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翌日、生徒会室に入った瞬間、ひよりは異変に気 づいた。
「あ、小鳥遊。そこ座りな」
副会長・朝比奈 恒一が、当然のように自分の隣 の椅子を指している。
「……え?」
「そこ。エアコン直撃しないし」
他にも空席はあるのに、なぜそこなのか。
戸惑いながら座ると、朝比奈は満足そうにうなず いた。
「よし」
よし、とは。
会議が始まると、朝比奈の様子はさらにおかしく なった。
「その書類、重くない?」
「小鳥遊、それ後ででいい」
「疲れたら言えよ?」
ひよりが何かする前に、全部先回りされる。
周囲もさすがに気づき始めていた。
「……副会長、過保護すぎません?」
書記が呆れたように言うと、朝比奈は即答した。
「は?普通だろ」
「普通の基準がおかしいです」
一ノ瀬は黙って様子を、伺っていたが、口元が少しだけ緩んでいた。
ひより本人はというと、居心地が悪いというより
――困惑していた。
(私、何もしてないのに……)
休憩時間。
ひよりが一人でお茶を淹れようと立ち上がると、 朝比奈も立つ。
「俺やる」
「い、いえ!自分で――」
「熱いし。ほら座って」
有無を言わせない。
その背中を見ながら、ひよりは小さく息を吐い た。
「…… どうして、そんなに」
思わず漏れた言葉に、朝比奈が振り返る。
「ん?」
「どうして、私に……」
言葉を探していると、朝比奈は少し考えてから肩をすくめた。
「なんか放っとけない」
それだけだった。
理由は曖昧で、でも即答だった。
「別に期待とかしてないし。できることだけやればいい。」
ひよりの胸が、きゅっと締まる。
期待されるのが怖かった。
でも、期待しないと言われるのも、少しだけ寂しい。
「……ありがとうございます」
小さくそう言うと、朝比奈は一瞬だけ目を見開いて、そっぽを向いた。
「どういたしまして」
耳が、少し赤い。
この日を境に、
ひよりの席は自然と副会長の隣に固定された。
ーー続く