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「ん?お、高橋。今朝ぶりだな。どうした?なんか悩み事でも出来たか?」
目線をこちらにやって柔らかく微笑む。元々垂れ目だった目が、さらに垂れ目になる。
「いや、その、森沢先生が居たので、何を読んでるのかな…って………思って…」
次第に声が小さくなるが、生憎図書室にいる人は先生と自分だけだったため、声は響いた。
「ああ、この本か?成り行きで読んでみたが結構面白いぞ。高橋も読んでみたらどうだ?」
そう言って本の表紙を見せてくる。本には〝獣〟とだけが書かれていた。
「内容によりますよ、俺」
そう言って椅子に座る。この一対一感が、高橋は好きだった。特に、話しやすい森沢との対話は顔にこそ出ないが、心の中ではとても喜べるほどのものだった。
「〝人というのは言わば、獣である。〟」
「……え?」
考え事をしていたため、突拍子もないことを言われた高橋は、咄嗟のことで反応が遅れた。
「え?、じゃねぇよ。本の内容の一部な。」
これ、意外と面白いぜ。と言うと、森沢は本を高橋の眼の前に差し出し、席を立ったと思ったら図書室の扉へと移動していた。
「借りて読んでみろよ、センセーのオススメ。それと、もうすぐでチャイムが鳴るからなるべく早く借りて戻れよ。」
ガラガラと扉が閉まる。ハッとして時計を見ればチャイムが鳴る5分前。
そういうのはもう少し早めに教えてくれ。と少しばかりの苛立ちと悲しさを感じながらも、森沢が勧めた本を素直に借りて、そこからは言うまでもなくだが、先生に怒られない範囲で、それでも出来るだけ教室に早く戻れるように速歩きをして、高橋は教室に戻っていった。
家に帰った高橋は、早速今日勧められま本のページを捲った。目次には人についてだったり己についてだったり、色々なことが記されていた。それでも、内容は目次に比べて薄っぺらくて浅くて、本当にこれが面白いのか?と疑うほどのものだった。