(保住、まさかあいつが恋するなんて……)
俺、桃瀬晴翔は、只今自室で帰り道での保住の言葉が頭から離れない状態であった。
(保住は、中学の時、女子から、キモがられてて、そこから「もう女子なんてウンザリだー!」って言ったのに……)
「コンコン」
扉がノックされた。
「晴兄〜?」
声の主は、桃瀬晴翔の6つ下の弟、裕翔だ。
「なんだ?」
扉を開け、裕翔は言った。
「お母さんが呼んでる!」
「わかった。」
自室から出て、リビングへと向かった。
「何?母さん。」
「あっ晴翔。さっき保住君のお母さんから連絡入ってて、今日龍一君が暇だからよかったら保住君のお家で遊ばないか?って。」
「わかった、準備してくる。」
「はーい」
そそくさと持ち物をまとめ、家を出た。
保住の家は、桃瀬の家から徒歩1分くらいだ。
「ピーンポーン」
インターホンを押す。
[はーい、あっ桃瀬〜!待ってたよ〜!今行く!]
インターホン越しには、ハイテンションの保住。
(保住の奴、気分いいな…)
「ガチャ」
扉が開くと、笑顔の保住が上半身を外に出して、
「おいで〜!」
と言っている。
(「おいで〜」って、犬かよ、俺は…)
「お邪魔します。」
「お邪魔されますっ!」
保住が、先頭に立って道案内をしている。
「こっちがトイレでぇ〜」
「初めてじゃねえから、大体わかるよ。」
「じゃ、俺の部屋は〜?」
「2階の左の部屋。」
「怖ーい!この人、家の構図知ってて怖ーい!」
(なんかムカつく…)
苛立ちが湧いてきている桃瀬であった。
「どうぞー!」
自室の扉を開け、保住は言う。
「何して遊ぶんだ?」
腰を下ろした桃瀬は聞く。
「ふっふっふ、桃瀬君、帰り道の話題を覚えているかい?」
「君付けやめろ。…恋バナ?」
「そのとーり!」
(まさか…こいつの家で恋バナ!?)
嫌な予感がする桃瀬。
「これから行うのは…」
ゴクリ。
「これから1年間、どうアッタクしていくかだ。」
「……は?」
「だーかーらー、これから1年間、俺らの好きな人に、どう振り向いてもらえるかっつーのを話すんだよ!」
「…あ?」
「だーかーらー!」
「あー、いや、違う。話しの内容はわかった。たd…」
「なんだよ、わかってんのかよ〜。…じゃ、始めんぞ!」
(こいつ、ほんっとに人の話聞かねぇ…)
「まず、体育祭。男女ペアで、行うものが有れば、すぐに好きピと組む。」
「お、おう?」
「次修学旅行、これはチャンスしかない。まず行動班で男女ペアになる。そこを狙う。そして、離れていても、なるべく近くにいること。そして、夜に会議で、今日の報告をして、明日に備えるんだ。」
「お前、会議する前に寝んじゃねーの?」
「大丈夫、バス移動の時、ぐっすり寝る。」
「う、うん。」
「その次、文化祭がまじのマジのチャンス。好きピと一緒に周って、落とすんだ。」
「そんな上手く行くか?」
「大丈夫、体育祭や修学旅行で、最低でも友人繋がりにはなれるはずだ!」
「うーん…」
「そして、1-C卒業で、告るんだ。約束な!」
「う、うん…」
「なんだよ、スッゲー不安そうじゃん。」
「不安でしかないだろ!」
「まあまあ、こっからこっから〜!今から諦めてちゃどーにもなんねえって!」
「ぐぬぬ…」
言い負かされた桃瀬は、言い返す言葉が頭から出てこなかった。
「はぁ、こっから…ねぇ」
桃瀬は、保住の言葉をつぶやいた。
「お邪魔しました。」
帰る時刻になり、保住の家を出た。
「桃瀬!」
保住が家から出てきた。
「何?」
「明日から、お互い頑張ろうな!」
ニッと笑った保住。
「おう、お前、ドジって中学みたいになんねーといいな。」
「それを言うなら、桃瀬も好きピに嫌われるような事、すんなよ!」
「へいへい。」
「じゃ、また明日!」
「うん、また!」
コメント
1件
お母さんに、ノベル書いてる事がバレました… お父さんには、バレませんように…