テラーノベル
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#自探索者
ゆむ。
98
#腐向け注意!
テリー・オスト
130
207
最終話「少女を焦がす熾火」
御剣 槐との決着をつけ、キミ達は彼の真意を知る
あとは彼の処遇を決め、カヤに土地神の権能を取り戻させ
“封印者”への再封印を行うだけだ
だが、槐は最期にある真実を告げる
それはキミ達に与えられた可能性の1つ
その可能性に対して、キミ達は決断を迫られる
最終話となります
マジで楽しかった〜〜!!!!!!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
苑良が一頻り槐に甘え泣き着いたあと、槐はよろける身体を何とか立ち上がらせ、全てを見ていた3人へ顔を向ける
「俺が話すのは可能性の一つだ。俺の命はもうすぐ消える、だから選ぶのはお前たちだ。
伊沙奈を救い、大炎邪を倒す方法がひとつある」
息を深く吸い、呼吸を置くとしっかりと視線を合わせる
「…俺の目的は、土地神から霊脈を奪い伊沙奈から大炎邪を引き剥がしたあと討伐する、というものだ」
自身の隣で未だに腕を掴んで離さない弟を困ったように見て笑う表情は、本当に仲のいい兄弟のものだった
再び脊古たちの方へ顔を向ける
「伊沙奈を救い大炎邪を倒すには、まず伊沙奈から大炎邪を切り離さなければならない。天之尾羽張であれば断つことができる。
大炎邪の完全体は確実に勝ち目はないだろう。肉体と霊魂に分かれている片方であっても、厳しいだろうな。
……だが、先刻も話した通り御剣家は奴の力を削ぎ強力なカミガカリを生み出すためのシステムをこの日まで続けていた。確実に弱ってはいるだろう。……それでも、勝算は五分五分といったところだがな…。
もちろん、封印をするという手段もあるが。」
そこまで話して、槐は土地神へ視線を移した
「封印をする、方法は、野槌神に聞け…、」
最後にそう言い残して、槐は意識を飛ばしその場に倒れ込む
苑良は咄嗟にその身体を受け止めるが体格差によって受け止めきれず一緒に倒れ込んだ
「兄ちゃんっ、兄ちゃん、!!!」
苑良は必死に槐の服を掴み体を揺するが、苦しそうな息しかかえってこず落ち着いていた息がまた浅くなる
どうにかしないといけない、クシミタマでは助けられない、小さな奇跡では、この兄は救えない
そう、まさに
──神が起こすような奇跡でなければ
滲み始めた視界を必死に彷徨わせ、かの神を見る
「兄ちゃんが…兄が起こしたことの全ての責任はおれが、俺が全て罰を受けるのでっ、!あの、たす、助けて、くださぃッ…、!」
抱きかかえている兄の服を強く掴み、そのまま頭を深く下げる
先刻からずっと取り乱してばかりで、泣いて頭を下げるしかできない自分が情けない
受けてもらえるか分からない乞いを、顔を伏せたまま返事を待った
ふっ、と息を吐く音が聞こえた
「…うん、こうなってしまった責任は、私にもあるから、ね…」
優しく響く声に顔をあげる
野槌神は…カヤ様は悲しそうに笑って、兄へ手をかざした
淡い光が槐を優しく包み込み、苦しげだった槐の息は落ち着き、容態は安定したようだった
「あり、がとうごさいますっ、」
再び深く、深く頭を下げ、感謝を口にする
感謝では足りない
これから生涯、俺はこの人への恩義を返さなければならない
伊沙奈を救おうとしてくれていることも、兄を救ってくれたことも、決して俺一人の人生では報えないかもしれないが、それでも、全ての決着が着いたら、誠心誠意返したいと思う
「彼の言っていた最も安全な方法は、大炎邪の再封印のことでしょう。少しずつではありますが、土地神としての力も戻っています。できないことは無いでしょう。」
野槌神が、それを行うことを前提のように話す
当たり前だ、誰も死なさず、これまでのようにするのが1番平和で、安全で、誰もが納得する術なのだから
けど、
だけど……!!
