「紫乃ちゃんの写真会みたいになってるけど、、そのおかげでめっちゃ人来る、、」
委員長が廊下を覗いて言った。
「幡中先輩ですよね?朝よく見かけててかっこいいなって思ってました!」
「あ、えっと、、 ありがとう」
「幡中ちゃん大人気だね〜、俺とも写真撮って」
去年同じクラスだった森野だ。
「あんたは絶対だめ!」
森野がスマホを取り出すと、委員長が廊下まで出てきた。
「なんでだよみんな撮ってんじゃん」
「あんたがかわいい女の子だったらいいけどね!こんなとこでナンパすんなよ!」
「いやいや、ナンパなんてそんな」
「お前はうどんだけ食って帰れ!」
委員長はそう言って森野の背中を押して教室内に入れさせた。
「紫乃ちゃんのおかげで大繁盛だよ〜ありがとねほんと」
「いや、私は」
「森野みたいな変な奴来たら無視するんだよ!あ、それか、宇治!宇治に助け求めな!」
「え、なんで俺」
「近くにいたから!よろしく宇治」
「、、なんだよあの人」
宇治と目が合ったが、何も言わなかった。
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まもなく前半終了となり、客足も随分と減った。
「紫乃ちゃん!」
玲花の友達だ。さっき玲花がこの子を連れてお店に来てくれた。
「私そろそろ帰らなきゃだから」
「そっか、ありがとう来てくれて」
「玲花と仲良くしてあげてね」
「うん、もちろん」
「玲花今アイス買いに並んでるけどすぐ戻って来ると思う!」
「そっか、じゃあ挨拶しに来てくれたって言っとくね」
お互い手を振ってその子は帰った。
玲花の友達はみんないい子そうだから、私も嬉しくなる。
「2年生?」
急に近くで声がした。
他校か大学生かわからないが、ここの生徒ではない男の人が2人いた。
「あ、はい」
「遠くから見ても目立ってたよ〜、近くで見てもかわいい、綺麗な顔してるね」
異様に距離が近い。
「おいおいナンパかって」
隣の男の人が笑って言った。
「そんなやっすいことしねえって、まあとりあえず名前とLINE教えてほしいかなあみたいな」
「ははっ、それをナンパって言うんだろ」
「あの」
すっと、私の隣に来た。
「食べないなら帰ってもらっていいですか」
「んーと、誰?この眼鏡」
「宇治です」
「あそう、ついでにこの子の名前も知りたいんだよね」
「あなたなんかに教えるわけないでしょ」
「紫乃?、、あの、なんですか」
突然、玲花が間に入った。
「そこに先生いますよ」
「、、おもんねえ、帰ろうぜ」
「いつもより諦めんのはえーな」
「だるい男と女がついてるからな」
男性2人は階段を下って去って行った。
「大丈夫?紫乃、なんもされてない?」
「されてないよ、ありがとう」
「よかった、ほんっと気持ち悪いあーいう男」
「宇治」
宇治、本当に助けてくれた。
「ごめん、ありがとう」
「委員長に言われたからね」
宇治はそう言ってテーブルの上の片付けを始めた。
「紫乃、お店宇治と回りなよ」
「え?」
玲花はこれから店番だから、他の子に頼んで一緒に回らしてもらおうと思っていた。
「さっきみたいな人またいるかもだしさ、絶対男子がついてた方がいいよ」
「そんな心配しなくて大丈夫だよ」
「だめ!私が許可しない!」
「、、いやでも、宇治だって友達と回るでしょ」
玲花は早足で宇治の側に行き、なにやら話して戻ってきた。
「よし、宇治と回ろう」
「いや俺おっけーしたわけじゃないって」
宇治がこっちに来ながら言った。
「だって友達彼女と回るんでしょ?」
「だから後半も店番しようと思ってたんだよ」
「さっきみたいなこと起きないようにだって、頼むよ宇治」
「変な噂立てられたら幡中も嫌でしょ」
「、、玲花、ほんとに私大丈夫だよ」
「じゃあわかった、
、、、、、はい、これで紫乃と回って!」
玲花は『ボディーガード』と書いたガムテープを宇治の胸元に貼った。
「これで彼氏かなとか噂立てられることない!」
「ボディーガードって、、」
「あ、せっかくの文化祭だから楽しみはしてよ!仲良く!頼んだよ宇治!」
半ば強制的に一緒に回ることになってしまった。