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いつもの昼下がり。すみれのお世話をしながらよっこいせと床に座ってみる
嫁が布団で寝ていて、気持ちよさそうにスピスピと寝息を立てて眠っている。
すみれが俺の裾を引っ張る。どうしたどうしたと笑いかけた。
少し疲れた。茶でも飲もうと。そう思い立ち上がると、木の間から、人が現れた。
_前の人だ
少し反応に遅れた。また、匂いがしなかったもので、驚いた。
すみれは気付いて居たのだろうか。
急いで駆け寄り、また一礼をした。
「お久しぶりです!何故ここにいらしたのでしょう?」
「特に理由は無い。少し、寄り道をしようと」
「そうですか!お茶でもお出ししましょう!こちらへ」
すみれを抱きながら、縁壱さんを案内した。
私の身で家の中に入るのは流石に無礼だと、断られてしまった。
すみれをどうしようと、迷っていたら縁壱さんから私が持とうと言ってくれた。
俺は、縁壱さんが素直にすごいと思った。あの華麗な技を、俺はもう一度見たかった。だが、流石に無礼だ。
「お茶が入りましたよ 」
「ああ、ありがとう」
「いやあ、よく寝てるなあ。」
「すみません、女房も寝てしまったようで。」
「本当に申し訳ない。客人に子守りをさせてしまって」
「気にするな」
「疲れているのだろう」
…本当に、お優しいか方だ。
山奥で暮らしているような、ただの夫婦に、ここまで尽くしてくれるとは。
優しくて、強くて、とても、とても…。
縁壱さんは、お茶を飲むとまたすぐに帰ってしまった。
長居しても良かったのに。
縁壱さんの目は、いつも寂しそうな目をしていた。依然として、そんな匂いはしないけれども。なんだか、なんだかとても寂しそうで、悲しい目をしていた。でも、それすらも美しい気がした。本当に、同じ人間なのかとも思った。
ただただ、美しかった。