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「…………はぁ〜……」
あれから3時間経つが全然眠れない
一方でシオンはというと、オレの胸の中で眠り続けている
「(なんなんやこいつ…)」
一向に襲ってくる気配のない、シオンを不思議に思いつつも目の前に男がいるというのに寝てしまう警戒心のなさに笑ってしまう
「(コイツ、オレの事好き言い寄ったけどそれも演技なんか。)」
ふと嫌なことを思ってしまい、眉を顰める
いつも好きと言って言いよってきていたあの行動や言葉全て偽りだとしたら?
それにオレはまんまと引っかかった人間ではないか
「…くそ……」
しかし今まで色んなチャンスがあったのにオレを狙わないのも、オレに対して例え恋愛的ではなくても少なからず好意があるからと思い込みなんとか苛立ちを抑える
ゆっくりと天井を見上げ、ぼーっと色々考えていた時だった
「…っ、や──いやっ……」
横で心地よさそうに寝ていたシオンが何かに魘されだした
「シオン…?」
変な夢でも見たのか、と思いシオンの方へ振り返る
するとシオンは苦しそうに顔を歪めていた
「痛い…怖いッ…いやっ!いや!!」
「!シオン!!」
何かを酷く拒絶しているようだった
あまりにも苦しそうな声にカラスバが慌ててシオンの肩を揺さぶる
「ッ!?はっ…はッ……あ、あれ…」
「お前…大丈夫か?」
パッと目を覚まし、驚いた顔でカラスバの顔を見つめるシオン
少しして状況を理解したのか、ため息をついたあと「すみません…」と謝る
「謝る事やないやろ、それより大丈夫か」
「すみません…少し…嫌な夢を見てしまって…」
そう笑うがシオンの顔は青ざめていて、微かに身体も震えていた
こんなシオンはあの潜入調査の時以来だ
気丈に振舞っているが、やはりシオンの裏にはなにかあるのだろうか
シオンが言う〖実家〗というのも怪しく思える
本当にそれは実家なのだろうか
とりあえず今はシオンを落ち着かせる事が第1優先だ
そう思いシオンに声をかける
「足、だいぶ深くいっとったやろ。見してみ」
「えっ?ええっ!?いやいやいいですよ!!」
「オレの機嫌がいいうちにはよし」
「ひえ……は、はい……」
そういって起き上がったあとカラスバに切りつけられた左足を見せる
「…お前、自分でやる言いよったけど……クソヘタやないか!!包帯巻くだけでええ訳ないやろ!!」
「い、いやでも血止まりましたし〜?」
「そういう問題ちゃう」
そういってジプソに予め置いてもらっていた救急箱を手に取り、シオンの包帯を外していく
「…せっかく綺麗な足なんやから大事にせなあかんで」
ボソッと呟いたカラスバの言葉に、少し顔を赤らめ「あ”ぁ〜…そういう所…」と項垂れるシオン
「なんやそういう所って」
「いやなんでもないですよ〜、それより慣れてるんですね」
「まぁ、小さい頃は怪我したら自分で治すか、そのまま耐えるのが当たり前やったからな」
そういって笑うカラスバに対し、シオンは何も言わず少し複雑そうな顔をする
「ま、それのお陰で今のオレがおるんや。
……ん、できたで。キツない?」
「あ、ありがとうございます!全然大丈夫です」
そう言って笑いながら足を見るシオン
「私は…怪我とか人より早めに治るんです。だから、ほっておくこともあったけどたまにお母さんに会った時すごく怒られたな
それこそカラスバさんみたいに!」
「なんや、オレがおかんて言いたいんか」
「ええっ!?違いますよ〜!!」
驚き目を見開きシオンを見て、ふっ…と解けたような笑みを見せるカラスバ
「…なぁ、なんでオレを殺さんかったんや」
「──え?」
その言葉にシオンは目を見開く
しかしすぐに何かを察し「…あ〜…」とカラスバから目をそらす
「隙なんかいくらでもあったやろ
今なんか、オレとお前2人きりやで」
そういってシオンを煽るように目を細めながら笑うカラスバ
「こんな近いのに、逆にオレに手ェ出されてもなんも言えへんで」
そういってシオンの体を押して押し倒す
いつも余裕そうなシオンの事だ、どうせこんな事しても何もなびかな───
「っ…う……」
目の前には口元を手で逸らしつつ目を横にそらし、顔を真っ赤にしたシオンが居た
そんなシオンに対し、カラスバの胸が一気に大きく高鳴る
沈黙が少し続く
そしてその沈黙を破るようにシオンが小さく呟く
「…殺す気…失せちゃ、って」
その言葉に目を見開く
これは嘘なのだろうか、それとも本音だろうか
けれど本音だとするならば、それはどういう意味で言ったのだろう
「なんで殺す気失せたんや」
「そ、れは…それは……っ」
顔を真っ赤にして言葉を詰まらせている姿を見れば、流石に察しが悪い人間でもわかってしまう
しかし直接聞きたかった
シオンの口から直接聞きたかった
しかし次の瞬間、「む、無理!!」と言ったかと思うとカラスバの顔スレスレにナイフを天井へぶん投げる
「──は、」
「う、うぅっ…!」
流石にカラスバも顔が引き攣ると同時に青ざめ、1度天井を見ると天井に刺さっている1個の小さなナイフ
それを見てゆっくりとシオンの上からのいて、天井のナイフを取ろうとするカラスバ
しかし背が低いからか取れない、それを見たシオンも取ろうとするがカラスバより低いシオンが取れるはずもなく2人して絶望する
「す、すみません…つい…」
「お前、あれ何本持っとんや…」
「あと2本あります……」
「とりあえず貰っとくわ」
「はい…」
そう言うと半分に折りたたまれた小さなナイフをカラスバへ渡す
「(いやこっわ!!なんなんコイツ!!あの反応を見るに殺す気はないんやろうけど、こっわ!!は!?なんでぶっ刺さんの!?こっわ!!)」
冷静な対応をしつつも内心では動揺しまくる
「(え!?なにあれ!?カラスバさんそういう事!?いやまって、多分元々女の子の扱いに慣れてるからだよ、きっとそう…
あれ、でもそれならなんで殺さないんだろ…えっ、なんで!?えっ!?もしかして試されてる!?)」
シオンの方でも内心動揺しまくっていた
あれからしばらくしてナイフはシオンのオンバーンに取ってもらい再び寝床に着くが、先程よりもお互い端っこで横になる
二人の間に再び沈黙が続く
「……カラスバさん」
「な、なんや」
「エイセツシティ行った時に全部、話します。
今日のことも、私の事…何もかも全部」
「…お前殺し屋向いとらんやろ」
「多分向いてないです。情がある人間に殺し屋なんて元々難しいです」
「……はぁ、変な奴やな」
カラスバは小さく呟き、目を閉じた