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これは今から5年も前の話。
︎***
いつからこんな生活になったんだっけ。
「おかえりなさい、!! 今日頑張って3品作っ」
「ちっ、お前掃除しろって言っただろうが!!!!」
部屋中に響き渡る彼の罵声。
「え…? めちゃくちゃ気合い入れて掃除したよ? だからその流れで…」
「空気だよ空気!!!! 空気汚ねえってことはまだ部屋汚ねえってことだろうが!!!!」
バチンっ
そんな弾くような音が立った。
次の日も、その次の日も。
彼が帰ってきては、毎日部屋中で怒鳴り声と殴る音、
そして私のごめんなさいという言葉が飛び交う地獄の日々だった。
暴力を振るわれている、なんてことを他人に言ったらまた何をされるか分からない。
治ってきたと安心したら、すぐに違う場所に復活する赤い痣や傷。
私はこんな地獄から一日でも早く抜け出したくて、とうとう別れを切り出した。
「あー、タイミング良かったわ。俺もお前なんかとさっさと別れたかったし。」
「お、おこら….」
「ウジウジすんな!!!! 声ちいせえんだよ!!!!!」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「最後の最後までムカつくやつだったな。スーツケースに荷物まとめて出てけよ。今日中に。」
「今日中は無理だよ、」
「早く出てけよ!!!!! 俺の婚約者くんだよ!!!! お前なんか邪魔なんだよ!!!」
「今までありがとね。」
外に出ると心地よい風が吹いていた。
とりあえず中心地に行ってホテルを探そう。
相変わらず人の多いところだな、なんて呑気なことを考えながら歩いていた。
すると見知らぬ男から声をかけられる。
彼のことがあったため、男性恐怖症になりかけていた。
「….!! ごめんなさい、ごめんなさい…」
腕を掴まれると同時に地獄だった風景がフラッシュバックされる。
殴るのだけは、そう思うと私は無意識のうちに謝っていた。
『ちょっと、怖がってるじゃないすか。辞めてあげたらどうですか?』
邪魔すんなよ、と小言を吐いて見知らぬ男は逃げるようにその場を去った。
『だいじょうぶですか!? なんもされてないですか?』
心配してくれてるはずなのに、背丈が同じなだけで怖がってしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、もうしないです…」
ここでわかった。あの暴力や心身ともに傷つけられたのがトラウマになっていることを。
もちろん、いきなり私が謝るもんだから、相手の男性は戸惑っている。
すると男性は閃いたように何か紙を差し出してこう言った。
『これ、もし良かったら。えっと、おれ…僕は何も手出したりしないので大丈夫ですよ。^^』
名刺ほどの小さな厚紙には
“なんでも相談所 電話でもOK! 0x0ー….”
などの住所や電話番号が書かれていた。
中心に書かれていた名前は“田中樹”。男の人か、と思うと行く気がなくなってしまった。
『あ、これ僕の友達で、僕の名前が田中樹って言う訳じゃないんですけど笑』
「は、はぁ…」
『すごく聞き上手なので親身になって聞いてくれると思いますよ!! 俺も聞いてもらってます笑』
この瞬間、この人は安全な人なのかもしれないと私の中の警戒レベルが下がった気がした。
男性は気をつけてくださいねとだけ言って去っていった。
感謝、ありがとうございますと言っていないと思い勇気をだして声をかけた。
「….あの、」
『ん? なんかありましたか?』
「さっき、あの、キャッチ、ありがとうございました…」
『あはっ笑 全然笑 怖いと思うのに勇気出して感謝伝えてくれてありがとうございます!!』
また会えたらいいですね!!と言い放ってからその場を去っていった。
なんだかあの男性の背中はとても温かみを感じる背中に見えた。
「24hours…. 行ってみようかな、」
助けてくれた男性から貰った厚紙に書いてある住所に辿り着いた。
外観はカフェのような喫茶店のような雰囲気だった。
階段を上るとカランカランっという音を立ててドアが開く。
「いらっしゃいませ〜。」
あれ、本当に飲食店なのかな。
貰った紙を見せて聞いてみると
「初めての方ですね。では、この紙にご記入をお願い致します。
情報を外部に漏らすことは一切ございませんのでご安心を。」
バインダーに挟まった紙には住所と電話番号以外の個人情報を書くようになっていた。
名前…趣味…好きなこと_____…
“主に悩んでることや聞いて欲しいことなどをご記入ください。”
「これでいい…ですか..?」
「では、こちらの会員カードをお渡しします。再発行はできかねますので扱いは慎重に。
このカードをあちらの部屋に行ってかざしていただくと相談できますので。」
流暢に説明される。会員証も綺麗…
「あなたの不安を少しでも減らせますように。」
案内された部屋に行ってカードをかざす。
すると壁から扉がでてきた。
『こんにちは。バインダー見せてください。』
やはり男の人か…
「あっ、ごめんなさい、」
なるほど…と言いながら私が書いたアンケート用紙を読み進めていく。
『全部読ませていただきました。
これから、あなたの不安を少しでも減らせるようにしますので、体の力を抜いてくださいね。^^』
なんだろう、すごくこの声落ち着く。安心感があるというか…
『男性が怖いということで、まだ僕のことも怖いと思うんです。
でも僕は、強引に何か聞きあげたり、手をあげるなんてこと絶対にしません。
それを踏まえた上でいくつか質問してもいいですか?』
はい、と誰が聞いても弱そうな声で返事をする。
それから何回も質問されて、気づけばトラウマになっていることも泣きながら話していた。
「本当に、つらくて、….でも死にたくなくて…、」
『うんうん…』
「それから、男の人がすごく怖くなってしまって」
『だから最初バインダーくださいって言った時謝ってたんだ。』
「そう…です…、」
完全に私の中でじゅりさんという方の警戒レベルは0になった。
『じゃあ、少し話が変わってしまうんですが、この場所はどうやって知りましたか?』
キャッチに捕まってた時に助けてくれた男性のことを話すと
『んはっ笑 お姉さん可愛いですもんね笑 ってごめんさい、男性怖いのに』
「いえいえ、謝らないでください、お話聞いてくださっているので大丈夫です」
そうですかと少し悲しそう言ったあとに助けた男性について聞いてきた。
「すごく優しくて、身長は175cmくらいだったと思います、じゅりさんの友達って言ってました」
『顔どんなんですか..??』
顔なんて覚えていない。そもそも顔を見るのさえ怖いのに。
「顔….えぇと…んーと…あっ、眉毛…顔全体が濃かった気がします、」
あいつ、と言いながら若干笑うじゅりさんは衝撃的なことを言う。
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