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あれから数日が経ち、諒真が退院する日になった。病院の自動ドアが開くと、外の風がふわりと頬を撫でた。諒真は眩しそうに空を見上げ、スーッと息を吸う。
「シャバの空気は美味しいですね〜」
「ここはムショか」
俺がそうつっこむと、諒真はクスッと笑う。
「いいですね。つっこむ瞬さん、新鮮です」
「あーあ。また諒真にいじられる日々が戻ってくる」
「でも、これからは素直な瞬さんなんですよね?」
「え?…まぁ、そうだけど」
俺がそう答えると、諒真は俺に左手を差し出す。
「手繋いで帰りませんか?」
「えっ」
「あ、もちろん、瞬さんが嫌じゃないならですけど」
そう言う諒真の手を俺はサッと取り、指を絡めて手を繋ぐ。けれど、恥ずかしくて顔が熱くなる。そんな俺を見て、諒真はふふっと笑った。
「ありがとうございます。しかも、恋人繋ぎですね」
「…なんでもいいだろ。ほら、帰るよ」
俺はそう言って諒真の手を引いて歩き出した。手を繋いだまま、秋の風の中を歩く。
冷たい風が頬を撫で、木々の葉がカサリと揺れた。
その空の下で、ふたりの物語がまた静かに動き出していた。