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1日遅れのハロウィン
ハロウィンと言えば、小さな子供達が仮装をして近所の家にお菓子を強請りに行く。そういうイメージが強く、実際それがメインイベントである。
ただ、ハロウィンに限らず、死者が現世に降りてくるなどの意味合いがある祭り事には、必ず そういう者 の動きも活発になるものだ。それに加え、幽霊でもないモンスター達も動き出す事が大半なのである。
十月三十一日、駆け出しヴァンパイアハンターである伊波ライは、数十年前から毎年ハロウィンに目を覚ます、最重要指名手配犯として有名な吸血鬼の根城を突き止めた。
諸事情で多額の借金を背負っている伊波は、一攫千金のチャンスだと意気揚々とその城に単身で乗り込んだのだ。応援を呼んでもいいが、賞金がちょうど借金と同じ額の為、分け合う訳にはいかず。全て自分の物にしてしまう事に、心の中で同僚に謝った。
「おじゃましま~す……。」
そう小声で呟きながら、窓から侵入する。そろりそろりと、片足をつけた瞬間ピシュンと矢が飛んだ。あまりの殺意の高さに息が止まる。
伊波は、恐怖心を抱くも 引く理由にはいかず、冷や汗を垂らしながら最新の注意を払って、廊下に降り立った。
そこから、一歩あるけばすぐトラップに引っかかり、殺す気しか感じない罠が作動する。頭上から槍が落ちてきたり、床が開いたり、鉄球が転がってきたりなど割と王道な罠が張り巡され、中にはタライが降ってくるなんてフザケた物もあった。全部 間一髪で回避して、精神をすり減らして、もう伊波はヘトヘトだった。
フラついた足が運悪くトラップを作動させる、身構える間もなく天井からボーラが素早く降ってきて、伊波の身体に巻き付き、体制を崩した。その後、白い濃い霧が辺りに充満して、だんだんと瞼が重くなる。この先に起きる事を想像するまもなく睡魔に襲われついぞ眠りについた。
目が覚めると、ぼんやりとした月明かりが部屋を照らしていた。意識がハッキリしてきた頃、伊波は勢い良く起き上がって、自身の手の平を見つめ自分が生きている事に驚愕していた。目が覚めても、吸血鬼に血を吸われながらだと思っていたから。まだ自分は生きているとホッとしたのも束の間、手の平から手首に視線を向けると袖にフリルがついていた。袖から腕を見て、立ち上がって全身を見れば、先程着ていた服ではなく完全女物の黒ロリータ服を着ていたのだ。
「うぇっ…なにこれぇ?」
ベッドの横にある姿見の前に立って、伊波は顔を顰める。可愛らしい顔をしていると評判の伊波だが、女装の趣味は全くない。寝ている間に着替えさせられたよだろう。きっと犯人であるこの家の吸血鬼はロクな奴じゃないと悟り、身震いをする。ご丁寧に、ウィッグまでつけられて、外そうにも どんだけ引っ張っても分け目すら見つからなかった。
伊波はうざったそうに、両手で造毛のツインテールを握りしめる。今は何事よりも この格好の文句が止まらない。
そんな中、ガチャリと部屋の扉が開いた。伊波はびくりと跳ねて、扉の先に立つ人物を凝視した。
「あれ、もう起きとるやん。こんばんは。」
立っていたのは、無機質な声を震わす白髪の青年だった。いや、角や牙が生えている事からきっと彼がこの城に住む吸血鬼なのだろう。
「……お前、何のつもり?」
「なにが?」
「この服! 殺さずこんな変な服着せて部屋に閉じ込めるとか、何が目的なんだよ!」
声を荒げて詰め寄っても、彼は眉一つ動かさず、ああそんな事かと息を吐いた。
「前の服は、武器隠されてたら嫌やからさ。着替えさせてもらったよ。」
「だからって何で女物っ?」
「え…やって、キミ女の子やろ?」
「オレは男だよッ!!」
そう言えば 、吸血鬼は驚いて目を見開き、え〜っと気の抜けた声をあげた。
伊波は怒りで歯をギリギリと噛み締める。
「……僕から見れば、人間が男か女か分からんのよね。」
「んな訳っ……」
開き直ったかのように両手を広げる彼に言い返そうとしたが、吸血鬼からの視点じゃ 人間はただの食料にしか見えていないのだろう。オレ達が食べる牛や豚も 肉になれば 性別は分からない、そういう物かと納得して 渋々口を閉じる。
「まぁ、ゴメン。服は僕のとそれしか無いから。僕の服は僕のやし。」
そう自身の胸元に手を置いて、軽く微笑む。その姿に内心舌打ちをして、ドカリとベッドに腰を下ろし 足を組んだ。
「じゃ、閉じ込めた理由は?」
「ああ、それは…」
ことり、ことりと足音を鳴らして此方に近づく。
「僕、あんまり外に出ないんよね。」
「……話が見えない。」
「まぁ、つまり…」
怪訝そうな顔をしてみせると、彼は軽やかに伊波の隣に座った。その後、グイと距離を縮める。反射的に伊波は背を仰け反らせた。
「ずっと欲しかったんよね、人間血液パック。」
「……は?」
「死なないギリギリまで血吸って、世話してやればさぁ、無限に血が飲めるやんね?」
人間って勝手に回復するし。これ知り合いに教えて貰った最強の方法。
なんて薄く頬をピンクにして、ニタリと笑う。何いってんだコイツ。と伊波は身体は固まったまま、何とか思考を動かす。
「……倫理観なさ過ぎ、流石吸血鬼。考える事がグロい。」
「褒めてくれてありがと。」
「………。」
「とにかく、お前今日からぼくのペットね。名前どうしよかな…ポチ?」
「伊波ライって名前があんだけど……。」
「じゃ、ライ。僕はカゲツ、よろしく。」
それから、オレは憎き吸血鬼のペットに成り下がった。
コメント
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第15話、読み終えました! 罠てんこもりのお城に単身突入→女装ペットにされるのギャップがたまらんね…。笑「人間血液パックって無限に飲めるって発想、こわいのに顔真っ直ぐピンクにしてニタるって言うところ…吸血鬼感、ちゃんとらしさ出てて好きだわ🥀”。カゲツの「え?君女の子やろ?」からの男やで!の間合い詰められてるの、ちょっと可愛くて思わずほっこり🖤 ペット「ペット落ちたライ」で閉じ込められるラストと言うところでってか、この先…次どうなんだろ?👀静かにしと読みます待ってるよ