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「ねぇ、翔太。俺ってどんな人?」
「なに急に。自分探し?」
気を使ってくれているのかと感心したのもつかの間。彼の本気で分かっていない間抜けな顔に時谷は思わず笑ってしまった。
プロ入り後の皆の記憶はないものの、きっと森下は変わらないままなんだろうな、という
謎の安心感があった。
それだけで時谷は十分やっていける。
「記憶なくす前の自分がどんなやったか気になってんねやろ?」
「あ、テルさん…」
トレーを片手に前に俺の前に座った佐藤輝明に時谷は少し驚く。
ただすぐに頷いて見せた。
「…調べればきっと沢山出てくるんでしょうけどなんか勇気が出やんくて…笑」
「トキはね、太陽みたいやったよ。」
「太陽?俺が、?」
もっと性格や言動について教えて貰えるのかと思っていた為か単語に戸惑ってしまう。
ただ森下は変わらない様子でご飯を口に頬張りながら続けた。
「自分をちゃんと持っててかっこよかった。ね、テルさん。」
話を振られた佐藤もトマトを口に運びながら頷いた。
「まぁ、知らんでいいと思うけど。お前の性格的に昔の自分に合わせようとしそーやし。」
図星な指摘に思わず笑ってしまう。
過去の自分がどんな人だったのかを知ってしまえば無意識に取り戻そうとしてしまう。
怖さもあれば不安もある。ただ少し好奇心もあるのが事実。
「トキは知りたいの?なくした記憶。」
森下の核心を着く一言に時谷は何も返せずにいた。
ただ素直に知りたいと頷けないうちはまだ何も知らないこのままでただ無邪気に野球が出来ればいいのだろうと感じた。
「今はいいや、十分楽しいし。」
俺の言葉に森下だけでなく佐藤も笑って今日もまたたわいない会話が始まる。
思い出す気配のない記憶の話は寝る直前にはもう時谷の頭からは消えていた。