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百鬼夜行

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百鬼夜行

3 - 第3話

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2025年08月15日

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ぬらりひょん・ないこと、雪女・初兎が肩を並べて座る、冬の山奥。宴のざわめきが遠ざかり、空には満ちかけの月。


ふと、ないこが立ち上がった。


「少し歩かねぇか? 雪、積もってきたし。」


「……うん。」


並んで歩くのは、たった数歩なのに、初兎の鼓動はやけに騒がしかった。

手が、触れそうで触れない距離。

そんな隙間が、もどかしくてしかたない。


ないこが不意に、初兎の袖をつまんだ。


「お前の手……冷えてるな。」


「……雪女だからね。昔から、誰に触れても冷たいって言われてきた。」


「それで?」


「……だから、あんまり人に近づけないんだ。」


そう言って目を伏せる初兎の表情に、ないこは静かに笑った。


「じゃあ、俺が慣れればいいだけだな。」


「……え?」


次の瞬間。

ないこの手が、そっと初兎の指先に触れた。

ひんやりとした感触。

けれど、ないこの手はそれを避けなかった。


「冷たい。でも……悪くない。」


「……うそ。」


「本当。むしろ落ち着く。お前の冷たさ、俺は好きだ。」


初兎の頬が、わずかに赤く染まった。

それは寒さのせいじゃない。


ないこは、そのまま手を絡めるでもなく、

ただ、初兎の手を包むように温め続けた。


「初兎。」


「……なに?」


「もしさ、俺がもっとちゃんとした“告白”とかしたら、迷惑?」


初兎は、一瞬だけ言葉を詰まらせた。


けれど――


「……ちょっとびっくりするかもしれないけど、迷惑じゃない。」


「……そっか。なら、もう少しだけ一緒にいて。」


「……うん。」


雪が静かに降り続ける夜。

二人の手のぬくもりが、氷のような沈黙を溶かしていった。


まだ告白には届かない。

でも、「好き」に近づいた夜だった。



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