テラーノベル
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ここからは今までのお話のたっつん視点になります。
角を曲がる直前だった。
「……だからさ、なんでまだいるんだろ」
知らない声。
たっつんは足を止める。
「たっつんと並んでるの普通に無理なんだけど」
その名前に、眉がぴくっと動いた。
——誰の話や。
嫌な予感がして、反射的に角の向こうを見る。
そして、息が止まった。
自販機の前。
あなたが立っていた。
手にはペットボトル。
でも動いていない。
下を向いたまま、じっとその言葉を受け止めている。
「……」
たっつんの胸がざわつく。
もしかして。
いや、“もしかして”じゃない。
聞こえてる。
その証拠に。
あなたは数秒後、小さく息を吸って——笑った。
無理やり。
何事もなかったみたいに。
その顔を見た瞬間。
たっつんの中で何かが落ちた。
最近ずっと感じていた違和感。
スマホを見る時の顔。
急に静かになる瞬間。
「大丈夫」って言うたび、少し苦しそうだった理由。
全部、繋がった。
「……は?」
思わず声が漏れる。
なんでそんな顔できるん。
しんどいやろ絶対。
なのに。
なんで笑うん。
胸がぐちゃぐちゃになる。
あなたはそのまま歩き出そうとして、そこで初めてたっつんに気づいた。
「た、たっつん!?」
明らかに焦った顔。
でも次の瞬間には、また笑う。
その笑顔が痛すぎて。
たっつんは苦しくなる。
「どうしたの?」
どうしたの、じゃない。
ほんまはお前がどうしたん。
でもそう聞いたら、多分また隠す。
だからたっつんは必死に感情を押さえながら聞く。
「……今の聞いたん」
一瞬だけ、あなたの笑顔が止まった。
その反応だけで十分だった。
やっぱり。
ずっと一人で耐えとったんや。
たっつんは胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
最近の“違和感”が全部本物だったことが、逆に怖かった。
「……別に平気だし」
その言葉に、思わず眉が寄る。
またそれ。
また“平気”。
たっつんは内心かなり限界だった。
平気なわけないやろ。
今にも泣きそうな顔しとるくせに。
「嘘や」
気づけば即答していた。
あなたが少し目を見開く。
でもたっつんは止まれなかった。
「平気な奴がそんな顔するか」
言った瞬間。
あなたの表情が揺れる。
あ。
やばい。
泣く。
たっつんは反射的にあなたの腕を掴んでいた。
逃がしたくなかった。
今ここで「大丈夫」って笑わせたら、また一人で抱え込む気がしたから。
「……一人で耐えんな」
声が震えそうになる。
自分でもびっくりするくらい苦しかった。
あなたが苦しんでたことも。
気づけなかったことも。
全部。
そして。
ぽろ、とあなたの目から涙が落ちた瞬間。
たっつんの胸は痛いくらい締めつけられた。
“あぁ、やっぱり限界やったんや”
その事実が、遅れてずしんと来る。
あなたが慌てて顔を隠そうとする。
「み、見ないで……」
その声が震えていて。
たっつんは泣きそうになるのを必死で堪えた。
見ないわけないやろ。
そんなになるまで我慢してたんか。
なんで一人やってん。
なんで俺に言わんかったん。
頭の中ぐちゃぐちゃなのに、出てきた言葉は一つだけだった。
「……もうええ」
たっつんはそっとあなたを抱き寄せる。
腕の中の身体が、少し震えていた。
その細い肩を抱きながら、たっつんは心の中で何度も思っていた。
——もっと早く気づきたかった。
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#恋愛
Rui
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