どうも皆様、サカナです
ループするジェヴィンさんです
鬱になりなさい、ジェヴィン
そんな気持ちで書いております
今日以降から無浮上です多分
⚠️最初だけキャラ崩壊、暴力的な描写含む⚠️
「あぁ、今日も素晴らしく良い天気ですね。おはようございます、Mr.サン」
「おはようジェヴィン。今日は雲が少なくて、いつもより爽快な気分さ!散歩ならツリーのところにも寄るといいよ。さっき、ちびっこたちが楽しい歌を歌っていたからね」
日課である散歩の道中、ジェヴィンはMr.サンと話すことが多かった。
ひまわりのような明るい笑顔を向けてくれる彼は、心まで温かい気持ちにしてくれる。
「素敵な情報ですね。でも、貴方の言うちびっこってオレンさんたちのことでしょう?彼らはもう大人ですよ」
「あははっ!そういえばそうだったね。いやぁ、長生きしているとみーんな若く見えちゃって!僕にとっては、かわいいちびっこも同然なんだ」
「お気持ちはわかりますよ。貴方ほどではありませんが、私もスカイたちを見守ってきましたから」
ジェヴィンたちにとってのMr.サンは、子供の頃から側にいた親戚のような存在だ。
自分たちの何倍もの時を生き、今日もこうして世界を明るく照らす。
その優しい光がある限り、夜空には月が輝き、世界は彩られている。
「ふふふ、なんだかおじいちゃんになったような気分だ。それじゃあジェヴィン、散歩を楽しんでおいで。車と不審者には気をつけてね」
何度言ったとしても、彼がジェヴィンを大人として見ることはないのだろう。
けれど、きちんと甘えられる人がいるのは素晴らしいことだ。
Mr.サンと別れて十数分後、今度はMr.ツリーの元へやってきた。
Mr.サンの言っていた通り、そこではMr.ツリーを囲ってオレンやピンキー、ヴィネリア、ウェンダ、ガーノルド、クルーカー、ファン兄弟まで、歌を歌ったり、聞き入ったり、或いは作業なんかをしていたり。
巡回中だったであろうタナーも、得意の口笛を吹いて控えめに音を添えていた。
自然と笑みが漏れて、ジェヴィンは邪魔しないように足跡を消しながら近づき、低く伸びのある声で歌い始める。
「Hello! Would you like to have some FUN with us right now?」
クルーカーとガーノルドが作ったというMr.ファンコンピューターが合成音声を響かせ、にこにこ笑顔の画面で歌う。
タナーの口笛が混ざりながら、オレンやファンボットのビートが気持ち良いくらい綺麗にハマっていた。
そこにピンキーとジェヴィンのボーカルが音に幅を持たせ、Mr.ツリーのオルガンに似た声が重圧感を出す。
時々ウェンダが「Hey!」と声を飛ばしたり、作業をしながらクルーカーがシンバルを鳴らしたり、今いる皆が思い思いに音楽を作る。
一部いないメンバーもいるけれど、ジェヴィンはこの瞬間が大好きだった。
笑って歌い合い、心を一つにする瞬間。
この平穏がずっと続くのだろうと疑わなかった。
変わってしまったのは、突然のこと。
「…今回も失敗、ですか」
幾度目かのループの終わりを告げるように、倒れ伏し血に塗れたジェヴィンは呟いた。
迫ってくるサイモンに気が付かなかったこと。これが大きな要因だ。
グレイたちは上手く逃げてくれただろうか。
自分はもうこの世界で彼らを導くことはできないが、グレイならばきっと上手くやってくれる。
自分がいなくなった後、世界が続くのかは知らないけれど。
「…そんなにがっついては、骨を詰まらせますよ…げほっ…」
ぐちゃぐちゃと音を立てて自身に齧り付くサイモンに力無くそう言って、真っ赤なまま変えることのできなかった空をぼんやりと眺めた。
一つ目の太陽が世界を見回している。
「つぎ、こそは…」
雲に見下ろされながら、ジェヴィンは静かに目を閉じた。
「はぁ…」
ぼんやりと意識が浮上して、目を覚ました。
カーテンの隙間から覗く朝日が眩しい。
「今回こそ、成功しなくては…」
ベッドから起き上がり、ジェヴィンは身体の調子を確かめ始めた。
前回のループでは下半身を貪られてしまったため、少々足の感覚が不自然に感じてしまう。
薄い毛布を丁寧に畳みながら、その場で足踏みをしたり足を持ち上げたり。
