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⚠️戦争賛美、政治的な意図は決してございませんのでご了承ください
⚠️史実とは一切関係ありません
⚠️史実ネタでもございません
⚠️すべて、私の妄想です。
⚠ATTENTION⚠
・BL
・パラ日帝
・パラオが大人
・なんでも許せる方向け
帛→パラオ
日→日帝
では、どうぞ⬇
✂︎——————キリトリ線—————–✂︎
――朝。
障子越しの光が、ゆっくりと部屋に滲み込んでくる。
鳥の声。遠くで家が軋む音。
日帝は、無意識に寝返りを打とうとして――
そこで、ぴたりと動きを止めた。
近い。
あまりにも、近い。
目を開けた瞬間、視界いっぱいに広がったのは――
眠たげに瞬きをする、パラオの顔だった。
日「――――っ!?」
驚きのあまり、日帝は勢いよく跳ね起きた。
ガサッ、と布団が擦れる音。
それにつられるように、パラオも目を開ける。
帛「……あ」
一瞬の間。
そして、ふっと柔らかく笑う。
帛「おはようございます、日帝さん」
日「……あ、嗚呼……おはよう……」
心臓が、朝から限界だった。
同じ部屋。
同じ布団。
頭では分かっていたはずなのに、実際に目の前にすると破壊力が違う。
日帝は視線を泳がせながら、気づく。
――ずっと、見られている。
日「……な、なんだよ……」
帛「いえ……起きてる日帝さんを見るの、久しぶりだなと思って」
その何気ない一言が、妙に胸に刺さる。
日帝は顔が熱くなるのを自覚し、慌てて咳払いした。
日「……き、着替えるから……
一度、部屋の外に居てくれないか……」
帛「……!」
パラオは一瞬きょとんとし、
それから自分の状況を理解したのか、耳まで赤くなる。
帛「あ、は、はい……! すみません……!」
ぱたぱたと慌てて立ち上がり、
ほとんど逃げるように部屋を出ていった。
日帝は一人になると、深く息を吐く。
日『……朝から何やってるんだ、俺は……』
数分後。
着物に着替え、身なりを整えた日帝は、
そっと襖を開けた。
日「……もう、いいぞ」
声をかけると、
少し距離を取って待っていたパラオが、控えめに戻ってくる。
帛「……ありがとうございます」
二人の間に、微妙な沈黙。
視線が合うたびに、昨夜のことと、今朝のことが頭をよぎる。
日帝は誤魔化すように立ち上がった。
日「……朝飯、作るぞ」
帛「はい。……あ、僕も手伝います」
日「……またか」
そう言いつつ、止める気はなかった。
――台所。
朝の空気は、少し冷たくて澄んでいる。
鍋に水を張り、米を研ぎ、味噌を用意する。
パラオは、昨日と同じように自然に隣に立った。
帛「何か、僕にできることありますか?」
日「……じゃあ、味噌汁の具、切ってくれ」
帛「はい」
包丁を持つ手は落ち着いていて、
その横顔は真剣だった。
日帝は、ふと気づく。
“頼れる”と、思っている自分に。
昔は、ただ守る対象だった。
今は、同じ目線で並んでいる。
その事実が、少しだけ怖くて、
でも――悪くなかった。
やがて、朝食が整い、皆で食卓を囲む。
にゃぽんは相変わらず意味深な視線を送ってきたが、
日帝は見ないふりをした。
朝食後。
食器を片づけ終えたころ、
パラオが、少しだけ遠慮がちに口を開く。
帛「……日帝さん」
日「なんだ?」
帛「このあと……もし、時間があれば……」
一拍置いて。
帛「外を、少し歩きませんか?」
日帝は一瞬、言葉に詰まった。
日「……外?」
帛「はい。
昔、一緒に歩いた道……覚えてますか?」
春の風。
あの頃と変わらない景色。
けれど、隣にいる存在は、もう違う。
日帝は少し考え――
それから、静かに頷いた。
日「……少しだけ、な」
その返事に、
パラオの顔が、ぱっと明るくなる。
帛「はい……!」
日帝は、胸の奥がほんのり温かくなるのを感じながら、
玄関へ向かった。
――二人で外へ出る、その一歩が、
また何かを変えてしまう気がして。
それでも。
日帝は、もう立ち止まらなかった。
二人で歩く道は、朝の光に包まれていた。
人通りは少なく、風の音だけが耳に届く。
日帝は、何気ないふりをして周囲を見渡す。
だが、意識はずっと隣にあった。
帛「……この辺りも、変わってませんね」
日「そうだな」
その言葉だけで、胸の奥が引き戻される。
最初に会ったときの、あの目。
警戒心と怯えが入り混じった視線。
近づけば逃げる準備をしていた、小さな体。
日帝は、無理に触れなかった。
無理に笑いかけることもしなかった。
ただ、距離を保ち続けた。
――初めての食事。
天ぷらの皿を前に、固まっていた少年。
恐る恐る口に運び、
ゆっくり噛んで。
帛「…おいしい」
その一言に、肩の力が抜けた。
――勉強の時間。
分からず、首を傾げるたびに、
同じところを何度も指でなぞった。
できなくていい。
分かるまで、付き合う。
それだけだった。
いつの間にか、
逃げる目ではなくなっていた。
日帝は、歩きながら小さく息を吐いた。
日「……懐かしいな」
帛「はい」
短い返事。
だが、その声はどこか真剣だった。
少し歩いてから、
パラオが、ふと足を緩める。
帛「……日帝さん」
日「なんだ」
一拍。
帛「……あの時の話、覚えてますよね」
日帝の心臓が、わずかに跳ねた。
日「……」
帛「……返事、決まりましたか?」
真正面からではない。
けれど、逃げ場のない問いだった。
日帝は、すぐには答えなかった。
視線を前に向けたまま、歩き続ける。
日『……決まってる、なんて……言えるわけがない』
守るつもりだった。
それだけで、十分だと思っていた。
だが今は――
隣を歩く存在として、見ている。
日帝は、少しだけ考えてから口を開いた。
日「……まだだ」
帛「……はい」
それでも、パラオは頷いた。
帛「それで、いいです」
急かさない声。
責めない態度。
それが、かえって胸に沁みる。
日帝は、ほんの少しだけ、視線を向けた。
日「……もう少し、時間をくれ」
帛「……待ちます」
その一言が、
日帝の中で、重く、そして温かく残った。
歩き出した二人の間に、
沈黙が戻る。
だがそれは、気まずいものではなかった。
答えに向かう途中の、
静かな時間だった。
続く…
✂︎——————キリトリ線—————–✂︎
おかえりなさい〜
あと、数話で終わらせる予定です。
《リクエストについて》
現在リクエストはお断りしています。今いただいてもお答えできませんのでご了承ください。
では、閲覧ありがとうございました!
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