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製菓の専門学校はあまり好きじゃなかった。成績は良かったけれど、友だちと馴れ合うのはあまり得意ではなかった。


「いいなー手が冷たくて」


「そうかな?」


「長峰は手も心も冷たい」


「……」


物静かな態度が冷たいと揶揄される。それが好きではなかったけれど、あえて否定もしなかった。そんなことないって笑って否定できたらよかったけれど、その時の俺はそんな器用なことはできなかった。そんな態度が余計同級生の反感をかったのだと思う。


確かに手が冷たいのはパティシエにとって有利かもしれないが、自分はそれ以上に努力しているという自負があった。文句があるなら納得できるまで練習しろ、自分はそうやってきたから同じことをしたらいい。そう言ったらひどく嫌そうな顔をされたことを覚えている。言い方が悪かったなと思ったけれど訂正することもしなかった。


「あいつはロボットみたい」


誰かが言った。

自分が思い描いた通りに正確に綺麗に作り上げることも好きだ。クリームの先端が揃っていることに満足していた。けれどその言葉が、上手くできない同級生内に浸透していった。もしかしたら最初は褒め言葉だったのかもしれない。だけどそれはいつしかやっかみとなって俺をなじる意味合いに変化していった。


それが、たまらなく嫌だった。

特にいじめられていただとかそんなことはなかったしそれなりに友人もいたけれど、一部の人間からは嫌われていたんだと思う。


思春期拗らせたみたいなツンツンした俺。変わりたいとも思っていたけど、どうしたらいいかはわからなかった。


そんな俺に新しい道を教えてくれたのは黄色い看板が目を惹くレトワールという洋菓子店だった。

恋愛対象外に絆される日

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