苑良は、横たわる兄の頬を撫で、深く息を吸った
「俺は、伊沙奈を殺せないし、かと言って伊沙奈をあのまま、封印によって苦しめさせたくもない……っ、!」
先程から溢れて止まらない涙を無視して覚悟と決意に満ちた瞳を全員を見る
「…大炎邪と戦うのはとても危険だよ、勝てるかも分からない。最も安全な最善策は、さっき彼が言っていた通り再封印。…私が封印を施すから、ちょっとだけ私は眠ることになるけれど、」
野槌神は引き止めるように、苑良を諭す
それでも覚悟は揺るがなかった
「俺は死んででも……いや、大炎邪と相打ちにしてでも伊沙奈を救いたい。全ての元凶である大炎邪を殺したい。」
しっかりと、ブレることのない声音で宣言する。
1人でもやる。そんなつもりでいた
「……ぼくは、御剣さんを助けたい。また封印したって問題が先送りになるだけで根本的な解決には繋がらないし、また、同じようなことが起きた時に今度こそ破滅するかもしれない。……だから、大炎邪と戦いたいです」
苑良以外が考えていた中、泉見が苑良と野槌神をしっかりと見つめた
その横で脊古が続くように言葉を口にする
「…根本的解決にならないのもそうだし、若い2人が覚悟を決めたなら、大人としてサポートするのが道理だろう。」
かつて兄と重ねたその姿にじんわりと熱が胸に広がる
「私は…」
一つだけ、違う雰囲気をまとった声が上がる
「…私も、と言いたいけど、今の私には賛成できない。勝てる確証もない、下手をすれば世界を滅ぼす選択を私は手放しで選べない。私には、先生から託された使命がある。……苑良くんには悪いけど、最も被害が少なく済むのなら再封印がいいと思ってる。」
それは、苑良とは別の……いや、ある意味では同じである”託された使命”を完遂せんとする覚悟の決まった言葉だった
真っ直ぐと苑良を見つめ、けれど苦渋なのか眉を寄せていた
脊古が静かに声あげる
「無理はしなくていいよ、君には教会を担う責任があるんだろう。理解しているよ…大丈夫、俺達は3人ででも向かう。もしそれで命を落としたとしても……本望だから。」
じっと、トールを見つめる
苑良は気づかなかったが、トールはその瞳に『こう言えば君は優しいから、罪悪感を抱いて着いて来ざる負えないだろう?』という考えが滲んでいることに気づいていた
「…っあの、トールさんが、後ろにいてくれて戦ってくれるの、いつもすごく心強くて、だから、着いてきて欲しい……けどっ、でも、大変なのも、わかるから…」
今朝当主となった苑良も、本来なら御剣分家の存続のため再封印を進めるべきなのだ
けれど兄を殺せなかった時点で自分も外される可能性が高い。どう転がっても苑良は責任を全うする必要を全て捨ててしまっていた。
けれどトールはそうではない。
教会の現時点での最高責任者としてトールの判断は間違っていなかった
だから、無理に説得することが苑良には出来なかった
当然来てくれると思っていた自分が恥ずかしくて俯く
「…トールさんなら、僕たちを助けてくれるって信じてます」
泉見が真っ直ぐな声で言う
純粋な信頼を多大に含んだ視線にトールは少したじろいだ
「あ”〜…もう!!」
トールが大きな声を上げて頭を掻きむしる
「そんなこと言われたら!!断れないじゃんか!!」
トールは脊古をじっとりとした視線で見つめ、脊古は素知らぬ顔で視線を逸らした
「……わかった、わかったよ!大炎邪を倒して世界を救う。なんか問題あれば先生に頼る!!もう!!」
「ぁ、ありがとうございますっ、!!」
トールは軽く溜息をつき優しく笑ってくれた
これから選ぶ道は決まった、後は全てを終わらせるだけ……と全員が顔をあげようとした時だった
突然、槐と野槌神の足元に五芒星が浮かび上がる
そして同一方向から魔法が打ち込まれた
「はっ!?!?」
「くそ…!」
咄嗟に苑良は槐を抱え、脊古は野槌神の手を引き飛ばされた魔法を避ける
