テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
目が覚めた。
俺は、何も知らない。
名前も、年齢も、家も、家族も。
全て忘れた。
目覚めるとさとみと名乗る男の子がいた。
彼の声は懐かしく聞こえた。
とても久しぶりに聞く声のような気がした。
彼は最初こそは驚いていたものの、少しすれば慣れてきたのか沢山話をしてくれた。
その話の内容は。
自分が自分を忘れてしまう前の自分。
家族のこと。学校のこと。
沢山、沢山話してくれた。
どうやら、階段から落ちてしまったらしい。
熱もあり、それが原因で階段から落ちた。
当たり所が悪かった。
ただそれだけ。
それだけなのに、俺は2週間も寝てしまったようだ。
俺が寝ていた時間。一体何が起きたのだろう。
誰が、どんなために、どんなことをしていたのだろうか。
俺が寝ていたその時間は、兄弟にとってどんな時間になったのだろうか。
そんなことを考えいた矢先。
るぅとと名乗る男の子が来た。
彼は、冗談だと言った。嘘だと言った。
そして、彼は酷く悲しんでいた。
そんな彼を見ると心がぎゅっとしてしまう。
るぅとくんが帰ろうとした。
俺は、黙ってみていられなかった。
怖かった。離れてしまいそうで。怖かった。
無いはずの記憶が怖がっていた。
莉犬「待ってッ!」
るぅと「莉犬どうかしたの、?」
莉犬「僕ッ僕ッ絶対思い出すからッ!」
莉犬「俺を捨てないでッ…ポロポロ」
気がつけば目からは涙が出ていた。
るぅと「安心してください」
るぅと「記憶が戻らなかったとしても。」
るぅと「莉犬が、莉犬じゃなくなっても」
るぅと「僕は莉犬とずっと一緒にいますから」
莉犬「本当、?約束だよ…?」
るぅと「はい!約束です、笑 」
その言葉に俺は救われた。
起きてからは早かった。
すぐにリハビリが始まった。
そして、記憶が戻るように少しずつ練習を行った。
ある日、ななもりくんとさとみくんが医者と話しているところを見た。
ななもり「記憶障害、ですか…」
医者「はい。」
医者「しかし、特に異常はありません。」
医者「なので一時的なものではないかと…」
さとみ「そうなんですね…」
ななもり「戻らない可能性はありますか…?」
さとみ「ちょ、兄ちゃっ…!」
医者「…」
医者「ゼロとは言いきれません。 」
医者「彼の体にいつ何があってもおかしく」
医者「ありません。」
ななもり「そう、ですか。」
医者「今は彼を信じてあげてください。」
ななもり「はい…。」
ななもり「ありがとうございます…。」
2人の目からは涙が出ていた。
俺の事で、また人を泣かせてしまった。
そう思うと心がちくりと傷んだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!