この作品はいかがでしたか?
230
この作品はいかがでしたか?
230
願いを叶える桜の木1
ひらりとマッシュの顔に何かが落ちてきた。
「はなびら?」
綺麗な薄いピンク色の花弁だった。
ふとマッシュが顔を上げるとそこには綺麗に色付いた桜の木があった。
花が咲くにはまだ肌寒い時期なのに不思議だ、と思ったその時だった。
『ねぇ…』
ふと女性の声がした。
気の所為かと思ったマッシュはそのまま立ち去ろうとしていた。
『ねぇってば!』
今度はマッシュを引き止めるように強く名前を呼んだ。
「やっぱりなにか聞こえる…あなた、誰ですか?」
表情をピクリとも変えずに淡々とマッシュは声の主に問いかけた。
『やっと反応したわね…私は願いを叶える桜の木よ』
「願いを叶える…?」
無知なマッシュでもこの木のことは知っていた。
(レモンちゃんが言ってたな…校舎裏に願いを叶える桜の木があるって…この木のことだったんだ…)
マッシュは改めて自分の中で確認した。
「それで僕に何の用ですか?」
『よくぞ聞いたわね…ここで会ったのもなにかの縁だわ、だから何か一つあなたの願いを叶えてあげましょう!』
と、自信満々に答えた。
「いや、別にいいです」
マッシュの言葉にその答えはスパッと切られた。
『…えぇ!?』
桜の木は驚きを隠しきれなかったらしく、あからさまに動揺した。
『ななな、なんで!?私にお願いすればどんなことだろうと叶うのよ!?』
「今欲しいものないんで大丈夫です」
そう言ってマッシュはその場を離れようとした。
『待って!!!』
「?」
『お願い…なにか一つだけでいいの…』
今度はなんだかしおらしくなり、マッシュは桜の木に耳を傾けた。
『私、実はもう魔力がほとんど無くて…あと1回だけしか人間の願いを叶えることが出来ないの…だから…』
「でも、僕以外の人に頼めば…」
『それもダメなの…なぜだかは分からないけど皆、私の声が聞こえなくて…』
そう話す桜の木の声を聞いていてマッシュは良心が傷んだ。
『だからお願い!魔力が尽きて消えてしまう前にあなたの願いを叶えさせてくれないかしら?』
こんなにお願いされたら断ることが申し訳ない、そう思ったマッシュは折れてしまった。
「……わかったよ」
『…、!ありがとう!!』
とても嬉しそうな声だった。
「でも何をお願いしよう、、、」
『なんでもいいわよ!権力、富、名声、なんでも叶えてあげる!』
「いや、そうゆう重いのは……あ」
マッシュはふと思い当たる節があったのか声を上げた。
『何?なになになに?何か見つかった???』
桜の木は興味津々に声を弾ませながら聞いてきた。
まるで恋バナをしていて「だれだれ!?」と友達に問いただす感じだった。
「す、好きな人とも付き合えたりする…?」
普段はポーカーフェイスのマッシュは顔を赤くしながら桜の木に聞いた。
『もちろん!可能よ!…あなた恋をしているの?』
「…たぶん…」
『(ふふ…可愛いとこなるじゃない♪)…それでその人にあなたのことを好きになるようにすればいいのね?』
「いや、そうじゃなくて…もっとこう…間接的に…」
とマッシュはギクシャクしながら話をした。
『あなた意外と律儀なのねぇ〜…つまり好きになって貰えるようなハプニングを起こせばいいのね!』
「まぁ、そんな感じかな」
『了解!それじゃまずその人の名前、教えてくれる?』
「あ、うん。レイン・エイムズっていう人なんだけど」
『え…?』
少しの間沈黙が流れた。
『レイン・エイムズって神覚者の…!?』
「え…知ってるの?」
『そりゃあね、私ずっとここにいるし…学生の話し声がよく聞こえるのよ…え、待って、、、
理解が追いつかないんだけど…ん?あなたは神覚者の人を好きだってこと?』
姿は見えないが頭を抱えている想像ができた。
本当にこの人は情緒が激しいな…なんてことを思いながらマッシュは頷いた。
『男…よね?』
「うん」
『すぅー……………どこを好きになったのかしら?』
「え…それは、、、なんだかんだ言って優しいし、一緒にシュークリーム作ってくれるし、
たまに撫でてくれる手が大きくて……」
そう話すマッシュの姿はまさに恋をしている少女の顔であった。
『(……本気で好きなのね…そうよね、私が間違ってたわ…恋に性別なんて関係ないもの)
…わかったわ… ありがとう、あなたが彼のことをどれほど好きかよーくわかったわ。あなたの恋のために応援させてちょうだい』
桜の木の声は穏やかだった。
コメント
3件
願いを叶えてほしかった… けど、もう、無理だね…
桜の木好きすぎて泣く、消えないでくれ、語ろう(?)
気軽にコメントください!待ってます!