「あーぁ、外れちゃったかぁ。つっかえね。」
ガシャンっと愛用武器であった武器を床へ投げ捨てる
飛んできた方をむくと、嫌な笑みを浮かべる泉見がいた
「ッお前、どういうつもりだ!!!泉見!!!」
槐を抱えた苑良が怒鳴る
「ははっ!初めまして……俺は泉見悠、ではない。マガカグツチ。悠に封印されていた、大炎邪の半身だ。」
嫌味ったらしく恭しいお辞儀をして愉しそうに笑う
その姿は普段の泉見とはかけ離れたもので全員が目を見張った
「いやぁ、こいつは便利だな、どいつにも信用されて動きやすい!アリスが召喚したフールフールのお陰で伊沙奈とかいう女が肉体の封印者であることもわかったし、槐の奴が施した封印も崩すことができた。……なにより、今朝方俺の霊力を注ぎ込んだお陰でもうすぐ肉体の方も開放される!!もうすぐ、俺は完全に復活できるんだ。」
いつもの温和で優しい微笑みではなく、酷く歪み人の神経を逆撫でするような笑みに苑良は堪らず殴り掛かる
「クソ野郎があ”!!!!」
だが相手は泉見の肉体から霊力を使って顕現した神の半身
するりと避けられ嘲笑われてしまう
「大人しく話も聞けないのかこの猿。」
「っ、!!」
妹の想い人で、後衛を信頼して任せられる後輩
信頼を置いていた人物の顔と声による嘲笑は苑良を酷く動揺させる
「アリスに抜けがけされた時はさすがに焦ったが…まぁお前たちが殺してくれたお陰で儀式の準備は進んだしいいだろう。あぁ、悠と俺が入れ替わったのはアリスと戦う日の朝の事だ。なかなかの演技だっただろう?最後の仕上げに伊沙奈へ呪詛を流し込んだ。……止めたいなら、急いだ方がいいんじゃないか?まぁ、ここから出られるならの話だが」
マガカグツチは苑良達はもう何も出来ないと踏んでなのか全てを赤裸々に語る
泉見の中から全てを見ていたこと
それを泉見は気付いていないこと
本人は家でずっと眠っていること、などを愉しそうに語った
「んじゃ、俺は行くぜ。じゃーなぁ〜」
手を軽く振りマガカグツチは魔境を出ていく
それを追いかけたが魔境の入口へ着くとその反対側へ繋がっていて出ることができなかった
「はぁ?!なにこれ!?!?」
苛立った様子のトールが「意味わかんないー!」と叫びながら何度も入口へ走りその度に反対側へ押し出されていた
「外の状況を知りたいな…泉見くんか、一ノ瀬くんにでも連絡が取れるといいんだが…そうはいかないよな」
脊古はため息混じりにケータイを確認し、想定通りの”圏外”の文字にまたため息を着く
「…少しだけなら、力が戻ったから、つなげられるか試すわね」
野槌神がそういうと突然脊古のケータイがけたたましい通知音を鳴らした
「おぉっ…はい、もしもし」
脊古が驚きつつも電話を取ると焦ったような大声が隣にいた苑良にまで聞こえた
『脊古さん!!今どこですか!?!?街にモノノ怪が溢れてきていて…!』
「あぁ、一ノ瀬くん…今は妙見山で法則障害に閉じ込められてね…そうだ、泉見くんを探してくれないかい。」
『泉見?あの泉見悠さんですか?彼は今一緒では無いんですか?』
「そうなんだ、少し別行動を頼んでいてね……」
『分かりました、くれぐれもk(ブツッ…ツー…ツー…)』
いきなり電話が切れ、一ノ瀬の方に何かあったのかと脊古が眉を寄せた時だった
「はぁっ、はぁっ…、ごめんなさい、まだ、少ししか繋げられなくて…」
野槌神が息を荒くし謝罪をする
まだ力が十分ではないのだろう
「いや、状況を伝えられただけ充分です。ありがとうございます」
安心したように少し目を細めて野槌神へ頭を下げる脊古を苑良はぼんやりと眺めていた
背負っている兄が今後どうなるか、どうするべきか考えがまとまらない
兄は国家指名手配犯で、御剣分家を全滅させたとされている
その事実がどうであろうと証明するすべは無いし弟である自身の証言はそもそも聞いて貰えるとも思えなかった