ループ前は身体を鍛えていなかったので、I字バランスはできなかった。
「さて、まずはいつ頃かを調べなくてはなりませんね」
世界はおかしくなる。
そのことに気がついたのは、ジェヴィンにとっては何年も前のこと。
世界にとっては、いつかのこと。
空は赤く、雲に見下ろされ、日常が非日常に変わり、少年少女らが狂い、たくさんの命が失われる。
そんな地獄になるタイミングは、ループをいくら重ねてもわからなかった。
命が芽吹く春に、日に焼かれる夏に、豊かで恵まれた秋に、凍てつくような冬に。
大雪、晴天、雷雨、暴風、どんな天気の時も。
月のある夜や、もちろん昼にだって。
タイミングはわからない。
ふとした瞬間、まるでスイッチを押したように切り替わってしまう。
「なぜ巻き戻る日もランダムなのでしょうか…神の御意向は、やはり私にはわかりかねますね…」
自室から本堂へ行くと、そこには大きく美しいステンドグラスがいつも通り光を通していた。
まさに神様に相応しい場所だ。
「神よ、どうかこの世界をお救いください…」
もう何度ループしたか覚えていないけれど。
それでもジェヴィンは、救いを求めて祈るのだ。
皆が酷い目に遭うのは、きっと自分の信仰心や努力が足りないから。
そうだと思わなければ、絶望感に打ちひしがれ、唯一の支えが無くなってしまう。
自分のせい。
自分のせいで皆が日常を失うのだ。
何かどうしようもない超常現象でも、神がお与えする自分への罰でもない、ただの試練。
超えられない試練を、神が用意するはずがないのだから。
いつか、きっと終わるに決まっている。
お祈りを済ませて外に出た。
今日はまだ素晴らしく晴れた空のままである。
日課だった散歩ついでに、少し皆の顔を見せて欲しい。
死に顔ばかり見てきたからか、笑顔で歌っている姿を思い出せなくなりそうだ。
「おはようございます」
Mr.ツリーの元でいつものように集まる皆に向けて挨拶をする。
振り返った彼らの顔は美しく、悍ましい血なんて一滴たりともついていない。
「おはようジェヴィンさん。ねえ、ラディくんを見てない?昨日、あの事があってから姿を見ていないの…」
「あの事…あぁ、オワックスさんとのトラブルですか」
「そうよ、家に行っても出てくれないの。思い悩んでいるんじゃないかって、心配なのよ…」
ヴィネリアは頰に手を当てて、修道女のように淑やかな仕草でそう言った。
なんとなく把握できたが、今回はオワックスが既に殴られた後らしい。
「しばらくは一人にしておきましょう。きっと思い悩んでいるに違いありませんが、それを乗り越えた時、彼は強くなれるはずですから」
「…ジェヴィンさんがそう言うなら、仕方ないわね。タナーさんも慌てる必要はないと言っていたし」
困ったように眉を下げながらも、ヴィネリアは植物の髪を揺らして頷く。
ループしていても、いくつかの大きな出来事は固定となっている。
例えば、オレンとピンキーが恋人になる、Mr.ファンコンピューターとファンボットが出来上がる、などだ。
そしてそのうちの一つが、ラディにオワックスが殴られ、 精神病を患うこと。
オワックスは有能な人物なのでハンマー事件を無かったことにしたいのだが、自分だけではどうにもできず、 固定の事件とする他なかった。
「そんなに気にしなくたって、どーせ元気にしてるよヴィネリア」
「そうそう、またふらーっと戻ってくるって!」
「この機会に力加減とか覚えてもらえばいいよ」
不安そうにするヴィネリアへ口々にかけられる言葉は、ジェヴィンにとっては聞き覚えがある。
本の内容が変わらないのと同じように、ある地点からのループで彼らの言葉は変わらない。
早く終わらせて、新しい言葉を聞きたかった。
「…それでは、私はそろそろ失礼致します」
「歌っていかないのかい?」
「ええ、用事もありますから、今日のところは遠慮させていただきます」
「そうかぁ、それなら仕方ない。頑張ってね、ジェヴィン」
「ありがとうございます、ではまた」
オワックスが殴られた直後ということは、まだ普通の病院で治療を受けているだろう。
いつ非日常になるかはわからないが、明確な規定は一つだけある。
“キャラクターが完成すること”
ループが始まった1周目、この時と同じ条件の人物が揃わなければ、基本的に異常事態にはなり得ない。
