⚠注意⚠
この世界線では、ウサギ病を医療でも何もわかってない未知の病として扱っているのでそれだけ注意して見て下さい
ウサギ病
—侑視点—
治がバレーをやめてメシの道に行くと言った。
その事を聞いた瞬間、俺は訳もわからん感情を治にぶつけてしまった。
別に治は悪くないのに。
ただ治が俺の知らないどこか別の場所へ行ってしまう。そんな気がした。
怖かった。
治とは生まれた時からずっと一緒にいた。
治の隣はいつも俺だった。
俺はその事が嬉しかったし、誇らしかった。
そして、これからも治の隣は俺だとばかり思っていた。
なのに治は俺から離れていき、治の隣には新しい誰かが居て、俺は一人ぼっちになる。
そんなの………そんなの、絶対嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
治どこにも行かないで。
俺の傍から居なくならないで。
ずっと隣に居て。
俺を、ひとりにしないで……
寂しくて俺、死んでまうよ?
—治視点—
‐発症‐
最近、侑が物忘れが多くなった。
先ほど聞いてきた事をまた尋ねてきたり、部活では同じ事ばかり練習していたり、色々と忘れる事が多かった。
たまに忘れ物をしたりすることはあったが、ここまで物忘れが激しいとは思わなかった。
けど、たまたまそんな事が続いてるだけだろうと思い、俺はいつも通りの日々を過ごした。
‐7日目‐
侑の物忘れはすぐに消え、いつも通りに戻るだろうと思っていたが、その逆だった。
なぜか物忘れは日に日に悪くなっていった。
もう物忘れ程度ではないのかもしれない。
「ツム」
「ん?」
「中学ん時の〇〇って覚えとるか?」
「んー、そんな奴いたか?覚えとらんけど」
「そーか」
やはりおかしい。
その人は侑の中学の同級生で高校になってからは会っていないものの中学の時は侑とよく話していたし遊びにも行ってたりした人物だ。
それなのに知らないはずがない。
本当に忘れてるのだろうか。
何かの病気とかじゃないかと考えたが、俺の思い過ぎかもしれない。
侑に注意しながら、もう少しだけ様子を見る事にしよう。
‐15日目‐
流石にヤバいかもしれない。
そう思い、俺は侑に自分自身の身に起こっている事について相談した。
けど、その時には侑も自分の危うさに気づいていた。
物忘れから始まった事だったが、今では過半数以上の人を忘れている。
これは明らかに尋常ではない。
明日は部活も休みだったため、俺と侑は病院に行くことにした。
‐16日目‐
病院に行った結果、侑は未知の病だった。
症状は認知症などの記憶障害に似ているものの、たった数日間でこれほどの記憶がなくなる症例はないとのことだ。
医者にもどうすることもできないため、何の原因だか分かるまではしばらく学校も休み、家で安静にした方が良いという結果になった。
侑は「バレーができない」と少し不満な所もあったようだが、「けど、将来バレーができないのはもっと嫌や」と言い、おとなしく家で安静することにした。
‐20日目‐
侑の症状は一気に悪化した。
侑が次に忘れたのは“人”じゃなく“言葉”だった。
「侑ただいま」
「治、!。おかえり。手、持つ、それ、何、?」
「あー、これか?角名からプリン貰ったけど食べるか?」
「ぷりん、何、?、すな、誰、?」
「あー………プリンはお菓子の事。侑もきっと好きやで。角名は俺の親友の名前やな。今度侑の見舞いに来る言うてたで。侑もその時仲良くなり。」
「うん、わかった。ぷりん、食べたい!」
「おん、一緒に食べよや」
喋り方は単語単語になっており、小さい子供が言葉を覚えたばかりのように思える。
侑が覚えている人ももう俺だけだった。
‐26日目‐
「ツム、ご飯持ってきたで」
「ありがと、……」
「食えるか?」
「……コク」
