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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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そんなある日のこと。

いつものようにベンチまで走っていたら、ベンチに女の人が座っていた。

(あっ、先にとられちゃった…。今日はそのまんま走って行こう)

そう思い、ベンチに座らず走り続けようとした。

そう、した。

「あのっ、!」

その女の人に声をかけられたのだ。

「、はい?」

目の前から見ると、その女の人は思っていたより若そうで、私と同じ歳ぐらい。

「阿部晴雄という名前のお爺ちゃんと、毎日朝に会っていましたか?」

阿部晴雄、!

お爺さんの名前、‼︎

「…会っていました」

すると、その女の子は真っ直ぐ私を見て

「私、晴雄の孫の阿部みくるです」

「お爺ちゃんから、貴方のお話は良く聞いていました」

「本当にありがとうございます」

急に腰を45度に曲げたと思ったら、お礼を言われた。

「えっ、!顔を上げて下さい!え、私何もしてないですよ?」

そういい、私は顔を上げるように言う。

「ベンチに座って話しますか?」

「はい」

私がベンチに座って話すことを提案すると、みくるさんは小さく頷き、私たちはベンチに座った。

少しして、みくるさんが話出す。


「お爺ちゃんは2週間前に亡くなりました」


えっ…。

いつも笑顔で、私を迎えてくれたお爺さんが?

何も悲しいことなんて知らなさそうな、優しい顔で話しかけてくれるお爺さんが?

「お爺ちゃんの嫁、お婆ちゃんは去年に亡くなったんです」

「そんな時に貴方と会ったそうで」

「そうなんですね、」

…ッ。

「お爺ちゃんはお婆ちゃんとの思い出のこの公園に毎朝散歩がてらに来ては、このベンチに座って、お婆ちゃんのことを思い出していたみたいなんです。そんな時に貴方が声をかけて下さったみたいで、。」








「お爺さん、どうしたのー?」

「あぁ、わしか…。」

「そうそう、わしだね。…なんか嫌なことでもあった?」

「いや、ここが悲しい思い出の場所での、。少し思い出していたんじゃ。」

「へー、そうなんだ。でも、その割には楽しそうな顔して笑ってるね?」

「笑ってる、かのぉー?」

「うん。優しそうな顔して笑ってるよ。…悲しい思い出でも、お爺さんにとってはやっぱりその思い出、大切な思い出なんじゃない?」


「そうかものぉ…」






「お爺ちゃんは貴方と話して、少し前を向けたんだと思います。本当にありがとうございました。」

「いえ…」

「お爺ちゃん。亡くなるまでこの八つ橋のキーホルダーを、ズボンのポケットに入れていたんです。」

そう言って見せてくれたのは、私が前にお揃いと言ってあげたキーホルダーだった。

「私が上げたやつ…」

「やっぱり、。そうだったんですね」

「本当にお爺ちゃん、そのキーホルダーを大切に持っていたんだと思います。だって、お爺ちゃんは物忘れたが激しくて、すぐに物をあっちこっちにほったらかしにするくせがあるのに、そのキーホルダーだけは大切に持っていたから。」

「お爺さん、」

大切に持ってくれてたんだね。

「少し焼けちゃうなぁー、なんて。」

そう言ったみくるさんは少し笑った。

そして、改まったように姿勢を伸ばし、私を見た。

「お爺ちゃんの休める、大切な場所を作ってくれてありがとう。」

私だって、!

「こちらこそ、お爺さんとは沢山話をしたし、こっちが慰められてばっかりで…。もう伝わらないかも知れないけど、私はお爺さんと話せる時間が本当に大好きで、、私に大切な時間を作ってくれて、ありがとう」

すると泣きそうな笑顔で、お爺さんと似た笑顔で、くしゃりと笑うみくるさん。

「絶対伝わってるよ」

「お爺ちゃんなら、ニコニコして上から見守ってくれてる気がするから、!」

「うん。私もそんな気がする」








お爺さんはもうあのベンチにはいない。

でも、もう大丈夫。

いつかまたきっと会いに行くから。

その約束を叶える日は遠くなりそうだけど。

力いっぱい、楽しく学校生活を送るから。

私たちを見守っていてね。


お爺さん

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