短編読切②です
再び衝動書き
特にカプ要素とかはない、
若干とある曲の曲パロみたいな感じ
ではどうぞ
気づけば見慣れぬ場所。
カラフルなタイルの床に、
あちこちに吊られた小さな旗。
まるでパーティ会場だ。
「welcome to the party!」
いきなりそんな声と一緒に
目の前に人が現れる。
スタッフのような服装に帽子を深く被った、
お面を付けニコニコと笑う人。
便宜上スタッフさんと呼ぼうと思う。
「招待客のお方ですね!」
「どうぞ此方へ!」
「え、ちょ」
そう言われ、背中を押されてアーチを潜る。
中もやはりパーティー会場らしい。
真ん中は大きく空いており、
周りにちらほらと机が置いてあった。
「では此方を!」
横からひょっこりと出て
狐のお面?を手渡される。
「…お面?」
「此処にいる間は
絶対に付けていて下さいね!」
「では、お楽しみを〜」
何も聞けぬまま
颯爽と去っていくスタッフさん。
少しだけ呆然とその背中を見つめ、
取り敢えずお面を付けて周りを見る。
人はちらほらいる。
ただ、何故か全員仮装してるけど。
近くのテーブルに近づくと 、
狼男の格好をした人が
こっちに気付いて大きく手を振って来る。
「おー新人か!」
「お、本当だ」
「狐?可愛いわね〜」
狼男に次いで、一緒に座っていた
ミイラ服の人と魔女服の人がそう口々に話す。
「まぁまぁ座れよ!」
「一緒に呑もうぜー!」
席に座らされ、グラスを手渡される。
「「かんぱーい!」」
「か、かんぱーい…」
ちん、と音を鳴らしてグラスを合わせ、
一口口に入れる。
…度数強いなこのお酒…
「ついに俺の後に新人か〜」
「まぁ俺の後輩なのは変わんないけどな!!」
「新人で言えばミイラと幽霊って
同じ時に来てなかった?」
「あ、そういやそうだな」
「呼ぶか?」
「でもどこにいるのよあの子」
どんどん話が進んでいく。
は、話に入れない…
「あら、何か話したそうな顔してるけど」
いきなり魔女服の人にそう振られる。
「え、いや…」
「…そう言えば、名前って」
取り敢えずそう聞くと、3人は首を傾げる。
「…分からんな!!」
「同じくー」
「まぁ適当に格好で呼ぶのよ、私は魔女」
「えぇ…」
くっそ元気にわかんないって
言うじゃんこ の人達
…あれ、俺の名前って何だっけ?
「ほらほら飲めよ〜!!」
既に若干出来上がってきてる
狼男さんに酒を押し付けられる。
…まぁいいや、吞も
「…おーい、起きろー」
「風邪ひくぞー」
そんな声と一緒に肩を揺さぶられる。
目を開けると、目の前に幽霊の格好の人。
「あ、起きたか」
「…寝てました?」
「狼男達と一緒にな」
幽霊…魔女さんが言ってた人かな?
「起きたー?」
「起きたぞー」
赤ずきんを付けた人と、
キョンシーの格好の人が近づいてくる。
「狼男達は?」
「置いてきた」
「ぜんっぜん起きないからもう諦めた」
そう口々に話す2人。
「キツネ」
「おー、狐さんだ」
「起きたなら行こ〜!」
「え、ちょ」
赤ずきんの人に手を掴まれ、
引っ張られて別の部屋に入る。
「はーい座って座って!」
机の前の椅子に放り出され、座り込む。
目の前には大きいかぼちゃとナイフ。
「…これは?」
「ジャック・オー・ランタン作りなのだ!」
元気にそう言って
向かい側に座る赤ずきんの人。
「このナイフで顔くり抜くんだよ、
俺らがよくやってる遊び」
幽霊の人が俺の横に座ってそう補足する。
くり抜く…てか綺麗な形のかぼちゃだな
頑張って穴を開けていきながら
のんびりと話す。
「てかこのかぼちゃって
無くなんないんですか?」
「何か気づいたら追加されてんだよなぁ」
「てかタメでいいぞ、年同じくらいだろ」
「じゃあ甘えて」
できたー!と少し不恰好な
ジャック・オー・ランタンを
掲げる赤ずきんさん。
俺も何とか作り終えて、
いっぱい積まれている所に進む。
置こうとした所に後ろから
キョンシーの人が走って来た。
「見る、こっち」
そう言ってめっちゃくちゃデカい
ジャック・オー・ランタンを
指差すキョンシーさん。
「これ1人で作ったの!?」
「がんばた」
「うわー、すげぇ」
「えぐ…」
そう話して互いに笑い合う。
分からないこともいっぱいだが、
楽しく過ごしていた。
ここに来てからしばらくたった。
いまいち時間の進み方が分からなくて
何日とかは分からん。
騒いで、遊んで、疲れて皆で雑魚寝して。
今日は、赤ずきんさんに連れられて
また新しい部屋に来ていた。
「たったらーん!」
そう元気に扉を開ける。
その先には大量の本棚。
「へー…すげぇ…」
「探索中に見つけたんだ〜!」
「褒め称えよ!」
「ははー」
雑!と軽く背中を叩かれるのを流しながら
本棚に近づく。
まじでめっちゃ本あるな…
何となく、目の前にあった
黒い背表紙の本を手に取る。
「смерть с косой」と
白い文字で書かれた本。
中を開こうとした瞬間、
がしゃん!と大きな音がした。
「え」
「は?」
動揺の声が重なる。
見ると、この部屋の大きな扉が閉まっていた。
「「…は?」」
綺麗に声が揃う。
「…え、何で閉まったんだ??」
「わかんない…うわ、開かない」
「キツネ君なんとかできない?」
「俺そんな力強く無いぞ」
一応開けようとはするものの、
一切びくともしない。
「誰かー!いないー!?」
赤ずきんさんが声を張り上げるも
一切の反応がない。
…普通にヤバくないかこれ
来る時結構入り組んだ道通ったよな…?