俺はご飯を侑の近くに置き、侑の食べる様子を見守ろうとした。
けど……
カラン
「?、侑?どうしたん?」
「あれ、?、はし、もつ、わかんない」
「え、」
侑は箸の持ち方もわからなくなってしまった。
手は微かに震えていて、上手く動かせないのだろう。
その後、侑は徐々に“体の動かし方”を忘れた。
‐27日目‐
「侑、今日は俺、学校休みやから一緒に何かするか?」
「?」
「侑、どうかしたん?」
「治、あつむ、誰?」
「っ、」
侑が“自分”を忘れた。
自分がバレーを好きだった事も双子だという事も。
全部忘れてしまった。
その瞬間、俺は侑が侑ではなくなった気がした。
俺が知らない侑。
今の侑は、、、例えるなら、感情も何もなく自分ひとりでは動く事もできない人形のようだった。
そんな侑の姿を見ると心が痛かった。苦しかった。
何もできなくて見ているだけの俺が悔しかった。
‐28日目‐
俺は侑の部屋で立ち止まっていた。
入るのが怖かったのだ。
侑に会うたび思ってしまう。
次は俺のことを忘れてしまうのではないか。
昨日までは俺の事を覚えていたが、もういつ忘れてもおかしくない状況だ。
それが怖かった。
俺の事を忘れたらどうしようどうしようとずっと考えている。
数分、部屋の前で立ち止まっていたが覚悟を決め扉を開けた。
部屋に入った俺に侑が気づいたようだ。
たった一言。俺の名前を呼んでくれるだけでいい。
お願いだから呼んで。
心の中で願いつつ、侑が発した言葉はこうだった。
「君、誰?」
‐???日目‐
あの日の朝の事はよく覚えている。
やけにその日は早く起きてしまった。
時間的にもまだ日が昇る頃だった。
外はとても綺麗な景色で厚い雲の隙間から天使の梯子が降り注いでおり、見惚れてしまうほど幻想的な世界が広がっていた。
だからなのか少し胸騒ぎがした。
まだ侑が寝てるかもしれないが嫌な予感がしたため、急いで侑の部屋へ行った。
そしたら、
侑は冷たくなって死んでいた。
死因は窒息死だった。
医者によると、眠っている間に呼吸をしなくなりそのまま死んでしまったということだ。
多分、侑は“呼吸の仕方”を忘れたのだ。
侑は静かに息を引き取ったのだろう
寝ている間だし苦しまずには死ねたんだろうな
今、俺の目の前にいる侑は安らかな顔をしていた。
見ている限り眠っているようにしか見えなかった。
俺の視線の先には白い服を身にまとい、周りにはたくさんの花で囲まれている侑の姿があった。
今日は侑の葬式の日だ。
‐1日目‐
「なぁ、角名。次の授業って何か覚えとるか?」
「治、さっきも同じ事聞いてたよ?」
「あ、そう、やっけ……」
「最近、物忘れ多くない?前なんて先生の名前ど忘れしてたでしょ」
「あー、あん時はマジ焦ったわ。」
「ホント気をつけてよねー」
「せやな、気ぃつけるわ」
ウサギ病
色々なことを忘れていき最後には呼吸の仕方まで忘れ、最悪の場合死に至る病気。
原因は寂しいと感じる心からなり、発症日前日には何らかのきっかけになる出来事がある。
治療方法は一番大事な人からのハグ。
完治したとわかるのは、対象者が思い出すことだけ。
コメント
5件
リクやってくれてありがとー!!!😘🫰💕 もうめっちゃ感動😭 治も最後ウサギ病になってちゃってるし🥲侑が死んじゃったから寂しいよね😢 日に日に侑の症状が酷くなってるのがまじで泣けてくる😖 次も楽しみにしてるね🫶🫶
うあ゛〜ッッ、なくわ… うさぎ病、初めて聞いたけど解説見てわかったわ、 1番大事な人からのハグって…治療法分かってたら生きてたのかな〜😭治もうさぎ病にかかってそうだし…… 泣きそうだったけど、言葉忘れて子供っぽくなった侑が可愛かった🫶 奇病ってやっぱいいね〜🫰🫰 またまたリクエストしちゃうんだけどさ……天使病?だった気がするんだけど、それ見てみたい‼️ 次も楽しみ‼️😊😊