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月明かりが差し込む森の中で、俺は震える彼の体を抱きしめていた。
「……カイル」
呼びかける声は掠れていた。
目の前にいるはずの彼が、まるで遠ざかる幻のように思えた。
腕の中のカイルはひどく冷たく、呼吸も浅い。
「どうして……お前はこんなに脆いんだ……」
夜風の冷たさがまるで死神のように感じられて、抱く手に力を籠める。
必死に声をかけたが、応じる気配はなかった。
その時、初めて気づいた。
──俺は、彼を失うことに怯えている……。
もとより大切な存在ではあった。
ずっとそばに居てくれた、ずっと味方でいてくれた。
しかし、こうまで自身がカイルを想っているとは気付けていなかった。
ただ一つだけ、確かだったのは、彼の存在が自分の中でどれだけ大きいものになっていたのかということだった。
彼がいなければ、俺は──。
夜が明ける頃、カイルはようやく目を覚ました。
「レイ……?」
「カイル……!」
「……また、心配そうな……顔してる……」
少し笑みを含んだようなその声を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられるようだった。
安堵と同時に、深く誓った。
──次は……いや、カイルは俺が必ず守る、と。