テラーノベル
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「若井、ちょっといい?」
部署が同じの大森先輩に声をかけられ、デスクから身を遠ざけ、後ろに振り向く。
「はい?どうかしました?」そこには資料を持った大森先輩が立っていた。
「この資料さ、今日までに直しといてって言ったよね、昨日直したって聞いたんだけど、ひとつも直ってないじゃん。昨日何してたの、」
「え?」
一瞬ヒヤッとしたが、気を取り直して昨日を振り返った。
昨日は確か、ちゃんと資料確認と訂正、そして資料作成までしたはず…。
確認のためパソコンの端っこにつけている予定メモを見た。
やらかした。
なんてこった…1番大事な資料の訂正をするのを忘れて大森先輩に渡してしまっていたらしい。
急いで立ち上がり、謝罪をする。
「すみません!失念しておりました。今から取り掛かります。」
「はぁ、いや、いいよ、僕がやっとく。とりあえず新しい資料作っといて、課長に渡す分。」
大きなため息をついた大森先輩の顔はクマが酷く、疲れ切っている様子だった。
「……はい…すみません。」
「…正直さ、何回もされると困るんだよね、何のためのメモなの?資料の訂正ミスとか、僕が課長に怒られちゃうからさ、できるだけやめて欲しいんだよね、」
とめどなく溢れ出るお咎めの言葉。ごもっともだと思いつつも、なんだか腑に落ちない。
「はい…すみませんでした。次回からはもっと気を付けます。本当に申し訳ございません」
(俺だって頑張ってるのになぁ、)
「うん。じゃあ、資料よろしくね 」
「はい…」
「あぁ、あとこれ」
そう言って大森先輩は俺のデスクにコトっと栄養ドリンクを2本置いた。
「…っえ?」
珍しい行動に驚きを隠せずに居ると、
「んふふッ…そんな驚かないでよ、飲みなね、キツいと思うけど、頑張って欲しいし、じゃあ、また、飲み会で」
「…!!あっ、ありがとうございます!」
やる気と共に、今日は夜、飲み会であるということを思い出した。内心行きたくないが、また、飲み会で、なぁんて言われちゃったら行くしかない。
なんだ、大森先輩って案外優しいいんじゃん。デスクに置かれた栄養ドリンクの蓋を開け、ごくごくと胃に流し入れてから午後、もうひと踏ん張り頑張ろう!と、気合いを入れた。
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