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ああ……可愛いよ。
白く透き通る肌。
黒く艶やかな髪。
細い首。
滑らかな太腿に、
控えめな陰毛。
成長するごとに、美しかった瑠璃子にどんどん似てくる。
――わかるだろ。
父さんがあれからどんな地獄の10年間を過ごしてきたか、見て来たよな。
だから、
だから……
父さんを
拒むな。
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「いやあああ!!」
真珠(まじゅ)はベッドの上で飛び起きた。
肩で激しい呼吸をするたびに、シルクの布団カバーに差してきたばかりの朝陽が跳ね返ってキラキラと輝く。
「……また、あの夢を見たの?」
隣でむくりと起き上がった琥珀(こはく)が、裸のまま真珠を抱きしめる。
その熱くて硬い腕にしがみ付くと、やっと心と呼吸が少し落ち着いてきた。
「大丈夫だよ。あの男が帰ってくることはもうないから」
低い声が真珠の首筋から直接体内に入ってくる。
その下腹部が細かく震えるようなむず痒い感覚に、真珠は身体を小さく震わせる。
「そんなのわかんないよ。今にもドアを開けて、ただいまって入ってくるかもしれない」
真珠がそういうと、琥珀はワンルームの向こう側に見えるドアを見つめ、小さく息を吐いた。
「ここはあの家じゃないよ。だから安心して」
そう言いながら頬にかかる真珠の長い髪の毛を掻き上げる。
「それにあの男が来ても今の僕たちなら絶対に大丈夫。……でしょ?」
それ以上は言わずに、琥珀が再度首筋に唇を這わせた後、熱い舌で頸動脈を嘗め上げた。
「もう少し寝よう。今日は仕事の日だから」
琥珀の腕がまるで自身を牽制するように真珠を強く抱きしめる。
その腕の強さと肩の大きさに、真珠はまるで自分の身体が空気を抜かれたゴムボールにでもなったように感じた。
仕事が終われば、今夜も琥珀は真珠を抱くのだろう。
昨夜よりも情熱的に。
一昨晩よりも執拗に。
恐怖も迷いも全てが抜け切った小さな体には、
虚無しか残らなかった。
――弟に抱かれるようになって、
3年の月日が流れていた。