他の人が気付けるか?
焦りが強くなり、ドアノブを握りしめる。
「え」
がちゃっ。
小さな声と一緒にドアが開く。
「あ、開いたぞ、赤ずきん_」
「…は?」
後を振り返るも、そこには誰もいなく。
…は?
いや、いたよな、今まで
開いたばっかだし出れる訳ねぇよな…?
「…あ、赤ずきん、さん?」
「イタズラだろ?隠れてるだけとか…」
そう言っても声が響くのみ。
居てもたってもいられず、部屋を取り出す。
入り組んだ道を抜けて、いつもの大広間。
幽霊さんとキョンシーさんが話しているのを
見つけ、目の前に止まる。
「キツネ」
「狐じゃん。どこ行ってたんだ?」
少し不思議そうにそう言う2人。
「あ、赤ずきんさん見てないか?」
「さっきまで一緒にいたんだが、
急にいなくなって_」
そこまで言うと、幽霊さんは首を傾げる。
「…?すまん狐」
「誰のことだ?」
「…は?」
…いや、いやいやいや。
俺が来る前、大体一緒にいたんだろ?
俺らの知らない知り合いか、と言葉が続くのを
右から左に流したまま考える。
そもそも、何処行ってたって…
赤ずきんさんが出る時に声掛けてただろ
…意味わからん
「…キツネ」
「疲れてる?」
キョンシーさんが
俺の顔を覗き込んでそう聞く。
「…あー」
「…つかれ、てるかも」
何とかそう返し、その大広場を出る。
…何で急に
それに、知らんとか…
明らかに、一緒にいただろ
…なんか、前もこんな事あったような
ずきん、と頭が痛む。
「…いてぇ…」
一瞬、誰かの声が聞こえた様な気がした。
「どうしたんだろうな、狐」
「…心配」
走り去る狐を見ながら、
横に立つキョンシーと話す。
いきなり知らん奴知らないかって
言ってきたし…やっぱ疲れてんのかね
「後でなんか甘いもんでもやるかぁ」
「同意」
何がいいかね、と考えていると
キョンシーが眉を顰めて何かを言おうとする。
「幽霊、今_」
後ろの方から悲鳴の様な声が聞こえた 。
「な、何だ…?」
直ぐに声の元に駆けつけると、
そこは酷い状態になっていた。
置かれていた机は裏返り、
上に乗っていた飲み物が飛び散っている。
数人倒れ、その真ん中にいるのは。
「狼男…!?」
明らかに理性を失って暴れ回る狼男。
ミイラが止めようとして振り払われる。
「何して_」
「来ないで!!」
側にいた魔女がそう叫ぶ。
「さっさと逃げなさい!!」
「入口のアーチは通れない!!」
「…は!?」
突然のその言葉に声を荒げる。
「通れないって_」
そう言う寸前に 魔女が
狼男に突き飛ばされ倒れる。
「ッ!」
「…逃げる」
キョンシーが俺の手首を掴んで走り出す。
「クソ…ッ」
必死に逃げていたら
キョンシーとも別れていて。
大きな部屋の扉の前。
何だか重い扉のドアノブに手をかける。
案外その扉は簡単に開き、中は。
「書庫…?」
地面に一つ、グレーにオレンジ色の
本が転がっている。
「Απόκριες.」
「…何か、異様に静かじゃね…?」
流石に戻ろうと進む事数分。
いつもならどっかしらで
騒いでる声が聞こえるのに、
そんな音も一切聞こえず。
「…あ」
「さっきの書庫…」
書庫の部屋の扉が少し空いており、
すわ誰かいるのかと中を覗く。
そこには、地面に座り込んでいる幽霊が。
「…幽霊さん?」
何して、と言う前に
いきなり幽霊さんに肩を掴まれる。
「いったッ」
力強いなこの人!?
俯いたままぶつぶつと呟いている幽霊さん。
「ッ狐は、」
顔を上げたかと思えば血走った目で俺を見る。
「狐はッ、人間だよな!?」
「…は?」
「人間…に、決まってるだろ」
そう返すと、幽霊さんは手を離して
持っていた本を抱きしめて
またぶつぶつと呟き出す。
「…何、言ってんだよ幽霊さん」
「この世界は…ッ」
「この世界は狂ってるッ!!」
「皆自らのことを忘れさせられてる!!
