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「クットゥルー! 久しいな」
ちらっと俺の顔を見た G ・クトゥルフ。
手を挙げてフレンドリーに挨拶してきた。
寝起きの第一声がそれかよ。
へんな挨拶を流行らせようとしているようだが、ムリだな。
”クットゥルー!”と返すヤツなんかいないって。
「クットゥルーっすぅ!」
いたね。ここに……。
いつもの“やさぐれ状態”に戻ったシスターが、仏頂面で手を振った。
コイツの思考や体質は、いまだに理解できない。
目の前にいるゴリラは、みてくれは変わってしまったが、異世界で対峙したクトゥルフに間違いない。
少し前に、釣り堀でシバいたから雰囲気で大体わかる。
「おい、ゴリラ。俺にかけた呪いを早く解け」
水属性のコイツにも水虫という呪いをかけられた。
クトゥルフの足を踏みつけただけなのに。
「水虫のいい薬があるぞ」
『オハギノール』という、注入するタイプの“ぢのくすり”を、G・クトゥルフが掲げてみせる。
「呪いを薬で治そうとするな。オマエの力で呪いを解け」
ここぞとばかりに、シスターが俺の肛門にオハギノールを注入してくれる。
せめて箱から出そうな、シスターよ。
「ゴリクション! 誰だ? 花を植えたヤツは? クシャミがとまらねえよ、チクショーめ」
G・クトゥルフは花粉アレルギーらしい。それか、まだ環境に順応できていないようだ。
不安げな顔をして辺りを見回している。
「ゴリラのくしゃみウケルし! びっくりだわ。ズハハハ!」
ブリッジをして大笑いしているシスターのほうがウケるのだが。
まあ、いい。久しぶりに組んだパーティーだ。メンバーはアホだが悪くない。
ボッチから解放された喜びを抑えながら、バトル管理アプリを起動する。
バトル方式、参加メンバーなどを設定するアプリだ。
バトル方式はフリースタイルとターン制の2種類。
フリースタイルは敵味方入り乱れて戦う。
ざっくりいえば集団戦法だ。もちろん一騎打ちも可能だ。
ターン制バトルは交互に行動(攻撃・防御)するタイプ。
バトルに時間がかかってしまうことがある。
俺がバトルについて思考を巡らせていた時だ。
「どうした。怖気づいたか。3人でかかってこい。いや、そこのちびっこい女は岩影で震えて見ていろ! そこの便座に顔を突っ込んだ、三つ編みのブスは帰れ!」
しびれを切らせた様子のG・クトゥルフが、上から目線で言ってくる。
三つ編みのブスとは俺のことか?
そんなはずはない。
俺はカワイイに決まっている。
「はぁ? あったま来た! アッシひとりで充分だし。見てろし」
顔面に血管を浮かせたシスター。
Tシャツの両袖をたくしあげ、キズひとつない白く細い二の腕を露出させる。
「ゴリラの挑発にのるな」
「三つ編みのブスのくせに慎重だな、おい」
「我が名はギガント・クトゥルフ。ギガントピテクス、クトゥルフの意志を継ぐもの――」
俺がバトル管理アプリの長ったらしい説明文を読んでいると、G・クトゥルフは自身の生い立ちなどを語りはじめた。
「そこのゴリラ、うるせえよ。バトルの設定中だ。俺の聖剣とパンツを用意して、そこでおとなしく待ってろ」
俺が異世界で失くした聖剣とパンツを探しておくよう、G・クトゥルフに頼んでおいたのだ。失くした場所は分かっていた。異世界にあるファミレスのトイレだ。
「ゴリラじゃないんですけど。なんか、とぅんません……。はい、用意しときます」
G・クトゥルフは、聖剣とパンツを見つけてくれたらしい。
剣とパンツには俺の氏名が書いてあるため、すぐに分かったようだ。
いま取り戻したところで、俺は武器を装備できないからどうでもいいが。
G・クトゥルフが地面に巨体をおろした。正座をしたまま落語家のごとく話しを続ける。
ヤツの表情は、給食が待ち遠しくて、授業に集中できない小学三年生の児童にみえる。
何かの作戦だろうか。
俺たちの戦意をくじく精神攻撃だろうか。
仮にそうだとしても、俺たちには全く効果はない。
メンバー全員がアホだから。
「オマエもうるせえよ!」
魔術師は、俺の横で「フンハ!」と言いながらスクワットをして、使い道のない魔力を溜めている。
#ヒューマンドラマ
#現代ファンタジー
「オマエは足を閉じて寝ろ。というか、寝るな」
さきほどまで起きていたシスターは、大股を開いて爆睡している。
俺は2人に文句をたれながら、ピョコハマ駅で購入したシウマイ弁当を堪能する。
3秒ほどで間食。
ごちそうさまをして、フタに付着したご飯粒を取りながらスマホを操作した。
30分くらい経過したころか。G・クトゥルフの自分語りが終わった。
目を瞬かせているところをみると、精神攻撃に失敗したようだ。
憶測だが、翻訳ソフトがフィルターになり精神攻撃が無効化されたのかもしれない。
「おい、やさぐれシスター。大事な時に寝るな。オマエは国会議員ですか?」
睡眠中のシスターの鼻に指を入れ、覚醒を促してみる。
魔導書『週刊 ネクロノミコソ 創刊号』をマクラにして寝ていたシスターが、目を擦りながらだるそうに体を起こした。
かなりお疲れの様子だ。
俺の余命も残りわずかだろう。
フリースタイル・バトルで一気にカタをつけよう。
管理アプリを閉じると、ドーム状のバリアが山一帯を覆った。
さあ、バトルを始めようか。