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〜結奈side〜
私は今、絵に描いたようなあほ面を浮かべる男子と対峙している。
その名も野上蓮、遥の想い人。
「そのままの意味。あたし遥のこと凄い大切に思ってるから、遥のこと苦しませたくないの」
ほんとに、言葉の通り。
理由なんか知らなくて良い。
「…僕が小野を好きになったら、小野が苦しむのか?」
「きっと野上が想像するより、ね」
彼女が抱える苦しみは、私たちの想像を容易く上回るだろう。
けれど彼女は、そんな姿をさらけ出すのを嫌う。
それだけでも彼女を蝕むものは多いのに、今以上の悩みを与えたくないのだ。
「…ごめんそれだけ。」
これ以上だんまりを決め込まれても遥に迷惑を掛けるから、自らが作り出した沈黙を破る。
彼は、何も言わない。
「ごめん遥、長い時間またせちゃった、大丈夫?」
遥は図書室の扉に背を預けて空虚を見つめていた。
「…ううん、全然。野上くんは?」
「あ…もう少しいるって」
「そっか、じゃあ、帰ろっか」
遥はにこりと、私の好きな笑みを浮かべる。
「…結奈」
「ん?」
「…怒らないで聞いて欲しいんだけど、私、結奈にした約束、破るかもしれない」
「あたしにした約束って…あの時言ってた?」
「うん。」
「…なに?」
「好きな人は、作らないって約束」