本当によくできたシナリオだ。
オワックスが精神病院に移送され、退院するまでの期間。
これがジェヴィンに残された時間だろう。
できることをしなくてはならない。
遠くから銃声が聞こえた。
3日前まではまだタナーは生きていたのに。
見ていられないと言って外に飛び出し、きっと今の銃声と共に彼の命は散っている。
「……私は、無力ですね」
訂正しよう、銃声が聞こえた気がした。
「え?」
「何度も、何度も、何度も何度も何度も…何度も繰り返した…その度に私は貴方たちを死なせ、殺させ、苦しませて…無能な私のせいで、神の試練を乗り越えられない私のせいで、弱くてだらしのない私のせいで、皆さんのことを巻き込んで、私、私が、もっと」
「ジェヴィンさん!」
「っ…」
「突然どうしたんですか?らしくないですよ…」
「…すみません、取り乱しました。やり直しましょう」
「…え?」
「大丈夫です、次こそは救いますから」
突然何かを呟き出したかと思えば、ジェ ヴィンはふんわりと笑って斧を取り出す。
グレイにはその顔が、以前のジェヴィンが浮かべる笑顔とそっくりに見えた。
いつからか消えてしまったあの笑顔が、こんな地獄で再び現れるなんて。
「あ、あの、ジェヴィンさん…?」
「任せてください。ウェンダのように苦しませたり、痛い思いをさせたり、そんなことはしませんから」
グレイに向かって斧が振り上げられた。
「や、やめてくださ…」
「神のご加護がありますように」
「いやっ…!」
首を目掛けて力一杯振り下ろされる。
まずは1人。
2人。
3人。
4人。
「機械とはいえ、救いの手は平等になければ。貴方のご家族と共に眠らせて差し上げましょう」
そしてファンボットを破壊し、残るのはどこかにいる異常者たちとジェヴィンのみ。
生存者たちを全員殺し終えて、欠けた斧を放った。
辛い中生かし続けるより、殺して楽にしてやった方がきっといい。
血で汚れてしまった本堂を綺麗に掃除してから、同じく綺麗に整えた遺体を並べる。
安らかな表情をしている、やはりこれが正解なのだろう。
少なくともジェヴィンからはそう見えた。
「あぁ、我が神よ…どうか救いを…」
丁寧に装飾が施されたナイフで、自身の喉を掻き切った。
目覚めた時には、皆が生きてる平和な世界に逆戻り。
そうでなくては心が折れてしまう。
ステンドグラスからの光に照らされて、ジェヴィンは息を引き取った。
「…は?」
「あ…おはようございます、ジェヴィンさん」
「…え、は…」
「ど、どうかしましたか?」
グレイがいる。
怯えて耳を下げ、不安そうな顔をしたグレイが。
「まさか…っ!」
慌てて飛び起き、張り付くように窓の外を覗いた。
「赤…赤い……赤い…!?一体どうして…」
「ジェヴィンさん?ほ、本当にどうしたんですか?」
「どうして…あぁ…た、助けられない…これでは、なぜ、神よ……はぁ…はぁ…ッ」
「ジェヴィンさん…?」
頭を押さえて呻くジェヴィンに対し、グレイは何をすることもできない。
世界がおかしくなったのは今更で、あのジェヴィンがこんなに取り乱す理由がわからなかった。
「もう一度…」
「へ?あ、ど、どうして斧を… 」
「もう一度やり直さなくては…」
「へ、変な冗談やめてくださいよっ!もうそういうのうんざりですっ!!なんでジェヴィンさんまでおかしくなるんですかっ!!」
「大丈夫ですよ、グレイさん。次こそは救いますから」
斧が振り上げられ、その大きな刃がグレイの視界を覆う。
「神のご加護がありますように」
赤い空を写す窓に、べったりと血がついた。
コメント
4件
私はサカナ-ウミ様、あなたを信仰します。
ほぁっ、ジェヴィンループだ!! 前の話と繋がりがあるなら、これが例の全員♡♡♡ちゃった回だったり、、、? 最後の終わり方、世界が変わっちゃたせいでループする夢をみて、ジェヴィンも狂った可能性あったりしますかねぇ? 最後も生存者を安らかにしてまわりそうでしたし ジェヴィンさん頑張ってるはずなのに報われないの最高に可哀想で可愛い ループを重ねるたびに何気ない日常というものに執着していっているということがじんわり伝わってきます、、、!! 鬱々しいジェヴィン、最高でした😊 無浮上把握です!勉強頑張ってください!