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U虚.
アンコールの拍手が、やけに遠く聞こえた。まだ鳴り止まない歓声。
名前を呼ぶ声。
足音みたいに揃った手拍子。
──全部、ちゃんと聞こえているはずなのに。
隣にいるはずの君の気配だけが、うまく掴めなかった。
さっきまで、同じ音の中にいたのに。
同じリズムで呼吸して、同じ熱を分け合っていたのに。
どうしてこんなに、遠いんだろう。
「……出ないの?」
誰にともなく落とした声は、思っていたより静かだった。
アンコールに応えるのが、当たり前だった。
このバンドは、そうやってここまで来た。
求められれば、何度でも応える。
壊れそうになっても、音を鳴らし続ける。
それが、僕らだった。
でも。
「──もう、いいだろ」
隣で、君がそう言った。
初めて聞く声だった。
優しくて、少しだけ疲れていて、
それでもどこか、諦めみたいに綺麗な声。
「アンコールは、もういらない」
その一言で、何かが終わった気がした。
──いや、終わらせたんだと思う。
僕ら自身の手で。