大炎邪を倒しに行かなければいけないがこの状態の兄を連れては行けないし、かと言って預けられる知人などもいない
どこか、自分しか入ることの出来ない場所
そこまで考えてひとつの事を思いつく
「あの、脊古さん」
どうやら2度目の電話で何かあったのか焦った様子の脊古へ声をかける
「この後、行きたい場所があって」
「あ、あぁ…外の安全が確認できたらで良ければ、いいよ」
そして今の外の状況を整理し、泉見が来るのをじっと待った
─
───
泉見が合流して、みんなを連れて分家跡地へ再び向かった
「苑良くん、ここで何を…」
脊古が静かに問いかけるが苑良は真っ直ぐと隠し蔵の方へ足を向ける
ここなら、当主である自身にしか開くことはできないし協会も把握してないはずだから
槐をしっかりとおぶりなおし足を踏み入れようとすると後ろに黒い車が止まった
人払いの結界を解いてしまったから、嗅ぎつけられてしまったか
思い切り車から離れるように飛び退き脊古たちを車との間に挟むようにして距離をとった
開いた扉から出てきたのは特対の人間や教会所属のテレサ達で、脊古とトールをチラリとみやった
「…その人は、御剣槐ですね?」
その問いに苑良は答えない
「はい。そうです。」
代わりというのか、脊古が前に出て答える
近くにいたトールがテレサへ視線を向け弱々しい声を上げた
「せんせい…あの、勝手に決めて、その…」
その様子にテレサはふっと笑い
「黒のアリスがやろうとしていた儀式、必ず止めなさい!」
と大声を張る
「っはい!!!」
少し涙ぐみながら力強く頷くトールに満足気にテレサも頷いた
静かに、けれどしっかりと響く声で彩音は問う
「今、大炎邪の影響によって大変なことになっています。……大炎邪を、どうするのですか。」
「倒します。」
ハッキリと答えた苑良に目を見開く
「兄が為そうとした事は、俺が完遂します。」
「封印するか、封印者の命を諦めれば、そんな危険なことはしなくて済むのですよ?」
彩音がそう言ったのを肯定するように、カヤも声をあげる
「本当に、大炎邪と戦うの……?」
その言葉に苑良は眉を顰めた
なんで、兄が命を削って準備したこの討伐を
伊沙奈を救える手段を
解放してやれる手段を
俺に、手放せるのだぞと突きつけるのか
「俺は」
俺は、伊沙奈を
「兄が命を削ってまでやろうとしたことを手放しません。」
兄を
守らなければいけない。
「…そう、わかったわ」
「……では、彼が無事でないと、安心して戦いにはいけないですね」
ため息と共に吐き出された言葉に、小さく頷いた
「わかりました。大炎邪討伐までの間、彼の身柄の安全を保証しましょう。こちらへ。」
黒服たちが彩音の前へ出て槐を渡すよう言われる
だが、苑良はどうしてもそれに従うことができなかった
今この場において苑良が全面的に信頼を置くことができるのは脊古、トール、泉見の3人のみ。
もしここで槐を渡せば、二度と面会出来なくなるのでは、彼がその少ない命すらも断ち切られてしまうのでは、伊沙奈と会わせることもできず、しっかりとした話もできず、終わってしまうのではないかと、不安で堪らない
ここで拒否をすれば無理矢理にでも連れていかれるだろう。
それでもこうして話をし、苑良自身に選ばせている時点で彩音は既に大きく譲歩し尊重してくれている。
八部衆がこの場にいれば苑良は有無も言わさず槐を取り上げられていただろうことは理解していた
それでも、苑良は歩を進めることができずにいた
最愛の兄を、兄を始末せねばと動いていた協会に引き渡すことに酷く抵抗を感じて視線をさ迷わせる
何か、他に何か……
そんなものはあるはずもないのに、ギリ…と音が鳴るほど歯を噛み締める
その様子を黙って見ていた脊古が小さく息を吐いて苑良へ声をかけた
「苑良くん、大丈夫だから」
「……っ、でも、」
「大丈夫。俺の所属する特対はそんな非道な組織じゃないよ。きちんと彼を守ってくれる。」
