テラーノベル
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──────いえもん視点──────
暗く、深く、まるで水中の中にいるかのように視界がクラクラと霞む。いや、俺の目のせいではない。ここの空間全体がぼやけたり、波のように模様を変え続けているのだ。唯一の明かりは満面の星のように細やかな光だった。
どこに行っているかは分からないが、自然と体が引っ張られるような不思議な感覚が身体を覆う。
耳の中がグワングワンと音が鳴り響き、息が吸えないという錯覚。そんな苦しい感覚を味わいながら、俺は目を閉じる。
目を開けると、そこは『美しい』の結晶で作られたかのような楽園だった。雲のような地面がふわふわと連なり、所々に星型の光が落ちている。上空からは金色の光が差し込み、まるで歓迎するかのように祝福の光が照らされる。空の色は淡い色で構成されていて美しい色合いが世界を支配していた。
「…綺麗。」
思わず言葉が漏れる。しかし、そう思ったのは少数なようでほとんどが険しい表情を浮かべ、一点を睨みつけていた。俺もそこを見れば一瞬で寒気に覆われる。
そこに居たのは。
──────無数の天使と悪魔たちだった。悠々と羽をのばし、純白の翼と漆黒の羽が交互に降り混ざり、まるで旗をおっているかのような芸術作品が生み出されていた。
そして、その中央にいるのは──────メテヲ、ぐさお、ダークであった。
「武器を構えてください。」
めめさんの言葉に反応し、俺たちはすぐに武器を構える。
その敵───メテヲさんの冷徹なその声とともにその戦いは始まった。
美しい空が一瞬で矢の雨となり、光線や、どず黒い線が飛び交う。
俺たちはそれに対し、守りを重視しながら天使や悪魔に接近する。
しかし、唯一それを無視して特攻するのは八幡さん。一瞬で肌を鱗へとかえ、たちまちその天使や悪魔を虐殺する。
「んまっ」
そんな緩い声とは裏腹に敵は八幡さんの鱗に傷一つつけることが出来ずに上半身から下半身にかけて切り刻まれ、一瞬で絶命する。それほどまでに八幡さんは強かった。
───が、突然八幡さんの翼をもぎとった天使が現れる。
「だめだよー?そーんなに天使たちを殺しちゃ!」
そう言って八幡さんはそのまま重力で落ちきる───前に、翼が再生し、空中でその落下を止める。
「みんな久しぶり〜!ヒナだよ〜!」
そう言って深紅の瞳を歪ませて笑うのは昔、ウパさんを槍で貫いた張本人「ヒナ」であった。
しかし、その瞬間俺の真隣で強い突風が巻き起こる。それは、故意にできたもので猛スピードで誰かが移動した結果だということが分かる。
「…ヒナ、俺と、戦え。」
その風を吹き起こした本人であるルカさんは一瞬で羽を広げ、そう言い残しながらヒナを雲から突き落とす。俺はその行動に衝撃を受ける。あんなにも引き摺っていたというのにルカさんはその因縁の相手とも言えるヒナを躊躇なく叩き落としたのだ。
──────ルカ視点──────
「…んでッッ!能力が効いてないの!?」
そんな焦ったような声とともにそいつは空中で留まる。その身の丈に合わない大きな翼がきっとその落下を食い止めたのだろう。”元”妹ながらなかなかにタフだ。そんなことを思いながら血で作られた槍を手に持つ。
「ッッ!!なんで能力が、ァッッ!?」
俺は、ヒナの翼をもぎとる。そして、その付け根をすぐに塞ぐ。こうすることで力づくでそれを壊さない限り再び翼が生えることはもう無い。
「『能力が効かない』…そんなに疑問か?」
俺は淡々とヒナを追い詰める。だってもう、ヒナは俺にとってなんの驚異でもないのだから。
ヒナは恐ろしいものを見るような目で俺を睨みつける。天使様の無様な姿に思わず口角が上がる。
「あぁ、そういえば。ヒナにも言ってなかったな俺の能力。誰にも言ってないからな。当たり前か。」
