──────ルカ視点──────
「───…」
ヒナはそのまま何も言葉を発することなく糸が切れた人形のようにプツリと倒れる。呆気ない死。ヒナはそのまま死体を残さず、キラキラと体が光に変わり、欠けていく。ヒナの原型がなくなった瞬間、脳が情報を更新するように新たな感情が芽ばえる。
「あ”ぁ…?ヴゥ…ウェッッ」
そんな変な声が喉を通る。おかしい。さっきまでなんともなかったと言うのに。邪魔者を消しただけなのに。なぜだか涙が止まらない。ヒナが最後のあがきとして俺にこの感情をうえつけたのだろうか?───いや、そんなわけが無い。死んだやつの能力は直ぐに消えるはずだ。それに、俺はそれを弱点だと認識し、そして克服したのだ。ありえない。こんなにも感情が揺さぶられることなんて。
その時、ふと、ありえない事が思い浮かぶ。
───『ヒナに対する俺の感情を敵意へと変えた』のでは無いのかと。俺は、もしかしたらヒナに対して大きな未練を抱えていたのでは?───そう考えてる間にも涙が止まらない。これは俺の弱点なのか?───いや、違う。これは、俺の『気持ち』なのだから。
──────ヒナ視点──────
私は、前世を知った。
「───本当なんですか、それ…!!」
私は思わず声を上げる。天使・悪魔総監督指揮官様───メテヲ様がその衝撃的な話を気まずそうに言う。
「そう。実は、ね。だから、今回の作戦を君に任せたんだ。」
その衝撃なこと───それは『前世、私とルカはたった2人の兄妹だった』というのだ。つまり、今回の作戦であったルカの妹ごっこはあながち間違えではない事だった。でも、それでも聞きたいことは尽きなかった。
「じゃあなんで今世は種族すら違うんですか…!!!」
いつもはメテヲ様に対して丁寧に話す私も今回限りは取り乱してしまう。自身の感情を操ろうとしたがそれすらも上手くいかない。
「君たちふたりは前世、人間として生まれたんだ。人間の役割、わかるよね?」
私が自分から発言することを促すように質問をこちらに投げかける。当然わかるため、動揺しつつも答える。
「人外の食料…ですよね?」
私がそう答えればメテヲ様はいつものように歴史を語り出す。まるで間違えた生徒に丁寧に解説するかのようだった。───先輩が言うには昔のメテヲ様はふわふわとしていてこんなに歴史を語ることもなかったらしい。今じゃことある事に神の素晴らしさを語り、そして歴史をいつも語る。まるで昔にしがみついているみたいだ。そんな客観的に考えられるのは感情を失ってしまっているからだろう。───いや、前世の記憶で動揺しているのだから感情はまだあるのか。
「その通り。しかし、そんな食料が人外を殺しながらお宝を漁りに漁った。『大怪盗』。その名を聞く度に人外が震え上がり、君たちが寿命で死ぬまで活発に活動できなかったんだよ。」
私は、そのまま無言でその言葉を聞く。前世で人外を殺せるほど強いなんて思わないが。
「でもね、それに対して先代の最高神様がお怒りになったんだ。あの最高神様直々に、ね。」
その言葉には聞いたものをゾッとさせるような冷酷さと冷たさを携えていた。重力が一気に重くなったかのような錯覚。口から言葉が出せない。
「だから、本来君たちは地獄送りの予定だった。しかし!2人の境遇を哀れに思ったロスト様が、その罪を軽くしてくださったんだよ。あぁ、我らが神様!ありがとうございます。この場で最大限の感謝と祈りを!!」
相変わらず狂ったかのように神様を信仰するメテヲ様。天使であり悪魔なのだから当たり前と言えば当たり前なのだがそれは信仰している、と言うよりも狂信している、と言った方が正しいと思うほどだった。
「だから、ヒナは天使として天界に務め、罪滅ぼし。ルカは下界で懺悔させる。それはもう哀れな結末をつきつけることで罪を償うんだ。」
「…それが今回の偽物の妹作戦ということですか?」
「そう。本当に愛した妹に目の前で裏切られ突き放される。これがルカの罪に対する制裁。ついでにヒナにも制裁が与えられる。一石二鳥でしょ?」
そういってニコニコ笑いながら言うメテヲ様の表情は恐ろしくもあった。
「なッッるほど…了解致しました。」
「ん、理解してくれたなら嬉しい。それじゃ、戻っていいよ。」
その言葉を確認してから私はその宮廷を離れる。
メテヲ様──────イヴァジェル家現当主。神様を第1とし、特に最高神様を敬っている。他の天使や悪魔すらそれに対して違和感を持っていない。私だけ、私だけがその執着を恐ろしく感じていた。その理由は私の前世が人間だったからなのだろう、とそう自身の感情に結論をつける。
「ルカ、ルカ、…ルカ兄。」
前世、兄妹で同じ血が流れた人。ある意味運命の人なのだろう。もう、感情が分からなくなってしまった私には分からない。昔、誰かに治してもらったのに。ノイズが走ったかのようにその記憶を鮮明に思い出すことはできなかった。
そう、彼が私に『救済』を与えるまで───
ここで切ります!
時間が無いのでササッと今回は流します!それでは!おつはる!
コメント
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…メテヲさん…それは悪魔の所業なんすわ…ってメテヲさん天使と悪魔のハーフってこと忘れてましたわ…
結局兄妹愛があったって事なんですね…切なッッ!!
メテヲさん怖いな…