「……、」
しっかりと、真っ直ぐに見つめられては何も言えない
「……脊古さんが、言うなら……、」
3人の中でも、最も信頼を置いている脊古が言うのなら、従わざるおえない
今まで自分達を守ってくれた彼なら、きっと嘘はつかない。
少しだけ力の抜けた足は、小さくだが前に進み、槐を渡そうと動いた
「……もう、ほとんど力は残ってなくて、暴れるだとか、そんなつもりもないはずなので、……どうか、どうか無体には……しないでやってください……、」
離れたくない
先程まで消えかかっていたその生命の炎が、いつまた揺らぐか分からないのに
離れていく兄の体温に手を伸ばして、力の抜けているその手をギリギリまで握って、彩音へ頭を下げた
兄を乗せた車は扉を閉め、彩音と共に去っていく
「…じゃあ、救いに行こうか、苑良くん」
去る車を眺める苑良の背を脊古が軽く手を添え
「お前が決めた道だろ。早く行くぞ。」
喝を入れるようにトールが肩を叩く
「御剣さんを早く助けに行きましょう、先輩!」
歩き出す手助けをするように泉見が隣へ立った
「…あぁ。」
仲間に恵まれたな、なんて、絶対に口にはしないけれど。
最愛の妹のために、共に並んでくれた人たちのために、その足を大きく踏み出した
───
─
鳥居を抜けた先
封印石の締縄の片方は燃えちぎれ落ちている
巨大な神殿の奥にソイツは愉しそうな顔で佇んでいた
それは泉見そっくりの男と、その奥の祭壇の上で、炎に苦しむ愛しい妹で
「伊沙奈……!!!」
剣を強く握りしめ大声で叫ぶとマガカグツチはこちらを振り向く
「なぁんだ、あの結界破っちゃったの?そう簡単に破れるようには作ってないはずなんだけどな」
「お前の考えが僕に通用するわけがないだろ。」
マガカグツチは意外そうにこちらを見つめ、それに対し今まで聞いたことないほど低く冷たい声で泉見が答えた
「あっそ。邪魔するんなら、消しちゃわないとな?」
そういっそう嫌に嗤うと苑良達4人との間に魔蟲とラルヴァを喚び距離を取るように離れた
「その女の射程からは出ねぇとなぁ〜」
「チッ……」
ニヤニヤと嗤うマガカグツチに横から舌打ちが飛んでくる
魔蟲が動くよりも先に苑良はマガカグツチの目の前へ滑り込みその剣を突き立て低く唸った声で睨みつけた
「テメェ、人の可愛い妹に何してくれてんだァ!!!」
額に青筋を浮かべ怒鳴る
「ははは!!!神の母になれるのだ、名誉だろ!!」
さも当然のように、見下す笑顔を晒す男に更に追撃しようとするがすぐに距離を取られ魔蟲によってその道を塞がれた
苑良は接近しなければ剣が届かないため距離を詰めようと動くが尽く魔蟲に邪魔されさらに逃げ回るマガカグツチへ近寄ることができないでいた
マガカグツチの攻撃はなんとか脊古が収束し、泉見の蘇生や回復を頼りながら魔蟲を片付け、ようやく苑良の剣先とトールの銃弾がマガカグツチのみに叩き込むことが叶う
距離を取られ障害物によって進路を閉ざされ逃げられてしまえば苑良は動けず、身代わりの能力を持つ敵が居ては攻撃が届いたとしても有効打にかけてしまうことに若干の苛立ちと悔しさに剣を握る手に力が入った
それはトールも同じであったようで苛立った様子で銃を握りしめていた
ようやくマガカグツチを削り切った時
「ぐっ……はぁ”ッ……く、はは、……俺を倒したって、破滅の具現は既に顕現している………、まだ、何も起こっていないだけで……」
「なら、それも僕たちが止めるよ。」
倒れたマガカグツチを泉見は見下ろした
「そうかよ……せいぜい、足掻け」
それだけを残して、マガカグツチは消える
「……本当に、大炎邪を倒すのね、?」
戦いを見ていたカヤが、伊沙奈の側へ駆け寄った苑良の隣に立ち4人を見つめる
全員が一切の躊躇いもなく頷く
「……ごめんなさい、何度も試すように聞いてしまって……。
これは、私からの餞別よ。」
