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#オカルト
リユ
7
聖次
693
【名の無き惑星】
地球とは違う、交わることのない全く違う次元にも知的生命体が存在する。もちろん、タコやクラゲのような想像の産物ではない。いわゆる二足歩行を行う「人類」と呼ばれる生物だ。
その惑星を地球の歴史に例えるなら、近代化を始めたばかりの中世時代と表現するのが適切だろう。街中を走る馬車の車輪の外周には鉄が使われ始め、蒸気機関にまでは至っていない、そんな過渡期の時代。唯一、地球と決定的に違う点は、そこに「魔法」が存在し、「魔族」との争いが絶えず、途方もない時間を戦いに費やしていることだった。
【ユートリア大陸】
この惑星は一つの大きな大陸とそれに付随する数々の島で構成されている。面積は、地球のすべての大陸を合わせたものとほぼ同じ。約3分の2を人間と獣人が、残りの3分の1を魔族が支配していた。
移動手段は徒歩や馬が主流だが、騎士団や商人の一部はワイバーンをテイムして使っている。人間族、獣人族、魔人族に限らず魔法が使える者が多く、その中でも稀有な存在である高位魔導士の中には、空間を跨ぐ「瞬間移動」という超高等魔術を操る者も存在した。
――まさに今、地球から異分子を呼び寄せた「勇者召喚」もまた、その魔術の極致と言える。この世界のすべての人々には生まれながらに何らかの加護が付与されている。
その中でも『勇者』『剣士』『魔法士』の3つは【特別スキルレベル】と呼ばれ、一般的な生物としては【Lv666】が絶対的な限界点(カンスト)とされていた。万が一にもその数値を突破した者には、世界から『リミットブレイク』の称号が与えられ、大陸における絶対的な地位と強さが保障される。
ちなみに限界突破後の最終的なレベル上限は【Lv999】に設定されているが――未だかつて、そこに到達できた者は誰一人として存在しない、神話の領域だ。
【人間領・フィルモア王国】
強大な軍事力を誇るフィルモア王国は、魔族領との境界線が領地の約半分を占めており、常に血生臭い争いが絶えない。境界線に程近い戦いの要――要塞都市バギ・ラカンには、天を突くようなフィルモア城が聳え立ち、それを見下ろす城下町を守るため堅牢な防御壁で覆われ、約数百万の人々が生活を営んでいる。
【フィルモア城・大広間】
今宵、城内は数十年振りの勝利を祝う祝賀会の熱気に包まれていた。王民にも惜しみなく酒が振る舞われ、夜遅い時間にも関わらず人の往来は激しく、繁華街からは歓喜の声が絶え間なく流れている。
「喜べ、我が王民達よ! 占領した魔族領の一部が、我がフィルモア王国の領地となったのだ!」
城内の広場に集まった民衆に朗々と戦果を述べているのは、戦乱の世を取り仕切る国王、ミラード・オブ・シャルペ・フィルモアだ。
十数年前、突如として城内に魔族が襲来した「バギ・ラカン防衛戦」の最中に前国王が討ち死にしたことにより、僅か18歳にして王位を継いだ男である。
長めの金髪に、澄み切った青眼。立派な髭を蓄えたいかにも王様らしい風体を堅持する彼は、即位後、大負けすることなく知略によって戦いを制し、この時代の覇者となった。
「ミラード様、近隣諸国からの戦費、および貢物が届きました。今宵は如何なさいますか」
生殺与奪の権を握られている近隣諸国は、服従の証として多額の戦費と、美しき女性たちを差し出すしかなかった。側近の問いかけに、ミラードは冷徹な視線を向けたまま無言であった。
「計りかねますが、王族に由縁と申される――大変『熟された』方が含まれておりまして……」
「不快。俺はババ専ではないぞ。年上すぎる故、使い物にならん。即刻送り返せ」
ぴしゃりと言い放った若き覇王の言葉に、側近は冷や汗を流して平伏した。普段は冷徹非情な知略家であるが、女性の歳もそうだがスペックに関しては一切の妥協を許さない王であった。
「は、畏まりました……。陛下、では予々《かねがね》問題となっております『あの件』は如何致しましょう」
「――フン。あの使えないポンコツ召喚勇者どものことか。いつものように冒険者として放っておいて構わない。使えない奴に勇者の称号など不要だ。」
戦力の要となるはずの『勇者』は、本来なら無敵のユニークスキルを持つ最強の存在のはずだった。しかし、ここ数百年の勇者たちは何故かレベルが全く上がらず、とても戦場に出せる状態ではない。
一応使えそうな奴を選び数名出撃させたが、棺桶に入ってのご帰還だった。
