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第十二章 ロイヤル患者 宮舘
翔太💙「ダメです」
薔薇の匂いが立ち込める一室。
ナースコールで呼び出され、訪れた特別室。
〝粗相のないようにね♡雪うさぎちゃん〟
初めてこの部屋を訪れた日のことを、思い出す。
深澤理事長は楽しそうに笑っていた。
〝上客なんだから口答えしちゃダメよ〟
ラウール師長も、珍しく真面目な顔でそう言った。
部屋の前で、ゴクリと唾を飲み込み。ふっと短く息を吐いた。
ドアの横にあるプレートを見た。
――325号室 宮舘。
自分の誕生日に合わせて部屋番号まで変えさせたらしい。
……セレブの考えることは理解不能だ。
この病院の大口出資者。
つまり――
絶対に怒らせてはいけない患者。
翔太💙「ダメです!絶対にダメです」
そんなこと――知ったことか。もう一度言う。
目の前にはベッドの上で優雅に紅茶を飲んでいる男。
いかにも高そうな刺繍が織り込まれたブランケットを肩から掛けている。
ヘッドボードには
〝主治医 阿部〟
の文字。
涼太❤️「いいだろう?暇なんだ。外で散歩くらい」
翔太💙「阿部先生に聞かないと分かりません」
優雅に手で払う仕草。
涼太❤️「あいつはダメだ。頭が硬い」
翔太💙「とにかく、ダメです」
そのとき。
ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。
翔太💙「大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄り、背中をさする。
ゴホッ――
喉の奥から、絡むような音。
次の瞬間、
ゴホッ、ゴホッ……ッ
呼吸が乱れる。
一瞬、息が詰まったみたいに肩が揺れた。
一体、なんの病気なんだろう。
特別室の患者の情報は医者のみ閲覧可能。
担当看護師であっても詳細は知らされていない。
涼太❤️「……あまり時間がないんだ」
小さく吐いた息が、どこか冷たく聞こえた。
涼太❤️「手を握ってくれないか」
翔太💙「はい」
手を握る。思ったより温かい――けど、指先だけが、少し冷たかった。
翔太💙「少しは楽になりました?」
翔太💙「僕に出来ることがあればいつでも、何でも言ってください」
涼太❤️「じゃあ……」
伸びてきた手。頬を撫でられた。
翔太💙「えっ……」
涼太❤️「……やっぱり」
一瞬だけ、目を細める。
涼太❤️「その瞳――」
指先が、そっと目元に触れる。
涼太❤️「……綺麗な青だね」
翔太💙「……え?」
涼太❤️「いや」
すぐに微笑む。
涼太❤️「独り言だ」
涼太❤️「可愛い反応するね君は」
涼太❤️「震えてる」
指先が、頬から顎へ滑る。そっと持ち上げられる。逃げようとしたのに、力が入らない。
涼太❤️「大丈夫」
低く、優しい声。
涼太❤️「何もしないよ」
――嘘だ。
分かっているのに。目が逸らせない。逃げなきゃいけないのに、身体が、動かなかった。
――知らないはずなのに、
この顔が、この声が……
どこか、懐かしかった。
ゆっくりと距離が近づく。息が触れる。
翔太💙「……っ」
次の瞬間、唇が重なった。
ほんの一瞬。触れるだけの、軽いキス。
なのに、心臓が跳ねる。
離れたあとも、距離が近いまま。心臓の音だけが、やけに大きく響いていた。
涼太❤️「ね?」
微笑む。
涼太❤️「できること、ひとつもらった」
翔太💙「……え……」
そのまま、少しだけ目を細める。
涼太❤️「……名前、なんだっけ」
翔太💙「え?」
一瞬だけ、間。
涼太❤️「いや、いい」
首を振る。
涼太❤️「似てる気がして」
小さく笑う。
涼太❤️「昔、どこかで」
翔太💙「……?」
涼太❤️「まぁいい……」
ほんの一瞬だけ、視線が離れなかった。
涼太❤️「ちゃんとできたね」
涼太❤️「目を逸らさずにいられた」
不思議だった。
この瞳で見つめられると、
自然と吸い込まれ、引き込まれる。
――どこかで、見た気がした。
離れたあとも、距離が近いまま。
逃げる前に、
腕を引かれる。
そのまま、胸元に引き寄せられた。
首筋に息がかかる。
思わず顔を横にすると首に温かい唇が触れた。