カヤが何かを唱えると4人は暖かい光に包まれた
脊古と泉見はすり減っていた霊紋が回復していくのを感じる
走り回り疲労していた体も幾分か楽になった
「……今から伊沙奈ちゃんから大炎邪が離れるようにします。それを断ち切れば、伊沙奈ちゃんは解放される。」
その後は……など、言葉にせずとも全員がわかっていた
カヤが伊沙奈へ手をかざし炎が引き剥がされるように立ち上る
伊沙奈と炎の間を、兄から託された神剣で薙ぎその繋がりを断ち切った
「苑良くん!!!」
顕現する敵から距離を取るように脊古に腕を引かれ臨戦態勢に入る
目の前に顕現したのは、最愛にそっくりな見た目で少し胸元の露出が大きい和装に身を包んだ女だった
その女……いや、大炎邪はゆっくりと目を開き、厭らしく嗤う
「ッ……、!!!」
妹の顔で、悪辣に嗤う姿に動揺が隠せない
なんで、伊沙奈の姿で……
そこまで考えはたと気付く
泉見そっくりの見た目だった、泉見に封印されていたマガカグツチ
伊沙奈そっくりの見た目の、伊沙奈に封印されていた大炎邪
顕現姿が、封印者に帰属するというのか
「……妹の顔で、悪辣な顔をするんじゃねぇ!!!」
苑良の怒鳴り声を皮切りにそれぞれの攻撃が飛び交う
脊古と隣り合わせで戦っていた苑良の2人に向かって大炎邪の攻撃が降り注ぐ
「くっ…!」
「脊古さん…!!」
大炎邪の猛火を脊古が苑良を背に庇い受け止める
だが追撃の前に脊古が倒れてしまい為す術なく苑良も倒れ伏せた
「起きろ!、脊古!!!」
すぐトールが駆け付けアムリタを脊古に使い起こし、そのまま脊古によって苑良も再び立ち上がった
魔蟲に阻まれ動けない苑良、集中砲火で大炎邪を狙うも魔蟲に収束されてしまうトール
大炎邪の攻撃を霊紋の消費量など計算しながらギリギリで防ぎ続ける脊古
前線を維持する3人の命綱を握る泉見
「っこのままじゃ、ジリ貧だな…」
─武器特性も使った、霊紋も余裕がない、庇いきれない攻撃の連続でヒーラーである泉見くんの負担も馬鹿にならない、アタッカーふたりは思うようにダメージを通せておらず苑良くんに至っては焦りで動揺が見て取れる……
脊古の額には青筋が浮かび3人をどう守るべきか考えあぐねていた
誰かが倒れ、アイテムを使い、泉見の魔術を使い何度も膝をつきながらも生命を燃やす
思いどおりに通らない攻撃、カウンターによる決して小さくはないダメージ
脊古と泉見の霊紋が着実に限界へと近づいていく
ようやく魔蟲を1匹、苑良が破った
「トールさん!!!」
苑良が叫ぶと同時にトールが大炎邪へ銃弾の雨を降らせる
残っていた魔蟲に遮られるも防ぎきれずあぶれた銃弾が大炎邪を貫く
「っはは!!こんなものか!!!カミガカリ!!!!」
伊沙奈の声で、顔で高らかに叫ぶ
業火が、全員を襲い先に崩れ落ちたのは苑良とトールだった
「くそっ、あと少し、あと少しのはずなんだ……、!」
目の前には大炎邪が放った炎
真っ赤に染まる視界の端で、泉見が倒れるのを捉える
─あぁ、守れなかった
若くも必死に走り回って戦った彼らを、守れなかった
燃え盛りぼやけていく視界に力の入らない手を握りしめる
そうして、全員が倒れ伏した
───はずだった
「ぁ”〜……くそ、ほんとムカつく。」
「何……?」
今も尚一帯を燃やし続ける炎の中に、少女は立ち上がっていた
「アンタ倒さないと、先生に顔向けできないだろ。」
シスター服を翻し、回復の要である泉見へ歩を進める
「たとえ死んでも、お前だけは絶対に殺す。」
泉見へかざす手にはアムリタが握られ、眩い光と共に泉見が目を覚ます
「ぁれ…、とーる、さん、?倒れた、はずじゃ……僕も、」
「説明は後。苑良と脊古…さんを起こせ。あいつをぶっ殺さないと。」
「は、はい……、!」
震える足で立ち上がり水晶を構える泉見の背を軽く叩き、自身も銃口を大炎邪へ向けた
「脊古さん、苑良先輩……!あと少しですよ……!!!」