その結果を知りご立腹のミラードは、好みの女性が来なかった苛立ちも相まって、冷徹に自己鍛錬の厳命を出すのだった。
――だが、ミラードはまだ知らない。
この世界の「停滞した勇者システム」を根底から覆す、『レベル1.0の使えない召喚剣士』と、彼を見捨てず同行を決めた『美少女姫騎士』の幼馴染コンビが、紆余曲折を経て間もなくこの場所に到着してしまうということを。
※※※※※
【ウィシュランド魔法皇国】
フィルモア王国と軍事力で肩を並べるウィシュランド魔法皇国は、エルフ族を主体に、複数の獣人族が集まる多種族国家だ。妖精が尽力を尽くし国を立ち上げたことから敬愛の念を持ち、建国元年から水、火、風、光、闇、土の六属性の妖精を神として崇拝している。
「ククク、今回は人間ども(フィルモア)に大きな貸しを与えたな」
玉座で下劣な笑みを浮かべる国家元首、デゥエンディは、長く尖った耳、純白の髪色、澱んだ銀眼を持つハイエルフ族だ。しかし、世間一般で言われる「森の賢者」とは程遠く、中身は強欲に塗れ、自ら常に最前線で戦うことを好む戦闘狂であった。性格は底意地が悪く、一言で言えば見た目通りの嫌なやつである。
「諸国から貢物と、戦費負担分の金貨が届いております」
「弱小国家からもっと巻き上げろ。それと貢物は我の好みでなければ即刻払い下げよ」
領地が魔族領と接しているウィシュランド魔法皇国は、常日頃フィルモア王国と共に戦いに明け暮れ、今回の作戦にも魔法士と屈強な獣人族を大量派兵して大きな功績を挙げていた。
戦いに勝利したデゥエンディは同時に極度の守銭奴でもあり、戦費を他国から巻き上げることに余念がない。
「それでは、貧相な女は将軍達に払い下げます」
「ああそれで良い。私の好みを知っているのだろう? 身を清めて待たせておけ」
この王は、エルフ族の中では珍しく非常に好色でもあった。まあ、同族の女性は双丘が超残念な事が多く、無い物ねだりではないが、国王に就任してからというもののすっかり巨乳好きに変わっていた。今宵の相手も気に入られさえすれば、数年程度は寵愛を受けられるであろう。
「王民はお世継ぎを待ち望んでおりますぞ、デゥエンディ様」
「エルフ族の中でもハイエルフは妊娠しづらいのだ。まあ少し待たれよ」
一般的に同族以外と交わると妊娠の確率が極端に下がり、子宝に恵まれない場合が多い。貧乳嫌いが相まって同族を嫌い、お世継ぎ計画が予定通り進まず、旧知の仲でもある執事長に催促されると、デゥエンディはフンと鼻を鳴らして不機嫌な顔をするのだった。
※※※※※
【工業国家・ツヴェルク帝国】
獣人族の中でも物作りに特化したドワーフ族が集まり、建国された国が工業国家ツヴェルク帝国だ。フィルモアやウィシュランドに最新鋭の武器を供給し、今回の大戦を勝利に導いた真の立役者である。
「フィルモアとウィシュランドに対し、武器の補充を忘れるなよ」
この国は常に強き者が統治する実力主義の社会だ。力任せの舵取りを行う総統の名は、ヨハネ・グーテンベルグ・ツヴェルク。
ドワーフには珍しく167センチの高身長で、黒髪の短髪に真四角の顔を持つ、常に怒気を孕んだような強面の御仁である。
「畏まりました総統閣下。……それと、いつものように他国から届いた貢物(おんな)は送り返しますか?」
「フン、当然だ。そんなものをここに置くスペースなどない」
ヨハネは戦果に酔いしれることもなく、色恋にも一切靡かない真面目な堅物だった。女たちを一瞥することすらなく、手のひらをヒラヒラと振って追い払うと、すぐに手元の鉱石等級リストへと目を通す。
「うーむ……新製品の開発には、もっと強靭で、硬くて、それでいて『粘り』のある鉄が欲しいのだがな。……おい、さらに深い地層から良質な鉱石を探させろ」
この御仁――ただの堅物というよりは、研究心の塊である「偏屈な天才職人」であった。弓や槍はともかく、鍛冶屋としての腕の見せ所である『剣』に関しては、そのほとんどをフィルモア王国が買い上げていく。
だが、あの国の連中は剣技というよりは力任せに敵を叩き潰すような使い方が主流だ。そのため注文されるのは「切れ味」よりも「頑丈さ」ばかりを優先した無骨な鉄塊ばかりであり、ヨハネとしては、己の美的センスの光る至高の『業物』を作りたくて仕方がなかったのだ。
「総統閣下、希少金属であるミスリルやアダマンタイトでは駄目なのでしょうか?」
側近の至極真っ当な疑問に対し、ヨハネは鼻で笑って一蹴した。
