部屋に連れ帰り、応急手当を終えたあと、
私はお湯を沸かしていた。
彼はソファの端に正座して、
辺りをきょろきょろと見回している。
「……えっと、水道が蛇口から出るのは……便利ですね。
火も……これは“でんき”というものですか?」
「……ほんとにどこの人?」
「僕は、忍術学園の六年ろ組の善法寺伊作と申します。
たぶん……何かの術か不運で、
この時代に来てしまったのだと思います」
ぺこりと頭を下げる彼に、私は言葉を失った。
忍術学園? 保健委員? 不運で来た??
ツッコミどころが多すぎて混乱してると、
彼がふと私の手に目を留めた。
「……手、冷たいですね。
お仕事、遅くまでされていたのですか?」
「……あぁ、うん。
まぁ、帰ったら終わってない仕事が待ってる感じ」
「徹夜ですか? 目の下が黒く……それに、肌も……」
「……ちょっとやめて。そんなマジマジと見ないでくれる?」
「えっ!わっ、すみませんっ!!…でも…、ええと…」
「ちゃんと、休まなずに、
あなたが倒れてしまうほうが、ずっと怖い」
冗談めかして言ったけど、伊作は真剣な表情で続けた。
静かな声だった。
でも、心にずしんと響いた。
誰かにこんなふうに心配されたのは、いつぶりだろうか。