TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

現実では感じることのできない、番人のぬくもり。そして自分を魅了する香りを、心ゆくまで堪能する。

頑張ったご褒美なのか、抱きしめた敦士の腕を振り解くことなく、されるがままでいてくれた優しい番人の姿は、まるで気高く美しい天使のように見えた。


「番人さま……」

「どうした?」

「僕の精は、まだ必要ないですよね。この間、差し上げたばかりですし」


俯かせた顔をそのままに、たどたどしく話しかける敦士の様子を見て、番人は小首を傾げた。


「確かに余裕はある」

「そのことはわかっているのですが……番人さまを抱きたいって言ったら、抱くことは可能でしょうか?」


喋りながら戦慄く躰を隠すように、番人を抱きしめる二の腕に力が入った。


「それは――」

「こんな崖の上で、何を言ってるんだって話ですよね」

「敦士……」

「ここは夢の中だけど、夢じゃないっていう感覚がある中で、番人さまを抱くことができる、唯一無二の場所ですよね。だからこそ番人さまを抱きたいです」


告げながら顔を上げる敦士の眼差しに、番人は息を飲む。あからさまに困惑していることがわかったが、自分の想いを止めることはどうしてもできなかった。


「番人さまが欲しいです。貴方のすべてが欲しい……お願いします。お願ぃ」


好きという想いを込めて告げた、切なげな声を合図にしたように、崖下から吹き上げていた風がピタリと止む。すると辺り一面、濃い霧が漂いはじめ、番人たちの姿を隠すように包み込んだ。


「男の味を知って、欲情にまかせた言葉か」

「違います。そんなものじゃない!」


(鬱蒼と漂う霧が、番人さまの心も一緒に覆い隠すように感じてしまうのは、どこかつらそうな顔をしているせいなのかな)


「それとも創造主の手で作られたこの見た目を、おまえは好きになったんじゃないのか?」

「確かに惹かれました。中性的でとても綺麗なお姿ですので」


敦士の中にある、素直な気持ちを告げた途端に、首をもたげた番人の瞼が伏せられる。


「だけどその見た目よりも、お人柄に僕の心が強く惹かれました」


一旦区切った言葉のあとに告げられたセリフを聞くなり、番人の瞼が大きく見開き、ゆっくりと顔を上げた。信じられないものを見る視線を受けながら、敦士はハッキリと口を開く。


「職場でやる気を失った僕を、番人さまは叱ったり宥めすかしたりしながら、自信を与えてくださいました。お蔭で、どんなことでもやってのける、勇気を持つことができたんです。さっきだってそう。自力で崖を登ってこれたのも、貴方の励ましがあったからです」

「…………」

「僕は番人さまが好きです! 包み込むようなあたたかさをもった、貴方が大好きです」


敦士の視線の先にいる番人の表情は、みるみるうちに悲しげなものに変わった。


「わからない。俺はどうすればいいんだ」


いつも耳にする、自信に満ち溢れたものとは違い、その声は震えて違う人のものに思えるくらいだった。


「番人さま?」

「今までそんなふうに、好意をぶつけられたことはなかった。むしろ、嫌悪する気持ちをぶつけられることのほうが多くてな。だからおまえの気持ちに、どうやって応えたらいいのかわからない」


自身に起こる混乱に、躰を打ち震わせる番人を、敦士はさらに力を入れて抱きしめた。


「番人さまから見て、僕は少しでも魅力的な男に映るでしょうか?」

「……そうだな。頼りないところはあるが、それを補おうと一生懸命に頑張っているところが、そうなのかもしれない」


腕の中で告げられた声は、くぐもって聞こえてきたが、ちょっとだけ笑った感じも伝わった。


「そのお言葉だけで、僕は十分でございます。番人さま……」


敦士は抱きしめていた片手を、番人の顎にに添える。そのまま唇を開かせ、覆いかぶさるように口づけた。

歪んだ関係~夢で逢えたら~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