テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
生徒会の扉を開けた瞬間、私は本気で帰りたくなった。
「……場違いすぎる」
部屋の中には、噂どうりの顔ぶれが揃っていた。
会長の一ノ瀬玲さんを中心に、副会長さん、書記さん、会計さんが、それぞれ仕事していた。
全員がいわゆる目立つ側の人間だ。
「連れてきたよ」
一ノ瀬の一言で、一気に視線が私に集まった。
「……っ」
思わず1歩下がると、副会長さんが目を丸くした。
「えっ!てか、静かすぎない?」
「副会長怖がらせないでください」
すかさず書記さんが、注意する。
私は、もう何が起こっているのか分からない。
「紹介するね、小鳥遊ひよりさん。今日から生徒会のお手伝い」
「今日から!? 」
声が裏返ってしまい、私は慌てて口を抑えた。
一ノ瀬さんはクスッと笑った。
「無理はさせないよ。できることだけでいい」
そう言われても、この空間自体が無理だった。
キラキラしすぎて、息が詰まりそうだ。
「とりあえず座って」
書記さんが、椅子を引いてくれた。
副会長は、机にお菓子を置いた。
「甘いの大丈夫?」
「はい……」
何故か全員距離が近い。
私は背筋を伸ばして、膝の上で手を握りしめた。
その後の話し合いは、ほとんど頭に入らなかった。
ただ、誰も私を置いて進めなかったことだけが、はっきり覚えている。
「ここ、わかる?」
「疲れてない?」
「無理なら今日はここまででいい」
そのひとつひとつが、私には不思議でしか思えなかった。
ーーどうしてこんなに気にするんだろう、
会議が終わり、私が立ち上がると、一ノ瀬さんが言った。
「またあした。来ていい?」
来て欲しいではなく、来ていい。
逃げ道を残した聞き方。
ひよりは少し考えてから、小さくうなずいた。
「……はい」
生徒会室を出たあと、胸の奥がじんわり温かかった。
居場所がないと思っていたのに。
気ずけば、もう扉は閉ざされていなかった。