テラーノベル
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夏のある日、緑風が吹き出すと、木々がザワッと音を立てる。それは木々が音楽を鳴らしているような、自然の成り行きの音だった。
重い瞼を開けると、そこは見知らぬ深い森の中だった。
リリアーナ―私の背中を受け止めているのは、驚くほど柔らかな芝生だ。肌を刺すような痛みはない。
けれど、鼻腔をくすぐる濃い土の匂いが、ここは安らぎの寝床ではないことを冷徹に告げている。
体を起こして、周りを見回す。
深い森の中、密集した木々が頭上を覆い尽くし、こぼれる陽光は頼りない。
…これじゃあ、方角が分からないな…。
「前世の記憶が鮮明だったら、良かったのに」
溜息を吐きながらそう呟く。
私には、断片的な前世の記憶がある。名前は白鳥藜奈《しらとり りな》、十七歳。黒髪ロングに、珍しい赤色の瞳をしていたはず。
けど、今の髪は、チョコレートのような濃い茶色。瞳は蜂蜜色。そして、耳は普通の人間とは違い、尖っている。
そう、私はエルフとして転生させられたんだ。それも、ハイエルフとして。
それから、約五百年。魔法団長まで登り詰め―つい先日、王城を半分ほど「うっかり」破壊して、百年の国外追放を言い渡されたばかり。
「てへぺろって感じだよね」
…けど、お父様とお母様に会えないのは、流石に寂しいな。
そんな感傷に浸った刹那、鋭い風切り音が引き裂いた。
「ワオ—————————ン」
地を這うような重低音。
私の警戒心スイッチが、一気に“戦闘モード”へ切り替わる。
以前、第一隊を半壊まで追い詰めたストロングウルフの遠吠えである。
…まぁ、あの時はここじゃなかったし、別のチームかな。
ストロングウルフは人間やエルフ、亜人のように纏まって生きている。魔獣としては珍しい部類だ。
普通の魔獣は個々の意思で纏まって動く種族は少ない。いや、ストロングウルフとゴブリンしか纏まって生きてない。
「群れは来ないでほしいな…」
後ろから複数の足音、複数の唸り声が聞こえる。
そこには、一頭がクジラほどある巨大な獣達。
「え…」
私は思わず、目を疑った。
そこの中心に、ストロングキングウルフが居た。
私が見たのは初めてだが、ストロングキングウルフはストロングウルフの倍くらいの大きさがある。
文献によれば、ストロングキングウルフは私達で言う、王様に近い。なので、普通のストロングウルフとは一味違うらしい。
「これは、まずいね…」
震える足に力を込め、無理やり立ち上がる。
ストロングキングウルフの咆哮ひとつで、周囲の木々が震え、葉がバラバラと落ちる。
密集していたはずの木々は、彼らの巨体により強引になぎ倒され、無残な「道」へと変えられている。
私は宙に複数の火の玉を浮かべる。指先ほどの小さな、可愛らしい火。
けれど、その中には王城の半分を消し飛ばした時と同じ、高密度の魔力が凝縮されていた。
ストロングウルフ達が一斉に跳躍した。それと同時に、私は火の玉を放つ。
―ドォォォォォン!!
予想に反して、キングもろとも群れ全体が、まるで風に吹かれた埃のように一瞬にして吹き飛んだ。
あとに残ったのは、焦げた土の匂いと静寂だけ。
「私って、こんなに強かったっけ⋯?個体差があるにしても、呆気なさすぎでしょ」
脳をフル回転させても意味が分からず、結局「この国あるいはこの森の魔獣が弱いだけ」という結論に落ち着いた。
「はぁ、震えてた私が馬鹿みたい」
一気に力が抜けて、ドサッと地面に座り込む。
「あ、後始末をしないと魔獣がまた来ちゃう…」
重りがついてるほど重い足を立たせて、聖属性魔法の浄化を使って、綺麗にする。
ストロングウルフから出てきた核《コア》は売れるので無属性魔法のアイテムボックスに入れる。
「なんだろ、この違和感は…?」
拾い上げた核《コア》を見つめ、眉を顰める。
私が居たエルフ国の核《コア》は鮮やかな「赤」だった。けれど、このサムティケン王国の核《コア》は、くすんだ「緑」だ。
…深く考えても、仕方がない…か。
そう思考を切り替えた瞬間、背後の茂みがザクっと踏まれた音が聞こえた。
「あの、大丈夫…?」
振り返ると、そこには若い女性が立っていた。
赤茶色の癖毛に、エメラルドのような瞳。質素だが清潔な服を着た、人間の女性だ。
「大丈夫。貴女は…?」
問いかけると、彼女はハッと我に返ったように、緊張を解いて優しい笑みを浮かべた。
「私はクララ、人間よ。貴女はエルフ族の方なんだね。…でも、エルフは滅多に国から出ないと聞いたけど」
「あー、それはね。私は…まぁ、とある事情で国外追放になったんだ」
「えっ…」
クララの顔は見る見るうちに強張っていく。
不思議に思い、自分の言葉を脳内で再生したら、私はしまったと頭を抱えた。
…待って、今の言い方だと、私、凶悪な犯罪者みたいじゃない!?
「ご、誤解しないでね!えっと、悪い事をして追い出されたわけじゃないから!本当だよ!?」
慌てて手を振る私を、クララは少し疑わしそうな、でも放っておけないような複雑な目で見ていた。
…いや、よく考えたら王城を半分消し飛ばしたから客観的に見て『悪い事』なのかな?でも、掃除中に花瓶を割るくらいの感覚だし、あんなにヤワな造りをしている城が悪いだけだし。
「…そう、事情があるのね。私達の家が近くだから、来てもらえる?」
「え?」
私は思わず呆気にとられた。普通、自称国外追放者をそう易々と家に上げることだろうか。
…この子、お人好しすぎるのか、それとも…。
五百年生きていた中で培った警戒心が、心の隅で警報を鳴らす。
でも、今の私は住む場所も無ければ、この国の地図すら持っていない。まぁ、持ってたとしても迷って終わりなんだよね。
「…うん、分かった。お言葉に甘えようかな」
私は彼女の後ろに着いて行くことにした。
コメント
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まろーん、転生垢だよん✌️ てかエルフ?! 最高(*`ω´)b エルフいいよねー