涼太❤️「……消えたね」
親指で首筋をなぞり、
鎖骨に添えられた指が
印のあった場所をなぞる。
翔太💙「……っ……」
涼太❤️「じゃあ、もう一度つけないと」
涼太❤️「忘れられたら困る……ちゃんと患者さんの目を見なさい――しょうた」
翔太💙「えっ……おれ名前……ンンンッ」
舌が鎖骨をなぞる。
次の瞬間、
強く吸い付かれた。
身体がびくんと跳ねた。
なぜ抗えないのか。
身体が動くことを忘れたみたいに、
されるがまま流された。
涼太❤️「ねぇ?」
涼太❤️「この続き知りたくない?」
翔太💙「えっ……」
涼太❤️「君の余裕のない……その顔好きだな」
そのとき――
コン。
ドアが開いた。
白衣が視界に入る。
蓮🖤「……何してる」
腰に添えられた宮舘さんの腕が、強く俺を引き寄せた。
離す気がないみたいに。
押し返そうとした手は、まだ繋いだままだった――
蓮🖤「翔太!オマエいい加減にしろ」
低い声。
振り向く。
翔太💙「先生……」
目黒は一瞬だけ室内を見渡した。
薔薇の花。
高級そうな家具。
そして――
ベッドの上の男。
涼太❤️「おや」
ゆっくりと笑う。
涼太❤️「黒豹先生」
ズカズカと足音。
完全に不機嫌な目黒先生。
腕を掴まれ、ベッドから引き離される。
ぐいっと引かれた体は、
いつの間にか目黒先生の背中の後ろに隠されていた。
蓮🖤「昼間っから何をしている?」
鋭い視線。
蓮🖤「阿部だけじゃ足りないか?」
翔太💙「えっ」
蓮🖤「彼方此方に種付けしているようだが?」
翔太💙「酷いです!」
翔太💙「だって、老い先短いって……」
蓮🖤「はぁ……」
深いため息。
そして一言。
蓮🖤「コイツはただの痔だ」
涼太❤️「オマエ💢」
翔太💙「はい?」
頭が一瞬止まる。
翔太💙「……痔?」
涼太❤️「言うな!」
蓮🖤「座りすぎだ」
涼太❤️「言うなと言ってるだろう!」
翔太はぽかんとした。
翔太💙「……えっと、でも主治医、阿部先生って」
どうやらカモフラージュらしい。
まだ手術を控えている状況で、
〝大人しくしろ〟
――たぶん、
それが主治医である目黒先生の指示なんだろう。
翔太💙「じゃあ、老い先短くないんですか?」
涼太❤️「今ので寿命が縮まった」
蓮🖤「ほら、元気だ」
翔太💙「お尻お大事に♡」
翔太💙「……あっ、お痔愛ください……なんちゃって」
翔太💙「……すいません」
満面の笑みで手を振ると、
宮舘さんは頭を抱えた。
隣では、目黒先生が肩を震わせていた。
涼太❤️「……気に入った」
涼太❤️「術後の処置は君に任せよう」
翔太💙「えっ」
涼太❤️「楽しみができた」
少し笑う。
涼太❤️「黒豹先生」
涼太❤️「この子、私がもらってもいいかな?」
次に頭を抱えたのは目黒先生だった。
蓮は呆れた顔で、
腕時計に視線を落とした。
蓮🖤「……時間だ」
さっきまでの空気が消える。
黒い瞳が俺を見る。
その目は、さっきまでの黒豹じゃなかった。
外科医の目だった。
蓮🖤「渡辺」
翔太💙「はい」
蓮🖤「さっきは言いすぎた」
翔太💙「いえ……」
蓮🖤「手術だ」
翔太💙「はいっ」
背を向けた瞬間。
呼び止めるように、声が落ちた。
涼太❤️「……運命って、信じる?」
ほんの少しだけ、目を細める。
涼太❤️「俺はね――今、信じてる」
特別室の窓の外。
いつのまにか、うす雲が空いっぱいに広がっていた。
白く滲んだ景色が、胸の奥まで曇らせる。
気づいたら、目の前の腕を掴んでいた。
蓮 🖤「どうした?」
翔太💙「いえ、すいません……」
彼の中に、
自分の知らない何かがある気がした。
言いようのない不安だけが、胸に残る。
扉に手をかけ軽く会釈すると背を向け歩き出す。
涼太❤️「欲しいものは――向こうからやってくる」
涼太❤️「やっと会えたね」
――しょうた。
耳の奥に、残っている。
確かに、そう呼ばれた気がした。
コメント
6件

ちょっと!!!なんてこと!!! まさかすぎますwwww
お痔愛くださいで爆笑しました🤣🤣🤣🤣負けてないぞ翔太!可愛いぞ翔太!それにしても種付けって🫣

名前を知っている・・ってことは昔からの知り合いで、何らかの繋がりがあるんだろうな・・・ゆり組さんは❤️💙🌹