ですか? 変なのに絡まれたりしてないですか?』と修太郎さんの声。
つい今し方電話を切ったばかりなのに……と思ったら、おかしくて笑いが込み上げてきた。
『笑い事じゃありません。日織さんには自分がとても愛らしくて魅力的な女性だという自覚が足りなさ過ぎます。ホント無防備すぎて腹立たしいです』
何だかめちゃくちゃほめ殺しにされた上で、怒られてしまった。
「……ご、ごめんなさいっ」
照れながら言って、ふと先ほどからずっと、私のことを日織さん、日織さんと名前で呼んでいらっしゃるけれど、修太郎さんが今おられる場所は職場ではないのかしら?と思いいたる。
携帯だから、圏外と電池切れに気をつけてさえいれば、どこでだって――それこそ移動しながらだって――話せるわけで。
自分も通りへ向けて歩きながら話していることを棚に上げて、改めて携帯ってすごいな、と思ってしまった。
「修太郎さん、今、市役所ではない……のでしょうか?」
思ったら、ふと聞いてみたくなった。
意識してみると、修太郎さんのお声、いつもより少し息遣いが乱れておられるような気がします……。
『日織さんからお電話を頂く少し前に退庁していましたよ。今は外を歩いています』
「あの、そういえば……電話していて大丈夫ですか?」
なんて今更だ。
散々話しておいて、今大丈夫ですか?なんて今更な質問等だと、言ってから思う。
『問題ありません。――あ、見えた』
そう修太郎さんがおっしゃって、受話口と背後から『日織さん!』と声がダブって聞こえた気がして――。
「え?」
思わず手にしたスマートフォンを耳から外して画面を見つめていたら、背後からポンと軽く肩を叩かれた。
「ひゃっ!」
予期せぬ不意打ちに、思わずピョンと飛び上がって変な声が出てしまった。
驚いた拍子に、持っていたスマートフォンが手からすっぽ抜けてしまい――。
あ、落ちちゃう!と思った瞬間、横から出てきた大きな手が、寸でのところでキャッチしてくださった。
「あ、ありがとうございま――」
お礼を言おうと手の主を見て、私は瞳を見開いた。
「修、太郎……さん?」
てっきり市役所の付近か、もしくはご自宅のお近くにいらっしゃると思っていた私は、予期せぬ彼の登場に驚いた。
「はい」
私の呼びかけににこやかにお返事をなさると、修太郎さんは私が手にしていたdoconoの袋をスッと持ってくださる。
持ち手の紐が細かったのと、中に書類がたくさん入っていたのとで結構重く感じていたので、正直ありがたく思いながらも……申し訳ない気持ちもして……。
「あの……」
荷物っ、と口を開こうとしたら、修太郎さんがそれを制するみたいに今し方落ちるのを防いでくださった赤色のスマートフォンを私に差し出していらして「驚かせてしまいましたね、すみません」とおっしゃった。
落ちなくて良かったです、という言葉とともに手渡されたスマートフォンを受け取りながら、市役所から向かわれたにしてはお早いお着きだな、と驚いてきょとんとする。
コメント
2件
驚くひおりちゃん可愛い😘
「お迎えに来る」のではなく、電話で話しながら歩いて接近する修太郎さん、すごくスマートでカッコよかったです。しかも「無防備すぎて腹立たしい」って本気で心配してるのが滲み出てて、もうときめきました。日織さんがポンと肩叩かれて「ひゃっ!」ってなるのも可愛くて、思わずニヤニヤ。携帯電話の距離感を逆手に取ったこの展開、すごく好きです。