記憶がないから均衡が保たれてるんだ!!」
「思い出したら最後…ッ!!」
ざざ、と音が鳴る。
幽霊さんは何かを言おうと
口を開けた状態で止まっていた。
「…幽霊さん?」
幽霊さんは一切動かず、
時折ざざ、ざざと音が鳴り様々な色が映る。
まるで、バグが起きてしまったような。
「_あ、」
ぱ、と何の前触れもなしにその体が消える。
「…ッ」
居てもたってもいられず部屋を出る。
何…なんなんだよ本当に!!
「…キツネ、」
キョンシーさんの声が聞こえ、
直ぐにそっちを向く。
そこには、血まみれになって
伏せているキョンシーさんの姿。
「ッキョンシーさん!?」
「なんでそんな…!!」
キョンシーさんは安心した様に笑う。
「…無事、よかった」
「逃げて。捕まる、だめ」
「なにを言って_」
キョンシーさんは微笑んだまま目を閉ざす。
そのまま、動かなくなった。
…なんで
がしゃん、と音が鳴る。
広場の扉が力任せに開けられた音。
「狼男さん…?」
唸りを上げながら、
血走った目でこっちを見る狼男さん。
真っ直ぐ手を張り上げる前に、
反射で目を瞑る。
しかし、振動は一切来ず。
目を開けると、
振りかぶったまま止まっていた。
時折ざざ、ざざと音が鳴り様々な色が映る。
幽霊さんと同じ。
バグのような。
また瞬きの合間に消え、何一つ音のしない
耳の痛い静寂の中。
「…ふーむ、矢張り一度バグが起きると
続いて起きて仕舞いますねぇ」
足音と一緒にその声が響く。
「…スタッフ、さん」
スタッフさんはにっこりと笑う。
「バグって」
「幽霊様や狼男様の事ですよ?」
「消していた記憶を
取り戻して終う物ですから」
「…消していた」
「えぇ」
「そうでないと襲い出してしまうでしょう?」
何とも思っていない顔で
そう笑いながら言うスタッフさん。
「…じゃあ、幽霊さんが」
「狼男さんも…赤ずきんさんも、消えたのは」
そう言うとスタッフさんはうーむ、 と
少し考えるそぶりを見せる。
「確かに幽霊様と狼男様は
バグの修正の為私が消したのですが…
赤ずきん様は貴方ですよ」
言われた言葉に、言おうとしていた
言葉が全て頭から消える。
「…は?」
スタッフは変わらず笑って話を続ける。
「おや、自認しておりませんでしたか」
「貴方は狐でも人間でも有りません。
貴方の種族は、死神です」
「…死神、?」
いや…でも、
俺は、
…あれ?
俺は…何なんだ?
「恐らく無意識下で
魂を刈り取ったのでしょう」
「この世界は魂で構成されて在りますから。
死神が襲ってしまうと
其れ迄の記憶まで
持って行ってしまうのが難点です」
襲う、
…あぁ、そうだ
俺は、今まで、何回も
皆を、ころして、ころされて_
「ぁ、あ、ああああああぁぁぁ!!」
「…おや、思い出して終いましたか」
「話し過ぎましたねぇ…」
「ま、今回も」
「最初からやり直しと致しましょうか」
404 not found_
「ふーむ、今回の収穫は
矢張りこれのみですねぇ」
本来の種族と違う仮装をさせた際の
記憶の取り戻し方。
「次はもっと大人数に試してみましょうか」
本にメモを書き記し、閉じて側に置く。
ちりんちりん、と音が鳴る。
「…おや」
不思議そうに此方を見るお客様の元に近づく。
「これは珍しい、一般客の御方ですね!」
さぁさ、此方へどうぞ!と手招きをする。
「welcome to halloween party!」
「永遠に終わらぬパーティーへようこそ!」
終わり
なんか、駄作だなぁ…
syudou様の
「アメイジングハッピーハロウィンナイト」
を聞いて思いつきました。
ハロウィン中に出せてよかった…
では、次はうちよそかれつさば頑張ります
最後に軽い補足(Q&A)
Q.スタッフさんは何者?
A.上位種的な存在
Q.何でこんな世界を作ったの?
A.ハロウィン仮装の由来(諸説あり)を
聞いて、
「じゃあ全員仮装して記憶消したら
敵対してる種族でも
仲良くパーティー出来るんじゃね?」の精神
Q.招待客と一般客って?
A.招待客は繰り返してる魂の一つ、
一般客は新しく迷い込んだ魂
Q.赤ずきんはどうなったの?
A.この世界は
来るもの拒まず去るもの逃さずだよ
Q.皆はどうなったの?
A.パーティー会場にいるよ
Q.パーティーはいつ終わるの?
A.スタッフが満足したら
コメント
2件
普通に面白いです見応えしかない キョンシーさんのキャラすき