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まさか、シューに好きな人がいたなんて。
1番近くにいたのに、気づかなかったな。
っていうのは表向きの感情だった。
俺は、気づかないフリをしていた。
俺の事を真っ直ぐ見つめるあの綺麗な瞳に、
少し、熱がこもっているような気がしていたことを。
でも、気づいてしまうのが怖かった。
俺が誰かを好きになれば、
好きになった人も、俺自身も全て、
また失ってしまう。
これ以上、恋愛に手をつけたくない。
なるべく、恋愛という存在を、
自分の中のずっと奥深くに閉じ込めておきたい。
例え俺の好きな人が、
俺の事を好きだったとしても。
俺には、人1人を守る力は無い。
自分のことばっかりで、人のことを好きでいる資格なんてない。
他の人には取られたくないのに、
自分では彼女を掴み取る事が出来ない。
こんなわがままな自分が嫌になるな。
今の関係が、ずっと続いていればいい。
それじゃ、ダメですか。
「す、好きな人、シューいたんだなぁー」
「うん」
「し、知らなかったよ。なんでそういうこと先に言わなかったんだよー」
「だって」
「言ってくれれば相談とか乗ったのになー」
「…」
まぁそりゃ、好きな人に恋愛相談はしないよな。
「い、いつから?」
「…結構前。」
「なかなかアバウトだなーwなんで、その人の事好きになったの?」
「…いつもそばに居てくれて、笑わせてくれて、優しくて、無愛想な私を見捨てないでいてくれるとこ…」
「大好きやんけw」
「…うん。」
俺も、好きだなぁ。
不器用な癖に頑張っちゃうとことか、
たまに甘えてくるとことか、
冷たい態度とるくせに、俺が話しかけないとめっちゃ泣きそうな顔になるとことか。
シューの全部がいじらしくて、愛おしくて
手離したくないなぁ。
だけど、それと同じくらい傷つけたくもないんだよなぁ。
「そ、その人とはどu」
バサッ
俺の質問を遮るように、彼女が俺の背中に抱きついてきた。
「えっと…」
「レン」
「な、なに。」
「…」
これ、言われるかな。
「す、好き、」
俺が欲しくてたまらなかった2文字。
人を傷つけることのできる言葉。
人を愛する言葉。
人を騙すことのできる言葉。
誰かを、自分のものにするための言葉。
「な、なぁ。」
「…な、に」
「お、おれさ…ひ、ひとのこと」
「好きになるのが怖いんでしょ。」
なんだ、わかってるのか。
なら、なんで。
「わ、私、レンなら傷つけられてもいいよ。」
「え?」
「て、てかむしろ、私も傷つけるかもしれない。」
「で、でも」
「傷つけあって、支え合っていけば、大丈夫だよ。だって、幼馴染だよ。今更、互いに恐れるものなんてないでしょ。」
そうだ。
俺が欲しかったのは、こういうものだ。
こういう愛のカタチが、ただ欲しかったんだ。
何も隠さず、お互いに恐れなくていい。
自分のコンプレックスさえ、
受入れてくれる愛。
そういうのが、欲しかったんだ。
「レン、泣いてるw」
「うるせえ」
「私、レンのこと大事にするって誓うよ。だから、レンのそばにいてもいいかな。」
「…もちろん。俺も、シューのそばにいてもいい?」
「もちろんw」
「て、てかいつまで抱きついてんだー」
「…」
「シュー?」
彼女の方を見てみれば、彼女はもう、夢の世界へと落ちていた。