どれだけ歩いただろう。
とっくに日は暮れ、密集する木々の隙間から見える空はどこまでも深い紺色に染まっていた。
森に足を踏み入れて丸一日……かなり奥まで来られたはずだ。
もう誰も、私を見つけられはしない。
人里からずっと離れた森の中では、星がずっと綺麗に見えた。それを見上げて、ただただ時間だけが過ぎて行く。
満天の星と静けさに優しく包まれて、今までいた濁世とは全く別の世界に迷い込んでしまったのだろう。
本当に何もかもが透き通っていた。
生きているんだな。
初めてそう思えた気がした。
ずっとここにいたいと望んだ。
振り返れば、薄く白んだ空だけが見える。
森は、遠く霞んだ景色の一部になっていた。
私があそこにいれば、神聖な世界ではなくなる気がした。
人がいないからこそ、あの森と星空は……
広い世界を見てみたい。
もうどこにも帰らない。
星の森の世界にそう誓い、私はまた歩き出した。
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