窓から見える海のように青い空。
寝室のように静かなこの教室。
この僕、中学2年生の野坂 輝(のざか てる)はいつものとおりにこの寝室で眠りにつく……
バシッ
一つの痛みが僕を襲う。
「ちょっと待ちなさい!?なんで寝ようとしてるの!?」
ああ、まただ、また止められてしまった。
この堅苦しい女は手槍 澄子(てでやり すみこ)、周りに優しさをまんべんなく振る、心優しい女…のハズだが、なぜか僕にはとても厳しい。居眠りしているだけなのにもかかわらず。
「そんななのに優秀だからみんなに嫌われているのでしょう!?」
「は、はぁ?!全然嫌われてなんかねぇよ?!た、ただ一人が好きなだけだ!?」
「お静かに!!!」
一つの槍が僕らの話を遮る。
背筋が凍るような恐ろしい槍の正体は多田 一(ただ はじめ)だ。
「すいません一先生、この能無し女のせいで。」
「全くお前らは!私の授業にもかかわらず話しやがって!」
一部の生徒は肩を震わせ、また他の生徒はカップルだとかはやし立てる。
その時だった。
かつて見た漫画のような魔法陣が床に現れる、その直後、どこまでも白い、清い光が僕達を纏う。
次に目を開けた時に見たのは、清潔感のかたまりのような、美しい城の中だった。
生徒は次々と不安を口にする。
「おいィ?!どういうこったこれはァ!」
「困るわ〜!勉強ができないじゃないのよ!」
「お静かに、皆さま方。」
うるささがピークに達しようとしていた時、一先生とは一味も二味も違う優しい声が聞こえた。
声の主は一人の白い立派なひげをはやした老人だった。
「元気なのは、とても、良いこと。ですが、元気が良すぎて、いました。」
……喋り方のクセが強いな。
「私は、デナデル様の側近、シャベナ=マトルで、ございます。」
「今から、貴方方には、魔王を、討伐、して、もらいます。」
まあ異世界に飛ばされたら当たりまえだよな、という展開である。
「まず、皆様、ステータスオープン、と、言って、ください。」
「「ステータスオープン」」
まるでゲームのようなウィンドウが出てきた、ほう、このステータス表によると
HP 100
DFS 50
AT 40
MAT 40
MP 150
だ。上から体力、防御、攻撃、魔法攻撃、魔力らしい。
「では、職業は、そちらでは、わからないので、こちらの、水晶に、手を、かざして、ください」
かざす生徒は騎士、格闘士、呪詛師、魔法使い、漫画で見るようなものばかりだ。
「俺の番か、強い奴がいいなぁ」
ポワンという音のあと、出てきたのは「人形師」だった。
「ん?いやいや……壊れてないですか?これ?」
再起動のあと、もう一度試したら
ポワンという音のあと、出てきたのは「人形師」だった。
「これは、弱い、ですね。足でまといに、なる、可能性が、あります。追放、しましょう」
……え?まずいぞ、これは!
「いや、ちょ、と、投票で決めましょうよ!みんなの意見ならいなくなりますよ!」
投票なら平等だ!そう……いや俺嫌われてるんだった?!
「全員、一致で、追放、です。」
「う、う、うわぁぁぁああぁぁああぁあ!?」
「最後に、言いたい、ことは、ないですか?」
あるわけがないだろ?!いやあるな?王様ってどうしたんだろう。
「王様って一度も顔合わせてないですけどどうしたんですか?」
「今は、まだ、お昼寝、タイムです。王様も、もう、年なので。」
「なるほどな。」
徐々に大きくなる追放しろという声、僕はみすぼらしく戸惑うしかなかった。
「「追放!追放!追放!」」
「わかったのなら、早く、出ていって、ください。……早く出ていけ○○○○の○○やろうがぁ!キェェェェ!」
シャベナさんの急な絶叫に場が一瞬凍りつくも、俺は追放されてしまった。
「ぼ、僕はこれからどうすればいいんだぁ〜!?」
人形師、字面弱くて性能最強かもしれないから魔王倒します。
続く。
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