泉見がそう声をあげると同時に苑良と脊古が起き上がる
「……っ、泉見くん、ごめんよ、霊紋にあまり余裕がないだろうに、ありがとうね、」
回復しきっていない体で、脊古は3人を守ろうと前へ踏み出した
「……もう、魔蟲はいないな」
「?うん、もういない。それがどうした、苑良?」
苑良の小さな確認にトールが頷き、大炎邪へ向けていた視線を苑良へ移す
「なら、もう使えるか」
「なにを───」
苑良は姿勢を低くし、天之尾羽張を今迄に見たことの無い型で構える
「一族秘伝の絶技。」
それだけ呟き、大炎邪の目の前に飛び込みその剣を横へ振るう
何かを叫ぼうとした大炎邪の声は音になることなくその胴体を切りつけられる
これまで、御剣苑良が戦闘の際に言葉を発することは少なかったが、その分表情に現れていたはずだった
焦りや動揺、怒り、槐との戦闘では悲しさや愛おしさを滲ませていたのに
この瞬間は、この時だけは、静かで、凪いだような表情だった
苑良が剣を振り切り、大炎邪の体がボロボロと崩れていく
剣をしまう横で、どこから現れたのか巫女装束の泉見そっくりの青年が倒れた大炎邪をその胸に抱き寄せた
「……ありがとう、カミガカリ達よ。これでようやく、母上の元へ戻れる。」
先程切り伏せたマガカグツチとは似ても似つかない穏やかな声音でカヤへ微笑む
「カヤにも、迷惑をかけたな。」
「いえ、いえ……っ、」
カヤはその微笑みに涙を浮かべ頭を振る
「…カミガカリ達よ、破滅の具現は既に顕現している。……だが、君たちなら、きっと止められるだろう。……信じているよ。」
それだけ残して、彼は彼女を抱きしめたまま光の泡となり天へ昇っていった
「……おわったぁー、」
気の抜けた泉見の声に、全員が肩の力を抜きそれぞれが姿勢を崩す
苑良は手に入れたクシミタマをトールへ投げ渡し、伊沙奈の元へ駆け寄る
「……これで、もう伊沙奈は、」
また、溢れる涙を妹の横たわる祭壇に零しながら膝をつき崩れる
「先輩、まず御剣さんの火傷を治さないと……僕のクシミタマ、使っていいですか?」
「……たのむ、」
やさしく肩に手を添える泉見を見上げ、そっと場所を明け渡す
あの日、5年前のあの夜、自分がしたように、泉見は伊沙奈へクシミタマを使って眩い光に包まれた
光が収まって確認をすると傷一つなく安定した呼吸をして眠る妹の姿を捉える
「…泉見」
「ぅわっ、!」
「っ、ありがとう、いずみ、ありがとぅ、」
苑良は立ち上がり泉見の胸ぐらを強く掴み、その肩に顔を押し付けるようにして小さく震える声を零した
「……はい、どういたしまして、先輩」
泉見は「この人は御剣さんが絡むと感情豊かになるなぁ」なんて考えながら、自分の肩に顔を埋めてほんの少しだけ嗚咽を漏らす苑良を見て微笑む
「苑良くーん、悠くーん!そろそろ報告に帰るよ〜」
「あ、はーい!…先輩、御剣さん連れて、戻りましょう?」
「ぉう、」
ようやく顔を上げた苑良は長い前髪で目元を隠すようにして伊沙奈をおぶると素早く脊古の元へ走っていく
「あはは、よかった」
その後ろ姿に思わず笑いがこぼれた
泉見も駆け出して3人の元へ向かう
その後ろ姿を嬉しそうに草祖草野姫は見送る
先程まで暗くなっていた街は、元通りの透き通る青色へと戻っていた
─武装伝奇RPG 神我狩公式シナリオキャンペーン
第6話 『少女を焦がす熾火最終話』
閉幕
コメント
1件
よっしゃあ完走した…!お疲れ様でした&おめでとうございます!! 最終話、めちゃくちゃ熱かった…!槐の真意、泉見の裏切り(まさか大炎邪の半身だったとは…)、そして全員が立ち上がって挑むラストバトル。苑良の「俺は手放しません」って台詞、グッときたなあ。あとトールの「もう!!」からの覚悟決めるところ、好きすぎる。最後の伊沙奈救出とクシミタマ返還の流れで涙腺緩んだわ…。 本当に、よくここまで駆け抜けた!お疲れさま!!🔥 はる。