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荷造りから時は数ヶ月遡り、大告白事件から少し後。急に佳依がおれの家を訪れた日だ。
「ホスト辞めるって言ってたけど、ほんとに辞めたの?」
「うん。辞めたよ。姫たちには申し訳ないけどね」
「生活費とかは?」
「貯金が沢山あるし、既に次の仕事は見つけてるよ」
「そっか。おれのせいで職失ったとかじゃなくて良かった。……で、なんでウチに来たのか教えてくんない?住所教えてねーんだけど 」
__間。
玄関のチャイムが鳴ってこいつが立っていた時、当たり前にビビった。でもその場で警察呼んだりせずに家にあげてしまったのは、もう完全におれがこいつに絆されてしまっていたからだと思う。
とはいえだ。とはいえ、なんで住所がバレてんだ。普通に怖い。
でも来た時も今も、こいつはおれに会えた嬉しさとともにずっと申し訳なさそうな顔をしてる。粗方検討はつくが、一応、本人の口から聞いておきたい。……怖いから。
__更に間。
「……本当にごめんね。サキくんに会いたい気持ちと怖がらせたくない気持ちで葛藤してたんだけれど、やっぱり会いたくて、ちょっと調べて来ちゃった。……その、調べたルートは合法だから 」
「あー、いや、うん。この際違法か合法かとかはもう気になんないかも」
嘘。強がった。シンプルに合法で安心し た。
「うん。でも怖がらせてしまったよね。ごめんね」
「いや……まーあ……怖かったけど、ケイ、さん? は申し訳ないって思ってるんだろ? じゃあいいよ」
それを聞いて、彼はぱっと顔を上げた。心底嬉しそうで幸せそうな顔で。
「本当にありがとう。自己紹介、ちゃんとしてなかったよね。ケイは源氏名で、本名は佳依といいます。末永く、よろしくね 」
「おれは佐久、です。その、色々する時は連絡欲しいから交換もいい?」
「! もちろん!」
L□NEを交換して、他SNSはお互いに仕事用でしか動かしていなかったから無視、少し迷ったけど知らないところで住所を漁られるよりかはマシかと思って電話番号も交換した。
佳依さんは心底嬉しそうだった。たぶんおれより年上だけど、それこそ初恋をした乙女みたいに。見ていてこっちが恥ずかしくなるくらいに。
佳依さんの住所も教えてもらったが、とんでもないタワマンだった。エグいとこに住んでる。流石売れっ子ホストだ……あ、もう辞めたんだっけ。
その後も色々話して帰り道、次は佳依さんの家で会う約束をして、今日は駅まで送ることにした。徒歩10分と少し。横に並ぶと体格差が目に見えてわかる。おれは骨格から全部華奢で、それを売りにコンカフェ務めをしているから良いといえばいいけど、やっぱり恵まれた体型は羨ましい。……といった旨を伝えると、「いずれ、佐久くんが許してくれるのであれば、ハグがしやすい体格差で俺は嬉しいよ」と返された。
あー、悔し。
恵まれた体格に対してもだけど、 その甘い言葉に期待してしまう自分自身も。
やっぱ絆されまくってる、おれ。