俺がわざとらしくそう言ってやればヒナは疑念の意を込めた目をこちらに向ける。昔は宝石なんかよりも美しいと感じたその瞳は今では濁りきった血溜まりにしか見えなかった。
「俺の能力はな?『弱点を消す』能力なんだ。ヒナが俺に手札を見せた時点でヒナの負けは決まってたんだよ。」
「───は?何それ。チートじゃんッッ!」
ヒナが叫び散らかす。昔は愛らしい妹だったが、今では我儘な天使様、としか思わない。どうしてこうも変わってしまったのか。皮肉めいたことを思いながらもその拘束を取ることはない。
俺の能力は「弱点を消す能力」。別名『バニッシュ・フォールト』。その能力の発動条件はその弱点を認識すること。太陽の下を歩けない、ニンニクが嫌い、聖水が苦手。光が苦手。───そんな、あらゆる制約があってなお強いのが吸血鬼だ。───じゃあその弱点が消えたら?それはさらに強い種族へ変貌するだろう。もはや、吸血鬼、という概念すらも超える、異端のものへと。
つまり俺が言いたいのは。俺はもう、ヒナという弱点を消したのだ。そうしてしまえばヒナは俺にとって脅威ではなかった。
「だから、さ。ヒナの『感情を操る能力』…だっけ?それを俺は弱点だと認識したんだ。」
俺はゆっくりと槍をかまえる。ヒナは逃げようとしているが、既に鎖で拘束している。天使が苦手とする闇で。
「だから、今、ここで。その弱点の存在を確実に消すんだ。」
そう言って心臓に槍を突き当てる。慌てふためくと思ったがその顔は酷く冷静で、そして寂しげな笑みを浮かべながら俺を見つめる。どことなく懐かしい雰囲気に無意識に手が止まる。
「…ねぇ、ルカ兄。」
「───ルカ兄って呼ぶな。俺は、お前の兄じゃない。」
そう言い切ればヒナは驚いたように目を見開いたあと、小さな声で「そっか」と言った。しかし、ヒナの言葉は止まることなく続く。
「前世は兄妹で仲良かったらしいのにね。なんで今世ではこうなっちゃったんだろう?」
後悔、無念、憂い、寂しさ…ほどくことが出来ない複雑な感情が渦巻くその瞳は透明な膜によって光を帯びる。
その時、俺は見えてしまう。ヒナの───ヒナの背後に光を集めた光線がちらりと見えてしまった。光が帯びたんじゃない、これは──────
(奇襲かッ)
警戒を完全に解いてしまっていた。おそらく不意打ちでこの技を当てるためにわざわざ話を長引かせていたのか。そう、気づいた時には遅かった。
「来世ではルカ兄の妹として生まれたいな。」
祈るようなその一言。
その一言と共に、その光線は──────ヒナの心臓を貫いた。
ここで切ります!ヒナさんはこの物語から退場しました。まあ、つまりお亡くなりになりました。我ながらあっさりと死なせたな〜と、書いている本人ですらちょっと驚いてますwルカさんの能力は多分初めて明言した気がしますね…。ルカさんが日光が効かない、十字架も効かない…など結構吸血鬼として異端なところは前々から描写していますが、その時はそれっぽいのがあったので誤魔化しましたが、本当は能力の影響です。当然のごとくクソ強いです。相手の能力がわかっていて、それが弱点だと自覚した時、その弱点を消せるというチートじゃないですか?まあ、めめ村全員チートですけど。今までヒナさんの能力の影響を消していなかったのは気づかなかったからですね。認識できてなかったので。いや、自分でもヒナさんに甘やかしていたりと、弱点ではあったんですけど消そうとはしていなかった。が、正しいかもしれませんね。
それでは!おつはる!
コメント
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なんでだろう…とあるボカロの「もしも生まれ変われるならば その時はまた遊んでね」のフレーズが合いそう…
わーおかっこいいのに誤字が気になる