「フン、分かっていないな。ただ硬いだけの金属など、我が理想とする極限の剣術(・・)の負荷にかかればポキポキと簡単に折れてしまうのだ。だから、我は全く違う『未知の素材』が欲しいのだ!」
ラノベの世界においては絶対的な最強金属とされる素材すら、その圧倒的な探究心で簡単に覆してみせる男。ヨハネの鍛冶職人としての熱き渇望は、止まることを知らなかった――。
※※※※※
【魔族領・魔王城】
「サーペント様は何故に、人間族の侵攻を許したのだ……」
禍々しい出立ちの赤黒い髪色に、天を突くような大きな角を持つ魔王レオン。
彼は今回の境界線維持の大戦において、絶対神サーペントからの啓示が一切なく、一方的に敗北を喫したことで、その深い信仰心に微かな揺らぎが生じ始めていた。
「レオン様。人間たちを含め、我らの信仰心が薄れたことが、サーペント様の怒りに触れたと考える所存にございます」
この惑星は古来から「蛇」を唯一無二の神として崇めていた。しかし、文明が開花するにつれ自然神に対しての畏怖の念が薄れ、今や眷属ですらない口先だけのまがい物の神――新興宗教に取って代わろうとしていたのだ。
現状を報告した悪魔族の執事は、一見すると端正な人間の姿をしているが、強力な精神魔法の使い手であり、その能力を駆使して正確な情報収集を行っていた。それゆえ、その言葉は十分に信じるに値する。
「人間も、我ら魔神族も、サーペント様の慈悲を忘れてしまったというのか。……嘆かわしい限りだ」
蛇王サーペントは、7つの妖精神――『光、闇、力、土、水、火、風』の頂点に君臨する絶対的唯一神であり、天変地異すら容易く引き起こす力を持つ。崇拝の念を示すことで、多種多様な種族の切なる願いを時として叶え、この世界のバランス(人口)を絶妙に保っている存在だった。
「……フン、愚痴を言っても始まらん。すぐに『特別弔慰金』の準備をいたせ。今回の戦い、我がために命を賭してくれた者たちとその遺族には、最大限の感謝を示さねばならぬ」
「御意。すぐさま手配いたします」
敗戦処理に頭を悩ませる魔王は、重い足取りでバルコニーへと出た。静まり返った夜空の下、彼は静かにその場に跪き、大戦の地で散っていった戦友たちへ向けて、最大の敬愛の念を込めて祈りを捧げる。
(――すまぬな。我が力量不足のせいで……。どうか、安らかに眠ってくれ……)
その禍々しい外見とは裏腹に、レオンは部下から絶大に慕われる「男気に溢れた王の中の王」であった。人間やエルフよりも遥かに欲を持たず、意外にも純粋な平和主義者。しかし、向こうから仕掛けられてくる理不尽な戦争に対し、大切な民を守るための火の粉を払うべく、ただ孤独に受けて立っているのが現状だった。
胸を痛める孤独な覇王は――心の奥底で、共に背中を預けられる『強力な相棒』を、切に求めていたのだった。
※※※※※
【絶対神サーペント・神の居城】
決して足を踏み入れてはいけないと伝承が残る深い森の奥。――『禁忌の湖』と呼ばれる凄く清らかなその場所に、神とその眷属が住んでいた。
サーペントの見た目は大蛇だが知性を持ち、全知全能であり誰からも敬われる存在。自分が造り育てたこの惑星に住むすべての人達を愛していた。これといって欠点はないものの、少し危機感が欠けているのんびり屋さんでもある。
「申し上げますサーペント様、魔人族軍が敗走し、現在退却中で御座います」
「魔族軍が敗れただと? やはり安直馬鹿のレオンは、まんまと敵の策に堕ちたのだな」
魔王レオンは正々堂々と正面からやり合うのが好きなタイプだ。その性格を知るフィルモアのミラード国王は「多方面から攻撃する」という偽情報を流し、対応する為に戦列を広げたところを一点突破され、レオンは負けたのだ。
「誠に申し上げ辛いのですが、負けた事で信仰心が薄れつつあります」
「それはまずい事になったな……。アングィスを至急呼び出すのだ」
神の元にはそれぞれの種族の情報が精霊たちによって逐一報告され、信仰心についても当然耳に入る。文明が発展すれば致し方ないと諦める訳にもいかず、サーペントは状況を打破する為、腹心の部下を呼ぶことを決めたのだった――。
コメント
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めっちゃ世界観ぶ厚くて感動した、、!✨ 三大国家それぞれの王様の性格がくっきりしてて、ミラードのババ専じゃない発言には笑ったw そして魔王レオンが案外いい人すぎて泣ける、、神様まで出てきて話が一気に広がったね!次どうなるか気になりすぎる😭💕